ブックマーク / delete-all.hatenablog.com (8)

  • オヤカタサマーはかく語りき - Everything You’ve Ever Dreamed

    ひと昔前なら、あの言葉を耳にするだけで身をひき裂かれるような気持ちになったものですが、時が経つ、というのは不思議なもので、雨が降って流れとなり大地の岩を削るように、言葉のもつ鋭い角も時の流れに削られ緩やかに丸くなるらしく、今はもう、あの言葉に触れても私は別人のように穏やかで、自分の変貌に笑ってしまいそうになるのですが、時折、当時の、黒っぽく、ざわざわした感じはなんだったのだろうと、まったく関係のないタイミングで、たとえば蕎麦屋でウドンにするかソバにするか思慮しているときに、振り返るように私は考え分析をし、あれは嫉妬や妬みといわれる感情だと思い当たり、確かに当時の私は些細なことに打ちのめされ、実際はそうでないのに世の中から全否定されたような気分になっていて、世の中の、私を笑うもの蔑むものはもとより、支えてくれるもの、信じてくれるもの、さらには無関係なものまで、すべてを妬み激しく憎悪する一方、

    オヤカタサマーはかく語りき - Everything You’ve Ever Dreamed
    kodaif
    kodaif 2009/12/16
    "雨が降って流れとなり大地の岩を削るように、言葉のもつ鋭い角も時の流れに削られ緩やかに丸くなるらしく、今はもう、あの言葉に触れても私は別人のように穏やかで、自分の変貌に笑ってしまいそうになるのです"
  • とある課長の断層撮影(CTスキャン) - Everything You’ve Ever Dreamed

    レントゲンで黒い影の映ってしまった肺をCTスキャンするために紹介状を持って東京の病院に行き、名前を呼ばれ、白い服をお召しになられた黒いブラジャーのおばはんのあとについて放射線を取り扱っている地下施設へ向かう際の、おばはんの台詞がまるで風俗嬢、「こういうとこ来るのはじめて?」。いやだなあ、緊張や恐怖や不安なんてないわけない、違う違う、あるわけある、おっろー日語は難しいなあ、つってあたふたしている僕に気を留めることなく、こちらの部屋になります、という、おばはんの目は笑っていた。 で、巨大な機械が置かれた白っこい部屋に入るとメガネのオッサンから、服を脱いで…これに…着替えてください…とローテンションで言われ、渡されたのが薄手のガウンみたいな衣服。さすが東京スキャンは神奈川レントゲンと違って粋だねえ、どうだい着替えがあるよ、襟がないのが下町風ね、ってブリーフ一枚になり、その薄ガウンを着ると丈が腰

    とある課長の断層撮影(CTスキャン) - Everything You’ve Ever Dreamed
    kodaif
    kodaif 2009/12/10
    "医師の厳つい顔がやわらかくなっていた。「僕は…結核を患ったことはありません…」「ご冗談を…」厳つい顔がひきつっている。「いや本当です…僕は知らないうちに結核を患い、自然に治癒したということですか?」"
  • 12月9日の背伸び - Everything You’ve Ever Dreamed

    僕の右胸にある黒い影が先々月よりひとまわり大きくなっているのがわかって、明日、僕は紹介された都内の病院でCTスキャンを受けることになった。昨夜、目にしたものが頭から離れなくなる。昨夜、僕は興味位で影の見つかった部位をインターネットで調べていた。検索結果に、ある病名が並んだ。ある種の圧力がその名にはあった。肺癌。十数年前、ひと夏のうちに僕の祖母を襲い、葬った病だった。 病院を出て家へ向かう。歩道に落ちた枯葉をスニーカーが踏みしめる音だけがした。「よくあることです」、診察した医師はなにごともなかったかのように、さらりと僕に言った。彼の患者をむやみに不安にさせまいとする気づかいと職業経験上から生まれた言いまわしはかえって僕を不安にさせた。よくあること?もし僕の胸にある影が悪性のものだとわかったとき、彼はそれでも言うのだろうか。さらりと、何事もなかったように。よくあること、と。 言葉は、想いを伝

