・人間の建設 小林秀雄と日本数学史上最大の数学者といわれる岡潔の対談集。 薄い本だが内容はものすごく濃い。 対話から、どれだけ深くを読み取れるか、読者の力が試される高度に知的な雑談。 最初にあいさつの意味もあるのだろうが、岡は小林の批評文に対して、詩人の作品のようだとこんなふうに褒めている。 「岡 勘というから、どうでもよいと思うのです。勘は知力ですからね。それが働かないと、一切がはじまらぬ。それを表現なさるために苦労されるのでしょう。勘でさぐりあてたものを主観のなかで書いていくうちに、内容が流れる。それだけが文章であるはずなんです。」 名文の本質をさらっとこの数学者は言い当てている気がする。さらに理系数学者らしからぬ発言を連発して、小林の文系の領域の知との化学反応を仕掛けていく。 「岡 数学の体系に矛盾がないというためには、まず知的に矛盾がないということを証明し、しかしそれだけでは足りな