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2017年7月7日、都内で開催された「IT Japan 2017」(日経BP社主催)に一橋大学大学院の国際企業戦略研究科教授の楠木 建氏が登壇。「センスある経営者は、組み合わせではなく順列で戦略を考える」など、優れた経営者に共通する考え方を実際の経営者の例を交えて紹介した。 楠木氏は冒頭、ビジネス(商売)全体を動かして成果を上げる「経営者」と、それ以外の「担当者」は全く別物だと説明。経営者に求められるのは「センス」であり、担当者に求められるのは「スキル」だとし、その掛け合わせで商売の成果が得られるという。 楠木氏はまた、「センスのある経営者」は千差万別であるものの、その中でも共通項として挙げられる特徴を説明。具体的には「分析よりも総合」「何をしないかを決断できる」「思考が直列」「抽象と具体の往復運動」「インサイドアウト」の5点だ。 一つめの「分析よりも総合」では、優れた経営者はまず戦略の「
「最終的には、人間の『無意識』をハックすることを目指したいですね」。 ソフトバンクの人型ロボット「Pepper」の元開発リーダーで、現在はGROOVE X 代表取締役の林要氏から聞いた言葉に、記者はハッとした。というのは、「役に立たないAI」の本質を表すのに、これほどいい言葉はないな、と思ったからだ。 GROOVE Xは、「人を癒やすロボット」の開発を目指すスタートアップ企業だ。2019年の製品化を目指す新開発のロボットは、しぐさ、光、温度など、「非言語のコミュニケーション」で人の心を癒やすことにこだわる。デザインは「人型ではなく、何かの動物に似せる気もない」(林氏)。高齢者や病院患者向けのアザラシ型癒やしロボット「パロ」と方向性は似ているが、「より幅広いユーザーに受け入れられるものになる」(林氏)という。Pepperの場合は、会話などの「言語」と、しぐさなどの「非言語」の両建てだったので
トヨタグループの社員は、トヨタ用語とでもいうべき社内の共通言語を大切にしている。トヨタの社内で日常的に交わされている「生きた言葉」を、トヨタマンの口ぐせという形でまとめた書籍が10月初旬に発売になる。それが『トヨタの口ぐせ』(中経出版)だ。トヨタ自動車とリクルートグループが共同出資するコンサルティング会社のOJTソリューションズ(名古屋市)が、同社に所属する元トヨタマンの口ぐせを集めて一冊にまとめた。 本書に登場するトヨタマンの1人である山森虎彦氏は、1964年から2004年までの約40年間をトヨタで過ごした大ベテランで、現在はOJTソリューションズのトレーナーとして、トヨタ以外の企業にトヨタの改善手法を指導して回っている。 山森氏の口ぐせは「データで仕事しよう、ワーストから潰そう」「真因を探せ」「カイゼンは巧遅より拙速」であるが、なかでも最後の「カイゼンは巧遅より拙速」は同氏が一番大切に
日経Linuxにいつも寄稿しているライターから「面白いソフトがありますので日経Linuxで取り上げませんか?」という1通のメールが届いた。2015年に話題になった、ディープラーニングを用いた画像拡大ソフト「waifu2x」だという。 画像の拡大とノイズ除去の機能しかないソフトだったので最初は興味がなかったが、実際に使ってみたところディープラーニングのすごさを体験できた。今後さまざまな分野に活用されていくディープラーニングだが、このように誰でも手軽に体験できるものが増えていくとよいだろう。 従来と異なる画像拡大手法 通常、画像の拡大やノイズ除去は画像処理ソフトの「フィルター」機能を使えば可能だ。画像を拡大する場合、足りない画素(ピクセル)を追加していく。追加する画素の色は、周辺の色から計算で求める。Linuxでは、画像処理に「ImageMagick」というソフトがよく使われる。このImage
