「立たないフラグは」 私がそう言うと、ルリはうれしそうな顔をした。『フラグ』という言葉の意味はルリから教わったのだった。私は続ける。 「無理やり立てましょう」 ルリも応える。 「ホトトギス」 言い終えると、少しリラックスできた。ホトトギス、というルリの加えた下の句はお約束としてガン無視で。低く小さいモーター音と時々の細かい揺れを除くと、まるでここはルリの部屋のようだ……つい地上からの高さを忘れてしまう。窓の外の冬空にたくさんの星が光っている。目を下に移すとルリと私の通う高校が見つかった。上空から眺めると、民家は照明を使っているためだろう、ぼんやりと明るい。一方学校のある一角は暗く沈んだように見える。 決行前に私は地図を再度確認する。 「隆志は予備校の授業が終わるとまっすぐ家に帰る」 つぶやきながら地図上の線をなぞる。 「自転車で商店街を走りぬけ、近道するために公園に入る」 公園にはバツ印が