1989年の4月8日、シンシナティ州オハイオのリヴァーフロント・コリシアムで行われたグレイトフル・デッドのコンサートに、15歳の少女の姿があった。彼女の名前は、ジェシカ・デスナー。ロック・バンド、ザ・ナショナルの中心メンバーである双子のデスナー兄弟、ブライス・デスナーとアーロン・デスナーの、3歳上の実姉だ。絵画や詩、バレエを嗜んでいたという彼女からの影響もあったのだろう、1990年、当時14歳だったデスナー兄弟が、のちにザ・ナショナルのドラマーとなるブライアン・デヴェンドルフとはじめてセッションしたのも、グレイトフル・デッドの「アイズ・オブ・ザ・ワールド」という曲だった。人と話すのが苦手だった彼らは、居場所のないパーティーで、何時間もその曲を演奏し続けたこともあったという。