イノベーションを生み出し続ける米Apple社は、業績面でも超が付くほどの優良企業だ。直近の2014年度(2014年9月27日を末日とする会計年度)では、売上高が約18兆円、営業利益率が約30%と驚異的な数値をたたき出している。 革新的な製品である「iPhone」が、莫大な売り上げをもたらしていることは理解できる。しかし、30%もの営業利益率を実現している理由は、あまり知られていないのではないか。一般に、販売台数が多いからといって、必ずしも利益率が高いとは限らない。Apple社には、もうかるための仕組みがある。そして、それは1970~1980年代の古き良き日本のメーカーが実践していた設計手法と極めて似ているのだ。 現在、日本のメーカーは、「技術力はあるのにもうからない」「コンペで負ける」といった課題を抱えている。そうした状況を打破するためにも、Apple社のもうかる仕組みを学び、自社に取り入
「イノベーションは滅多に起きるものではない。頑張ってやると全く別の方向に向かってしまう。まずは何がイノベーションで、そうではないのかをはっきりさせることが重要だ」―――。 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の楠木建氏は2014年7月3日、日経BP社が東京・品川プリンスホテルで開催中のイベント「IT Japan 2014」の特別講演で「イノベーションとは何か、何ではないのか」をテーマに登壇(写真1)。イノベーションとそうでないものを明確に切り分ける視点と、イノベーションの実現に対してとるべき構えについて語った。 楠木氏は冒頭で、イノベーションを実現しようと頑張る企業ほどイノベーションから遠ざかる理由について、以下のように述べた。「何か新しいことをして現状を打破することがイノベーションだという単純な思い違いがある。何がイノベーションか、そうではないのかをはっきりさせると最初の誤解が解ける」。
破壊的イノベーション――。既存のやり方や製品の存続を脅かし、最終的にはその存在までをもぶち壊す、そんな形のイノベーションをこう呼ぶ。一方で、破壊的イノベーションは新たな成長産業を生み出し、「産業の新陳代謝」を促進する存在でもある。 破壊的イノベーションをどう捉えるかは人によって異なるだろう。(1)新たなチャンスと捉える、あるいは(2)既存の考え方や事業を邪魔するものと捉える、といった大きく二つの態度に分かれそうだが、これまで連綿と続けてきた商売を“破壊”される側からすれば、(2)と捉える方が多そうだ。 その結果、外部で破壊的イノベーションが起こりつつあるとき、存続を脅かされる側は「抵抗勢力」として既存の規制などを盾にその芽を摘む、あるいは時間稼ぎのための行動に出る、はたまた傍観者として緩慢な衰退に身を委ねることになる。 プロフィール:和歌山県出身。43歳。近畿大学商学部卒業。1993年4月
「オレたち,マスゴミって呼ばれてるんだぜ,知ってた?」。向かいの席で藤堂さんが言う。もちろん知っている。小心者なので,そのことをいたく気に病んでもいる。 ゴミとか露骨に言われれば,ちょっと口を尖らせて言い訳してみたくもなる。けど,冷静に考えてみればちっとも意味があることではない。そう呼ばれるにはそれなりの理由があるわけで,弁明をしたらその「理由」がなくなるわけでもないだろうし。で,このことについて改めて考えてみることにした。 いらねーんだよ,お前ら まず,「マスゴミ」の意味である。ゴミと言うからには「不要なもの」,つまり,「偉そうにしてるけど,ちっとも役に立たないじゃないか。いらねーんだよ,お前ら」ということか。確かに年末年始のテレビ番組をつらつらと見ていて,「こりゃ,いらんと言われても仕方がないかなぁ」などと思わないでもなかった。一昔前まであったはずの,手の込んだドキュメンタリーや本格ド
東急ハンズの場合、技術者は「バーサタイリスト」だ。つまり、一人で何でもやる技術者である。要件定義からプログラミングまでの全てを担う。IT部門がバーサタイリスト集団になることで、ビジネスの要請に即座に対応して、システムをスピーディーに作り上げられるようにしているのだ。 ただ、技術者がそんな万能選手になることが、実際に可能なのか。その問いに対して、長谷川秀樹執行役員は「企業の規模が大きくなると、必要なシステムが複雑になり、分業しないと作れないと考えるのは、一種の思い込みだ。クラウドやツールがそろってきた今では、やる気さえあれば技術者は一人で大概のことができる」と解説する。 極端な例が、前回紹介した56歳の新人プログラマーの鎌田氏だ。システム開発の経験は無いが、システム導入プロジェクトに関わることで、「ITによってビジネスを大きく変えられる」(鎌田氏)ことを経験した。そこで役職定年を迎えたのを機
