このところ再評価の兆しがある田嶋陽子の、『愛という名の支配』(新潮文庫、2019年)を読みました。 愛という名の支配 (新潮文庫) 田嶋の代表作、と言ってよいのかどうかは分かりませんが、1992年に太郎次郎社、2005年に講談社+α文庫から刊行され、今回が3度目の刊行ということなので、少なくとも長く読み継がれてきた本だということは言えるでしょう。 本書は、経験に根差した「田嶋のフェミニズム」を語るものです。なので、理論的な面からフェミニズムを概観したいという向きには、必ずしも適しないかもしれません。もっとも、そこで暴かれている女性差別の構造は、ラディカルであるだけに、依拠する理論的立場や時代といった「細かな」ことを越えて、ある種の普遍性を獲得しているように思います。 実際に読んでいただくのが一番よいと思うのであまり詳しい内容にふれるつもりはないのですが、私が本書で最も感心した点だけ書き記し