    12月9日の背伸び - Everything You’ve Ever Dreamed
    kodaif
    kodaif 2009/12/09
    "僕は家族や友人、自分の周辺にいる人を大事にしたいと常日頃は思っていて、不測の事態で僕が斃れたときでも迷惑をかけないようにしたいとは考えていたのだけれど、実際、今の僕は自分のことしか頭にないのだ。"
  • 平塚のソウルフード「老郷」の湯麺を紹介するZE! - Everything You’ve Ever Dreamed

    ビビったわけでも総務ガールの視線が冷たいからでもないけど今日からロックン・フード・ブログになりました。これからは当たりさわりのない写真と教科書みたいなキャプションで攻めていくけど、事情を察してよろしく頼むぜベイビー。会社バレきっつー。 で、突然ですが世間一般津々浦々堅気のお天道様の真下には「ご当地ラーメン」というものがございまして、ま、大概は「ご当地」と名乗っておっても人口十数万程度の少し大きな街に行けばべられるフザけた軟派者。しかし、平塚の湯麺は全国に拡散しないモノホンのご当地。密教のごとく一子相伝の拳法のごとく平塚周辺でのみ生息しているガチご当地。今日は早々に雰囲気が劇悪な会社から逃げ出して、平塚湯麺の総山と平塚市民のあいだで伝承されている平塚駅西口「老郷」を訪れてみました。 キャバクラや風俗店が立ち並ぶ一角に「老郷」はあります。蛇足ですがピンサロ「電車でGO!」もご近所です。平日

    平塚のソウルフード「老郷」の湯麺を紹介するZE! - Everything You’ve Ever Dreamed
    kodaif
    kodaif 2009/12/08
    "街も随分様変わりしたけれど、老郷の湯麺の酸っぱさは変わらないでいてくれて、沖合から泳いできて浅瀬に差し掛かって足の先が砂にとどいたときみたいに、僕はいつも安心する。なんかそういうのってあんじゃん?"
  • 日記が静止する日 - Everything You’ve Ever Dreamed

    網タイツをはいた派手なギャルが配っていたティッシュペーパーに「クリ○○ス特別サービス!ドM 看護婦 ペンライトのぞき」という文言がプリントされた紙が挟まっていた。このような文句の場合「ドM」とはサービスを受ける側がマゾになれるのか、サービスを施す看護婦がマゾなのか、よくわからない。ドMと看護婦の間にあるワンスペース「 」に僕は頭をかかえてしまう。並列された「ドM」「看護婦」「ペンライト」「のぞき」四つの言葉の関係性も不明瞭だ。やれやれ。僕はビング・クロスビーのホワイトクリスマスが流れるオフィスでぼんやりとドM看護婦について考えはじめていた。 ドM=看護婦と仮定するなら、「ドMの看護婦の痴態をペンライトをもちいてのぞく」「ドMの看護婦と店頭に陳列されたペンライトをのぞく」と解釈するのが自然だ。あるいは「ドM看護婦がプライベートで所有する、大人のおもちゃとして大活躍中ペンライトのミズシマヒロ君

    日記が静止する日 - Everything You’ve Ever Dreamed
    kodaif
    kodaif 2009/12/07
    "ばれたところで恥ずかしいことなど何一つない日記ですから、出るところに出ろって言われたら出ますけどね僕は。ってこんな日記書いたら認めたようなものでバカなほどロックンロールだよなあ僕は。"
  • 誰でも知りたがっているくせにちょっと聞きにくい上司のすべてについて - Everything You’ve Ever Dreamed

