記憶する体 作者:伊藤亜紗 発売日: 2020/04/15 メディア: Kindle版 おれが「身体」と書いたら、「からだ」とルビをふるのが正しいと言っておきたい。おれは身体について興味がある。これだけ書くとへんな感じだが、なんというか、自分も含めた人間というものの存在、境界、そんなものに「身体」というものはでかいよな、と思うのだ。昔、「唯脳論」なる言葉がはやって、それも一つの事実ではあるとは思うけれど、人間やっぱり身体あってのものよな、と思うことも少なくないのだ。脳はやはり人間の核と言えるかもしれないが、一方で脳もひとつの臓器にすぎない。そんな感じ。 で、本書『記憶する体』である。さまざまな身体欠損などの障害を持った人の語り書きである。あとがきで著者はこう述べている。 ……必ずしも、記憶の蓄積が大切だ! と言いたいわけではありません。むしろ、現にさまざまな当事者の体で起こっている、自然と