ロシア人が『ファイト・クラブ(Fight Club)』を真に受け過ぎていたとしても、誰も驚きはしないだろう。ロシアでは、DNAに刻み込まれた陰惨な暴力がさまざまな形で噴出しているのだから。同性愛者を標的とした暴行の増加。性器を切除した軍隊内部のいじめ。とどめに、上半身裸で田舎を闊歩し、ライフルで動物を撃ち、民衆の心を掴もうとする大統領。 2008年、モスクワ。素手で闘うアンダーグラウンド格闘技「ベアナックル」の元ファイター2人が、現実世界でファイト・クラブをスタートさせた。「ローニン(浪人)・ファミリー」と名づけられたこのクラブでは、900ドルを支払えば、どんな高給取りのビジネスマンであろうと1週間に渡り、赤の他人の前で叩きのめされ、たっぷりと屈辱を味わえる。「エリートの都会人を肉体的にも精神的にも痛めつけて、本物の男にするのがローニン・ファミリーの目標だ」とクラブの創始者は言明する。