初期のユングの研究のなかで、もっとも代表的で、深層心理学の研究者としてのユングを世に周知のものとしたのは、1904年に公刊された「連想実験」[1]に関する論文であった。 言語の連想により無意識の内容を意識化し、理解する試みはジークムント・フロイトの自由連想にすでに見られるが、ユングは一連のごく簡単な単語を用意し、被験者に連想してもらい、あわせて応答にかかる時間を測定、さらに再び最初から最後までチェックして、平均的な応答と「特殊な応答」の違いを浮彫りにした。[注釈 1]ユングは後者の反応を無意識のコンプレックスと関連づけたが、「連想実験」は単語や時間の測定数値、再現性の有無という具体的なデータが提示され、かつ統計的な比較が成されており、客観的で科学的な価値を持っている。 応答の時間のずれが生じたり、スムーズな再生が見られない刺激語を詳細に調べて行くうちに、ユングは、刺激語が、被験者自身にとっ
