こうして紙の本として再生されるのは、とてもありがたいことだ。いくらかうしろめたさを感じるのは、麻原彰晃ほか12名の死刑執行を見送ったあとでの刊行になってしまったからである。本書は彼らの死をもって、あらためて「誕生」したのだ。 なぜ日本人は麻原やオウムから目を背けてきたのだろうか。春の野原を散歩していて、見たこともない奇怪な生物が路傍にうずくまっているのに気づいて、ひょいと跳びのいて鼻をつまむような印象がある。あたりまえのことだが、世界は美しいものに満ちているわけではない。鼻をつまんだ相手は、自分自身の魔物の投影であったかもしれぬ。「ヘン。又出て来たね。まあ、あのざまをごらん。ほんとうに、鳥の仲間のつらよごしだよ。」(宮沢賢治「よだかの星」)なんて、通りすがりのあかの他人に顔をしかめて同意を求めるような調子で、無視し、追い払おうとする。 麻原をはじめとする七名のオウム死刑囚にたいして刑が執行