    今年の部長は不幸つづきです。父。母。弟。義父。義母。従兄弟。多くの親族が亡くなり、それを理由に会社を休んでいます。従兄弟は僕が知っているだけで四人、義理の母上様は三回は亡くなっています。複雑な家庭環境なのでしょうか。義理の母上様はゾンビなのでしょうか。 部長の家の前で大型タンクローリーが大破炎上したこともありました。部長の家の前を走る幅3メートルほどの片道一車線で、タンクローリーが大爆発して炎上、危なくて家から出られないといい、部長は会社を休んだのです。タンクローリーが燃える音なのでしょう、ジャンジャンバリバリ、遊戯施設のような雑音のする電話で部長の話を受けたのは僕ですから、昨日のことのようにおぼえています。ジャンジャンバリバリ。タンクローリーはその後も二回、爆発し、部長は二日休みました。 あるとき、親族の葬儀に参加した不幸な部長の休み明けに、心の優しい僕が気をつかって「お気の毒でしたね。

    誰でも知りたがっているくせにちょっと聞きにくい上司のすべてについて - Everything You’ve Ever Dreamed
    kodaif
    kodaif 2009/12/04
    "部長の休み明けに、心の優しい僕が気をつかって「お気の毒でしたね。大変でしたね。部長…」声を掛けると部長は笑いながら「なにが?」。僕は陰になり、部長の背後にあった空気洗浄器がごうごうと鳴っていました"
  • とある友人の悲惨な離婚- Everything You’ve Ever Dreamed

    友人離婚した。先生、小説にしてくれ、名前を出してもいい、書籍化のさいに金をくれればいい、と人から言われているが、離婚というデリケートな話であるし、節度っつうの?このような話題で、人を特定するような行為は暴挙であって、いくら僕がロックンロールだとしても、ためらってしまう。数少ない友人は大切にしたい。売りたくない。これが匿名の理由だ。 で、もう堪えられない、離婚だ、つって離婚する友人アライ(id:tell-a-lie)と新宿で飲むことになり(名前出してしまった!)、午後六時、アルタ前に現れた彼の姿を見て僕は驚いた。眼鏡マスク、全身黒、伸びた髪、左右非対称の眉、うつろな目、口元からは「金…金…」。端正な青年が変態カネゴンに…。「金、当にないんだけどいいの?」「今日はおごるよアライ君」つうわけで居酒屋。 とりあえず生ビール。「マジで離婚したの?」「マジですよ課長」。へぇネタじゃないのね。

    とある友人の悲惨な離婚- Everything You’ve Ever Dreamed
    kodaif
    kodaif 2009/11/25
    "そんなマンションに毎晩帰っているのか…。神さま…。教えてください山は死にますか川は死にますかマンションは死にますかローンは死にますか嫁は死にますか愛は…愛は死にますか?駄目だ駄目だー。生ビール追加。"
  • 恥の多い会社に勤めてきました。 - Everything You’ve Ever Dreamed

    恥の多い会社に勤めてきました。自分には、普通の会社というものが見当つかないのです。今日は会議がありました。月次定例営業会議。月次と、たいそうな名前がつけられていますが月に四度は開かれています。もっとも多いときで月に十度は開かれたと記憶しています。十一月五日木曜午後五時。部長は会議の日時をそう決めました。前回の会議の終わりに部長自ら席上で伝達したのですから間違いありません。ですから自分も、腰をすえて午後の仕事に取り掛かっていたのです。 午後三時、社会の窓を半分ほどひらいたままの部長があらわれ、「おい!」と自分に声をかけ、「会議だ。すぐにメンバーをあつめるんだ」と言いました。自分はわざとらしく卓上に置いてあるガンダム目覚まし時計《クロック・ジオン》を見ました。「会議は五時からではないのですか?」「六時から日シリーズがある。テレビで観戦しなきゃいけないだろ」「はい…」自分はことさらに、消え入る

    恥の多い会社に勤めてきました。 - Everything You’ve Ever Dreamed
    kodaif
    kodaif 2009/11/09
    "ただひとこと、簡潔に、「太陽が沈まない話だ」と付け加えました。会議室がしんとして耳が痛いほどでした。また誰かが「もうすこし具体的なストーリーを」と言うと、ただ「太陽が沈まない話だ」の繰り返しです。"
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