社会学の講義やエッセイ
なんだかアクセスが多くてびっくりですが、それだけいろんな人が研究の方法に関心を持っているということでしょう。 昨日、こちらの大学院で研究している日本出身の院生の方とお話をする機会がありました。課程留学された動機を伺ったところ、少なくとも当時の日本ではなかなか学べなかった研究法の指導が充実しているから、といったことをおっしゃっていました。「最近は社会学でもちょっとずつ変わっているという感触はありますよ」と伝えましたが(あくまで感触)、なにしろ北米の大学の研究法関連の文献や授業の充実度はすごいですからね〜。 文化もあると思うんですよ。アメリカ、カナダでは、研究じゃなくても「自分の持っている情報を説得力を持って伝える(presentation)」能力に大きな価値を置きますからね。 ですから研究報告でも、難しい話をする人がいるとして、聞き手がちんぷんかんぷんだと、聞き手のレベルが低いと思われずに、
私の論文などに興味がある人はごく少数でしょうから、ブログマターに戻って先日の話を続けましょう。 デモクラシーについての私の理論的立場は既にお話したので、今回は東的デモクラシー論が持つ可能的意味にグッと焦点を絞りたいと思います。東さんは「朝生」終了後から、ご自身のツイッターで自らが構想する新たなデモクラシー像について断続的に説明していらっしゃいます。その中で、「データベース民主主義」こそ自分が意図するところだと語っておられる。ほとんど鈴木謙介さんの言う「数学的民主主義」の言い換えですが*1、私の考えでは、これは同時に「データベース全体主義」とも言い換えられます。 早とちりしないで下さい。全体主義だから悪いと言いたいのではありません。現代社会では「良い全体主義」が可能になっているのではないか(それに抵抗すべきか否か)、といった議論は、社会思想分野におけるトレンドになりつつあります*2。全体主義
※注記を追加しました。(09/10/09) (過去のエントリー) デヴィッド・マースデン「雇用システムの理論 社会的多様性の比較制度分析」(1) デヴィッド・マースデン「雇用システムの理論 社会的多様性の比較制度分析」(2)──市場と商品 デヴィッド・マースデン「雇用システムの理論 社会的多様性の比較制度分析」(3)──内部労働市場論とその批判 (関連エントリー) 日本の賃金制度──考えるための一つの補助線 日本の雇用システムの柔軟性とその弊害 前回は、内部労働市場論についてその意味と歴史的な流れを確認するとともに、不安定な需要という経済環境のもとでは、内部労働市場は、その外側に緩衝材としての「二次的労働市場」を必要としていることをみてきた。内部労働市場では、オン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)などによって技能を蓄積し、それによって、「給料がよく雇用が安定して昇進機会もあり、恣意的な懲
株式会社鳥人間 郷田まり子 2009/10/1 ついにプレビュー公開が始まった、リアルタイム&(ポーリングによる)擬似プッシュ型のコミュニケーションとコラボレーションのプラットフォーム「Google Wave」の特集です。その概要と「Gadget」「Embed」「Robot」という3つの拡張APIを使ったWaveの作り方を徹底解説します ついにプレビュー公開が始まった「Google Wave」とは 9月30日に、Google Apps アカウント所持者を対象にしたプレビュー公開が始まったGoogle Wave(以下、Wave)は、グーグルが世界に提案した、1つのコミュニケーション&コラボレーションプラットフォームです。 Waveを拡張することで、従来では実装が面倒であったプッシュ型の通信による複数ユーザー間での情報の同期を行うようなWebアプリケーションを開発できます。Waveについての詳
本日はちょっと辛口のお話を。 ある知財系BLOGの記事から、こんな2chのスレがあるのを教えて貰いました。 潰れそうな特許事務所について語るスレ ブラック特許事務所の見分け方☆Part6 知っている方も多いのかもしれませんが、まぁ、2chのスレですから、書いてあることの全てについてその信憑性を云々しても仕方ないものの、一部はある種の内部告発的な内容にも読め、さもありなんと思う部分があります。 長年、特許事務所は大企業依存型の事業構造をしており、かつては大企業を中心として質より量の特許政策をとっていたため、大量の特許出願を代理する必要がありました。一方で、政府の政策として弁理士の大幅な増員は抑制されていたため、実質的に弁理士が特許出願の全てに深く関与することは物理上無理とも言える状態にありました。このため、特許技術者という明細書作成(の補助)者の存在が必要不可欠であったわけです。なお、私は今
