クリニックのスタッフら25人が犠牲になった大阪ビル放火殺人事件。通院者の一人で精神疾患を抱えていた容疑者を追い詰めた背景、そして精神の病気に回復に大事なこととは。AERA 2022年2月14日号で、精神科医で当事者の夏苅郁子さんが語る。 * * * 私は友人から「家族・当事者・精神科医のトライアスロンをやってきたんだね」と言われたことがあります。統合失調症の母と向き合った家族であり、私自身は青年期にうつ病と拒食症を経験しています。今は児童精神科医として、やはり医師である夫と開業した診療所で働いています。 一連の報道で、事件のあった場所にお花を手向け、手を合わせている人の姿から、「この人たちも事件の被害者なんだな」と改めて思いました。患者さん同士の結び付きの強さも感じました。診療所の待合室やリワークの場が、一つのサロンになっていたのでしょう。同時に、あらゆる角度から考えを巡らせました。容