僕は十代の頃、自分の人見知りな性格に強い不満を抱いていた。ビジネスの成否の大きなエッセンスの1つが、他人との対話能力だからだ。 しばらく続けていた本屋のアルバイトに飽き、新しい職場を探そうと横になりながらパラパラと求人紙をめくっていた。次は人見知りが治るような会話中心の仕事がいい。単純な接客ではこの弱点は修正できない。もっと会話が多い仕事。そんな事を考えていた。営業職は、どうだろう。 しかし会話中心の仕事は、僕みたいな根暗に見える人間に果たして務まるだろうか、という疑問もあった。実際根暗で見た目も根暗に。そして喋れない。あらかじめ手を打たなければいけない事案だった。せめて見た目だけでも。戦略家の僕は数秒考え、応募前に風呂場で髪の毛を明るく染め上げる事に決めた。金髪に近いくら明るくてもいいかもしれない。10代をあと1年残すのみとなった僕は既にそれくらいには出来る男だった。 髪の色が明るければ