たまたま居酒屋で隣あわせた人と話が弾み、そのまま連絡先も交換せずに別れた。 電車の向かい側に座った人をずっと眺めていた。 一期一会といえばそれまでだけど、その時の会話が、表情が、何気ない何かがずっと頭に残って離れない…… スズキナオさんの毎日はそんなモノで溢れている。そこで湧き上がる気持ちを彼はこう表現することにした。 「むう」と。 この世の片隅で生まれる、驚愕とも感動とも感銘ともまったく程遠い、「むう」な話をとくとご覧あれ。 冷蔵庫を開けるたび、ごちゃごちゃしたドアポケットが目に入るのを、いつも見なかったことにする。前々からここを整理しなければと思ってはいる。だが、別に今日じゃなくていいだろう。ちょっと疲れているし、それに冷蔵庫を開けたのは空腹だからであって、つまり急ぎの用があるのだ。 とにかく今は無理。バタン(キャベツとソース焼きそばを取り出し扉を閉める)。 冷蔵庫のドアポケットの混乱