普段忘れていても、何年も忘れていた事でも何かの拍子に思い出す場面や気持ち。 それは頭の中にずっと下書き保存されていたのだろうか。 散歩中川沿いに群れを成して咲くコスモスの花を見た。 いつの間にか季節がすすみ秋になっていた。 毎年のように秋はくるのに、この花を見ると奥にあるものが心を疼かせる。 私の知らない父。 私の父は野生動物のように粗雑だったが花が大好きだった。 特にコスモスが好きだった。 父はやっと建てたちっぽけな家の庭にコスモスをこれでもかというほど、 たくさん植えた。 家を取り囲むかのような勢いで咲いていた。 花壇には昔、祖父が植えた真っ赤な見事な赤い薔薇が咲いていた。 その頃もう家を出ていた私が帰省するたびに花や庭木は増えていった。 私がいた頃の父はまるで花とはかけ離れたイメージだったが、意外にもそんな繊細な面もあったようだ。 薔薇は春と秋の2回咲いた。 近所の人が通るたびに「ほ