画面定義書があるのにまともなER図がない。業務システムの開発プロジェクトがそういう状況を一瞬でも経由したのであれば、大きなリスクを抱えていると考えたほうがいい。小さな案件でない限り、デスマーチに陥る公算が高い。 喩えるなら、高層ビルの「上モノ」の図面が詳細に出来上がっているわりに「土台」の図面がないようなものだ。その点を問われ、 「ああ、ボーリング調査も土台設計も後でしっかりやるから大丈夫です。土台の図面なんてほら、専門的すぎてお客さんが見てもピンと来ないじゃないですか。お客さんが知りたいのは土台とかではなくて上モノのデザインなんですよ。なんといっても顧客の納得感が大事です」 なんて言う建築士はいない。「顧客の納得感」が重要でないと言うつもりはないが、それだけを基準にして高層ビルを設計できるのなら苦労はない。専門的な仕事の難しさは、顧客には見えないし想像もできない膨大な部分の整合性をはかる