■ 英語でベナレス、ヒンドゥー語ではバラナシという。首都デリーから南東に約82キロ。ヒンドゥー教最大の聖地であり、インド各地から年間100万人を超える巡礼者が訪れる。 街を流れるガンジス河畔は「大いなる火葬場」として知られ、1日に100体近い遺体が金銀の艶やかな布にくるまれ、河岸に点在する火葬場へと運ばれる。遠藤周作は「深い河」の中で「ガンジス川は指の腐った手を差し出す物乞いの女も殺されたガンジー首相も同じように拒まず一人一人の灰を飲み込んで流れていきます」と書いている。 ■ 生も死も一緒に野ざらしにされるようなこの地を旅をしたことがあった。最初の旅は、19歳の夏。ムンバイ(当時はボンベイといった)、オーランガバード、デリー、カジュラホを経由して、最終目的地のバラナシの手前100キロほどの小村にたどり着いた。 この国の街はどこも、すべての生き物の希望を奪うような渇きに支配されている。ターメ