iPhoneやiPadなど相次ぎイノベーションを起こしたスティーブ・ジョブズが亡くなってから2年が過ぎ、次のイノベーターは誰か、先見性のあるビジョナリーは誰かという話題がネット上やマスコミでたびたび取り上げられる。ここで必ず名前が上がるのが、米アマゾン・ドット・コムの創業者、ジェフ・ベゾスCEO(最高経営責任者)だ。 ジェフ・ベゾスは1994年、ウォルストリートの金融会社を退職してアマゾンを起業した。当初は奥さんとエンジニアとたった3人でガレージで開業したが、そこから20年、いまや株式時価総額は約18兆円、社員数は世界で約9万人という大企業となった。日本企業の時価総額と比べても、1位のトヨタ自動車の約22兆円と2位のソフトバンクの約11兆円の間に入るほどの規模にまで成長している。 もっとも、これほどの大きな会社であり、歴史があるのにもかかわらず、アマゾンの企業文化についても、経営者であるジ
あらゆる製品やサービスに必ずといっていいほど付いてくる製品説明や使用方法が書かれたマニュアル。企業においても経費精算や出張申請の仕方など、様々な“マニュアル”が存在している。最近でこそ電子化されていることも多いが、いざ必要な時になると、なかなか見つからず、見つかっても情報が少し古いということは日常茶飯事だ。 そもそも分量が多く読む気すら起こらないこともある。そんな状況をスマートフォンのカメラを使って改善するツールと言えるのがスタディストが開発・提供するサービス「Teachme」だ(写真1)。誰もが共有できる分かりやすいステップアップガイドを作成するためのサービスで、業務用マニュアルだけでなく商品説明や道案内など、手順を示すことが有効なあらゆるシーンでの利用が想定できる。 一般のユーザーが閲覧できるWebサイトから見ると、Teachmeはコンシューマ向けサービスのような立て付けだ。だが、9月
あらゆる施策がはまった─。 サントリーが2008年に始めた「角ハイボール」作戦は、そう呼べそうなほど短期間で成果が表れた。2008年12月期、2009年12月期と2期連続で同社のウイスキー出荷量は前年を上回った。「角瓶」をソーダで割って飲む「角ハイボール」が、全国の酒場を巻き込んで大きなブームとなったことが大きい。角瓶は原酒不足の懸念から、2010年6月以降出荷量を調整しているほどだ。 スピリッツ事業部副事部長兼ウイスキー部長を務める執行役員の水谷徹(写真1)は、2008年4月からウイスキー事業を指揮してきた。「最初から消費者のインサイトを見抜いていたわけではない」と謙遜するが、若者の飲み方の変化をとらえたマーケティング戦略の転換が奏功したことは間違いない。 サントリーは長らく低迷するウイスキー市場の打開策として、なぜ角ハイボールを投入したのか。どのような要素が受け入れられたのか。その軌跡
業績を上げるには顧客満足度の向上は不可欠、体系化されたプロセス管理で、商品や技術の開発効率が上がる――。こんな経営の「常識」が必ずしも正解とは限らない。名だたるグローバル企業ではゼロから見直し、よりブラッシュアップされた手法を開発している。 外食しようとお店に出かけると、テーブルの上に「お客様の声を聞かせてください」と書かれた簡単なアンケート用紙が置かれていることが多い。「料理の味に満足しましたか」「従業員の接客はどうでしたか」。いわゆる顧客満足度(CS)調査だ。 しばらく前に行ったチェーン店でもこうした用紙が置いてあった。味はそこそこだが、値段が安いのでまあ満足。ただし料理が出てくるのが遅く、従業員を呼んでもなかなか来てくれないのでサービスにはかなり不満を感じた。たぶん客の入りに比べて従業員数が少なすぎるのだろう。 しばらくして、同じチェーンの別の店に行ったところ、前回と同様、アンケート
もちろん、開発課題はそれだけではなかった。ハートウエアとソフトウエアの両面で新規開発する項目は多かった。このため、エアボードを商品化するまでは残業の日々が長く続いたが、開発チーム全体が世の中にない新しい商品を作るという高いモチベーションを持って望んだことで、いくつかの壁を乗り切れたと思う。最終的に、当初計画から約1週間遅れとなる2000年12月1日に、エアボードの発売にこぎ着けたのだった。また、いよいよ発売に向けて業務が架橋になる2000年4月には、従業員の家族(独身者にはご両親、既婚者には奥様・ご主人)、工場からの出向者、協力会社の社員にはその工場のトップ、協力会社の社長に「現在ソニーにとってとても重要な業務に携って頂いており、これから厳しい残業が多くなりますが、健康には注意致しますので、ご家族のご協力を宜しくお願い致します。」と言った内容の手紙を出していた。 開発チーム全員の士気を高め