これまでのまとめ repon 「これまでのまとめですが、サバイブSNSのメンバーがいるようなブラック企業の特徴は、 ブラック企業しか行くところが無くなってしまった 一度ブラック企業に入ると、スキルが積み重ならないので、抜け出すことができない。 最初はブラック企業というわけでもなく和気あいあいとしていたんだけれど、だんだん経営がおかしくなってしまった。でも、ずっとその企業だけにいたので、その中でしか仕事ができず、結局抜け出すことができないでいる。まるで『茹でガエル』のような話だ です」 これが「ブラック企業」だ! c-taka 「基本的なスタンスですが、ブラック企業そのもの、というのと、ブラック企業に勤めざるを得なくなってしまった人、と言う問題がある。で、ブラック企業がどうなるかは、あまり興味のない問題だが、ブラック企業に勤める友人が多くいるのでほっとけないよ、というのが根本です。ですか
「多様な世界に目を向けよう」。 これは「双書Zero」が読者のみなさんに届けたい、ひとつの大切なメッセージです。 なぜなら、自分の見たいものしか見ない人が増えているような気がするから。 どうして、自分の好きな小さな世界にいることが、もったいないのか。 どうすれば、自分を世界に開いていけるのか。 アカデミズムの枠を超えて活躍する、宮台真司氏と森岡正博氏に聞いてみた。 ――現代は、これだけメディアが多様化しているにもかかわらず、仲間ごとに小さくまとまり、内閉しているように見受けられます。その弊害をどのように乗り越えていけばよいのでしょうか。 宮台 まず押さえたいのは、論壇誌はなぜ凋落したのかということと、人文系のウェブサイトはなぜ活況を呈しているのか、です。 「オピニオン・リーダー」の概念で有名な社会心理学者ポール・ラザースフェルドが、一九五〇年代に「コミュニケーションの二段の流れの仮説」を提
2009.9.9 知財、メディア&アートの法務 第5回 「製作委員会」シンドローム −顕在化して来た、映画の著作権共有リスク− 弁護士 福井健策(骨董通り法律事務所 for the Arts) 今日、日本の商業的な劇場用映画はほとんどが「製作委員会」方式で製作されている。過去10年ほどで急速に拡大した、かなり日本特有な映画の製作方法で、TVアニメの製作でもしばしば見られる。 ■製作委員会とは 「製作委員会」とは、基本的には複数の会社が資金を出資しあって映画を製作し、完成した映画の著作権を出資者が共有する方法である。「製作委員会」のほか、「●●パートナーズ」「●●プロジェクト」と名乗るケースもある。 しばしば「民法上の組合を組成する」という表現をとるが、組合は法人ではないので、関係者の共同事業のことをこう呼んでいるに過ぎない。「組合」や「委員会」という用語を使うか否かにかかわらず、複数の会社
私は、今から26年前に旧労働省に入り、役人として仕事を続けていましたが、1995年から98年の間に外務省に出向し、ブリュッセルにあるEU代表部という外務省の出先機関に行き、3年間ほど向こうの労働行政、労働組合、欧州労連の方々といろいろとお付き合いさせていただきました。その時の経験がなかなかおもしろいと思いまして、日本に帰ってそのことを本にしました。 その3年間、1995年から98年というのは、日本の社会の風潮が大きく変わった時期でした。行くころはまだそれまでの日本の延長線上のような感覚が強かったのですが、戻ってきた時は、これまでの日本的なシステムのあり方はだめだと、構造改革しなければいかんという風潮一色になっていました。 しかも、今までの日本的なやり方はだめで、アメリカ型にならなければいかんという議論が非常に強くなされていた。そういうところにヨーロッパから戻ってきて、ヨーロッパのいろいろな
アンソニー・ギデンズ イギリスの社会学者。大きな政府による市場への介入でもなく、市場に重きを置く新自由主義でもない、「第三の道」を提唱。ブレア政権のブレーンとして知られ、ニュー・レーバーの雇用政策や社会保障政策に大きな影響を与えた。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス名誉教授、労働党上院議員。 イギリスでは、財政状況が厳しい中で、なぜ個人の職業能力を高めることに財政を投じることが社会の利益になると考えるに至ったのか。「あすの日本」プロジェクトの取材班は、労働党政権のブレーンであるギデンズ氏にインタビューを申し込んだ。待ち合わせた国会議事堂内に入るために緊張しながら保安検査を受けていると、突然、使い古したかばんを持った初老の男性が笑顔で声をかけてきた。ギデンズ氏本人である。まさか上院議員が1人で出迎えに来るとは思わず、その気さくな性格に取材班の緊張もほぐれ、インタビューは始まった。 第3の
わが国で自殺問題が深刻化したのは、1998年からです。当時の通貨金融危機の中、失業率や倒産件数が跳ね上がるのと時を同じくして、自殺者数が急増しました。しかし、景気がその後回復し、失業率も2007年まで低下したにもかかわらず、自殺者数は減少しませんでした(図1)。わが国における自殺率は主要先進国の中では最悪の状態が続いています。 警察庁の統計で2008年における職業別の自殺者を見ると(図2)、自殺者の半数以上が無職者でした(全体の56.7%)。また、原因別に見ると健康問題が大きく、半数近くに及びます。次いで経済・生活問題による自殺者数が、7000人以上存在します(原因は重複します)。 このようなデータは、自殺の発生時点の状況を捉えたものです。しかし、自殺者の多くは複数の要因が重なり、かつ様々な経歴を経たうえで自殺に至っていることが多く、自殺発生時のデータだけでは、経済社会全体を覆う課題は捉え
