中野麻美『労働ダンピング』 “男性正社員が女性非正規を搾取している” 男性正社員は、既得権益のうえにあぐらをかき、そのしわ寄せを女性などの非正規労働者はうけている――というタイプの主張をかなり見かけるようになった。派遣や請負など非正規の深刻な実態が明らかになるにつれて、その攻撃の矛先を「男性正社員」にむけるのだ。 たとえば、城繁幸『若者はなぜ3年で辞めるのか?』(光文社新書)などもこうした論調に巻き込まれているし、ぼくがこのサイトで扱った「良心的」な本、たとえば丸山俊『フリーター亡国論』(ダイヤモンド社)なども解決策はこうした結論に傾斜している。 ドラマ「ハケンの品格」でさえこの影響を受けている、といっていい。 その元ネタの一つとして、NHKスペシャル「ワーキングプアII」に最も新自由主義的な学者として登場する八代尚宏(国際基督教大学教授)の『雇用改革の時代』(中公新書、1999年)をあげ