最初はこの映画「ヒミズ」にのれなかった。いや、最初どころか最後の直前までのれなかった。ここに描かれている苦悩が絵空事にしか思えなくて。もちろん親に虐待されている子供たちは世界中にごまんといるのだから、それ自体は絵空事ではないにしろ、少なくともこの映画に描かれていることは嘘だとしか感じられなかった。 そうした嘘くささは、人生は灰色一色に染められているという思い込みからくる傲慢からきていると思う。実際の人生は明るい色もあれば暗い色もあるようにまだらのように様々な色がグラデーションとなっている。人生は灰色一色に塗り込められていると考える人は、自分とその周りにしか世界がないと思いこんでいるモノローグ的生を送っている人だ。(モノローグ的生については「スピノザ・園子温論」を参照) モノローグ的生を生きる人にとって関心があるのは自分だけでしかない。だから震災や津波、原発被害も自分のモノローグ的苦悩を際立