ブックマーク / ameblo.jp/vista637 (5)

  • 『実数と有理数』

    実数列 ① a1,a2,a3,…… がコーシー列ならば、必ずある数に収束することを見てきました。 では①が有理数列であるとき、その極限値は有理数であると言えるかというと、必ずしもそうとは限りません。 たとえば√2を小数表示で近似していく数列 ② 1, 1.4, 1.41, 1.414, 1.4142, …… は有理数列であり、しかもコーシー列ですが、極限値は無理数√2になります。 有理数世界の住人にとっては極限値が異世界に行って見えなくなってしまいます。 つまり、どの数世界で考えるかによって、コーシー列が収束するか否かが変わってきてしまいます。 コーシー列が収束するような数の世界(あるいはより一般に「空間」)は完備であると言われます。 言い換えると、 「収束値がわからないときは、代わりにずーっと先の数を使って収束性を定義しても大丈夫だろう」 という希望的観測が成り立つ場合が「完備」です。

  • 『上限と下限』

    前記事では実数列の場合にコーシー列であることと収束性が同値であることを示しました。 その中で上限・下限という概念が出てきたのですが、そこのところで感覚的に説明した部分をもう少し厳密に考えてみようと思います。 上限・下限の存在を調べる上ではまず、実数の定義を確認する必要があります。 そもそも「有界な部分集合には上限・下限が存在する」ことが定義の一部とされる場合もあるのですが、ここでは実数を「無限小数で表される数」と考えることにします。 ただし有限小数はその後にずっと0を続けることにより無限小数の特別な場合とみなすことにします。 また、1.00000……と0.99999……のような数は同じ数とみなすことにします。 上限と下限の議論には(大と小を入れ替えた)対称性があるので、以下では下限の場合について考えます。 Sを実数の(空でない)部分集合とします。 前回示した場合分けを下限についても同様に考

  • 『コーシー列2』

    コーシー列のココロは、収束する先がわからない時には代わりにずーっと先の項を使って収束の定義を試みてみるということでした。 しかしその有効性はあくまで希望的観測の域を出ないので、確かめてみる必要があります。 数列 ① a1,a2,a3,…… が収束することとコーシー列であることとの関係はどうなっているのか。 結論を言えば、実数列や複素数列などの場合には ①が収束する ⇔ ①はコーシー列である が成り立ちます。このうち、 ② 収束する ⇒ コーシー列である の証明は簡単です。 たとえば①がbに収束するとすると、任意の正数εに対してある自然数Nが存在し、N<nを満たす任意の自然数nに対し|an-b|<ε/2となります。(εの代わりにε/2に対してNを用意していることに注意してください) すると、N<n,mならば |an-am|≦|an-b|+|am-b|<ε/2+ε/2=ε となるので、コーシー

  • 『コーシー列』

    数列 ① a1,a2,a3,…… がコーシー列であるとは ② 任意の正数εに対してある自然数Nが存在し、「N<n,mを満たす任意の自然数n,mについて|an-am|<ε」が成り立つ ことでした。 十分先に行けば「 」内の性質が成り立つという意味なので、この定義自体はよく読めば意味がわかるのではないかと思います。 しかし、一体どこからこんな定義が出てきたのかという疑問がわいてきます。 |an-am|<εという条件は何なのか。どこからこんな発想が出てきたのか、という疑問です。 ここで次のような問題を考えてみます。 ③ 果たして①は(どんな数にでもいいから)何かの数に収束するだろうか 前回は①が特定の数bに収束するための条件(定義)を述べました。それが次の④です。 ④ 任意の正数εに対してある自然数Nが存在し、「N<nを満たす任意の自然数nについて|an-b|<ε」が成り立つ 一方、そのbにあた

  • 『数列の極限』

    ε‐δ論法により関数の連続性を定義しましたが、数列の極限についても同様の定義法が考えられています。 これも広義のε‐δ論法ですが、δではなくNを使う場合が多いので、ε‐N論法とも呼ばれます。 実数列 ① a1,a2,a3,…… がbに収束するとは ② 任意の正数εに対してある自然数Nが存在し、「N<nを満たす任意の自然数nについて|an-b|<ε」が成り立つ ことであると定義されます。 関数f(x)がx=aにおいて連続であるとは、どんなに小さなεの基準で考えてもaの十分近くに行けば誤差がε未満になるということでした。 同様に数列①がbに収束するとは、どんなに小さなεの基準で考えても十分先の項を見れば誤差がε未満になるということです。 ①として実数列でなく複素数列を考えた場合でも同様です。(その場合は誤差の絶対値がε未満になるという定義になります) 解析学では収束性に関連して、次のような性質

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