はじめに 1959年に「二つの文化」1)という講演の中でスノー(Snow, C. P.)は、「イングランドで知識人は人文と自然科学の二つのグループに分かれ、お互いに他方を理解するのが困難になり、同じ英語を語っているにも関わらず、コミュニケーションが殆どない」と論じた。彼はこの二つの文化の間に「橋を架ける」必要があると感じてこの講演で問題提起をしたのである。以来40年が経ったが、この二つの文化の間の溝は埋められるどころかますます広がっていくように見える。しかもこの二つの文化現象は、イギリスのみならず、日本を含めた全世界において認められる。 この「二つの文化」の存在を認める学者の多くはこれを教育の問題として捉え、教育、特に一般教育を通して改善がはかられると期待した。例えば科学者のあいだには文科系学生の科学教育により、この「二つの文化」間の溝を埋めようとする試みもあったが、顕著な成功があっ
岡田克敏さんの「足利事件の一側面」を面白く読みました。ここでは、「科学的思考の出来ない人が、科学技術の知識を要する判断を平気でやっている」ことの問題点を指摘しておられます。論理的、科学的な思考の出来ない人は、たまたま誰かが申し立てた「科学技術の知識らしいもの」を無批判に信じてしまう傾向があります。こういう人達は、「自ら考えて論理的に納得すること」をはじめから放棄しているのと、「一部の例証だけから原理を導くことは出来ない」という「科学の世界では当たり前のこと」を理解していないからです。 これは、明らかに諸外国よりも日本においてより多く見られる現象です。私は、その一因は、「文科系」と「理科系」を殊更に分けているかのような、現在の日本の教育制度にあるような気がします。また、会社などの組織体においても、お互いに「自分達の得意分野によそ者を入れたくない」といった「縄張り意識」が働いていることが多いの
取り次ぎの図書館流通センター(TRC)に始まり、書店大手の丸善、ジュンク堂書店、出版社の主婦の友社を傘下に収めた大日本印刷。出版業界へのM&A(合併・買収)、出資攻勢は、今年5月、古本販売最大手のブックオフコーポレーションへの出資で、一応の幕を閉じた。 講談社、集英社、小学館の出版大手3社と協調した出資。合計、約29%を握り、そのうち大日本印刷グループは約16%と筆頭の位置につけた。 発売直後に新品同様の出版物が半値でブックオフの店頭に並ぶ様は、出版業界にとって目の上のたんこぶでしかなかった。株主の立場で取り引きを規制し、業界を守ろうとしているのか。大日本印刷の森野鉄治常務取締役に聞いた。(「大日本印刷がブックオフに出資した理由(前編)」を先にお読みください) (前編から読む) ―― メディア制作のプラットフォームだけではなく、流通の一大プラットフォームも作ろうとしていますよね。そのために
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大学在学中からライターとして活躍してきた津田大介さん。週刊誌、インターネット誌、ビジネス誌、音楽誌などを中心に、幅広いジャンルの記事を執筆してきた。ネットカルチャー関連やデジタルコンテンツ流通、著作権問題などに詳しく、文化庁文化審議会著作権分科会の私的録音録画小委員会など、複数の諮問委員会に消費者代表のひとりとして参加、発言してこられた。 今回はその津田さんと、CPRA広報委員で貸しレコード二次使用料委員会の委員長を長くつとめてきた寺本幸司委員が、インターネットや携帯電話などの普及で環境が激変してきた音楽ビジネスの将来について、じっくりと語り合った。 「音楽」というコンテンツの力 ――CDレンタルの関係者が、今年に入ってから急激に中高生が店にこなくなったと発言しています。いろいろな原因が考えられるが、配信で音楽を入手するケースが圧倒的に増えているという調査結果もある。こういう状況につい
全文情報 I はじめに 近年,経済学の世界で,市場機構を研究の中心に据えるこれまでのあり方に代わって,契約の経済学的機能を考察する新しい分野が飛躍的に発展しつつある。それらは,初めは契約当事者間の情報非対称性のような,通常の完全競争市場の仮定が成立しない状況において,いかに洗練された契約を作ることで市場の失敗を克服できるか,という問題意識から出発したのであるが,そこから,さらに一歩進んで,市場とともに契約もまた完全に書き上げることのできない世界へと分析対象を広げていくこととなった。これが,いわゆる不完備契約理論(incomplete contract theory)であるが,ここでは,契約の不完備性を補う代替的な諸制度の意義について,既存の研究が見落としてきた多くの重要な側面を解明しうることが次第に明らかになってきた。 周知のように,不完備契約理論の構想は,「法と経済学」の始祖ロナルド
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