昨年の暮れに、映画批評としては実に20年ぶりの単著となる「映画のウトピア」を発表した粉川哲夫氏が、その中で『アメリカン・サイコ』について以下のような指摘をしていた。 情報化への産業構造の本格的な変化のなかで、彼ら(ヤッピー)は、弁護士、医者、証券マン、メディア関係者として急速に地歩を築き、マンハッタンに進出してきた。その結果、それまでアーティストや活動家や"不逞の輩"もたむろできた場所が、ヤッピーのテイストに合わせて"優美"になっていった。都市論でジェントリフィケーションと呼ばれる現象である。ちなみに、90年代のバブル経済によって華麗化し、"安全"になったニューヨークは、まさに『アメリカン・サイコ』の世界から始まったのである。 (中略) 映画を見ながら気づいたことがある。ヤッピーは、基本的に、最後の"メール・ショーヴィニスト"(男性至上主義者)なのだなということだ。"ヤッピー"は、女性にも