「今後50年間、100年間、成功を続け、環境の変化に対応していく企業を1社だけ選べといわれれば、わたしたちは3Mを選ぶだろう」。ジェームズ・C.コリンズとジェリー・I.ポラスが、著書『ビジョナリーカンパニー』のなかでこうたたえるなど、米スリーエムの経営手法を賞賛する書籍は数多い。実際に取り入れる企業も少なくない。本業以外に15%の時間を費やしてよいという「15%ルール」を米グーグルが「20%ルール」に応用しているのは有名だ。 スリーエムの強さは、革新を続けることを経営指標としている点にある。全売上高のうち、発売から1年以内の新商品が10%、4年以内の商品が30%を占めなければならないのは、その一端だ。日本法人である住友スリーエムも同様である。新商品開発に関しては、1年以内の商品の売上高比率が約15%、4年以内では50%以上と、本社の目標を上回っている(図1)。金子剛一副社長は、「当社と同じ
岩田 聡 氏(任天堂 取締役社長) <上> できるかどうかはやってみないと分からないし、もっと言えば運なのです JTNインタビューの初回を飾るのは、任天堂 取締役社長 岩田 聡氏である。これからのエレクトロニクス技術者に必要なものは、「知的好奇心」だとし、「新しいことを覚えることを面白いと感じない技術者が,世の中で必要とされるものを生み出せるはずがない」と説く。長時間にわたったインタビューを3回に分けて掲載する。今回は、その第1回である。聞き手は、日経エレクトロニクス編集長 田野倉 保雄(当時の役職)と道本 健二。 ─DSやWiiの成功は,岩田さんが社長に就任して掲げた「ゲーム人口の拡大」というスローガンに負う部分が大きいと思います。このスローガンは,社長就任前から考えていたものでしょうか。 社長に就任した瞬間から考えていたわけではありません。最初から分かっていたと言えればカッコいいけれど
「安売りから脱却したければ『安売りからの脱却』を目的としてはならない」。日経エレクトロニクス2012年1月23日号では、このことを主張した特集「脱安売りの極意」を根津記者と共に執筆しました。 冒頭の文章は何やら禅問答めいていますが、難しいことを言っているわけではありません。「目先の損得よりも、顧客に提供する価値を優先する者が結局は成功する」という、古来、商売の王道とされている考え方の表現を変えただけです。仕事をしていると、ついつい目先の利益にとらわれたり、従来の仕事のやり方に流されたりしがちです。そんなときに「自分は顧客に何を提供できるのか」という基本を忘れないようにしよう、ということです。 この特集の出発点になったのは、私が2011年9月に執筆した「価格を上げるという選択肢」というNEブログでした。このブログの最後に「高くても買ってもらえる製品をメーカーが開発するにはどうすればいいか、引
追求 まだ私が電機メーカーの研究所に勤務していたころだから今から20年も前のことになるが、資料室で学術誌を拾い読みしていて、ある強烈な論文を見つけた。それは権威のある物理学の論文誌に掲載されていたもので、著者はイギリスだかフランスだか忘れたが欧州の大学教授で、かなり高名な物理学者のようだった。その教授と助手の間に、このようなやり取りがあったに違いない。 「ブラックコーヒーとミルク入りのコーヒーでは、どうもミルク入りの方が冷めにくいように思うのだが、君、どう思うね」 「いや先生、それは気のせいでしょう」 「そうかなぁ。一丁調べてみるか」 ということで、研究が始まる。その様子を論文はあますことなく伝えているのである。 まずは、同じ温度、同じ量のブラックコーヒーとミルク入りコーヒーを同じカップに入れて用意し、同じ環境下に置いて温度変化を測定する。この結果、ブラックコーヒーの方が冷めやすいことが証
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