先日、知り合いの編集者から「新書を読んでいたら、旅行人のことが何ページも書いてあって驚いた」というメールが来た。『ニッポンの海外旅行──若者と観光メディアの50年史』(山口誠/ちくま新書)という本らしい。さっそく買い求めて読んでみた。 この本の主旨を大雑把にいうと、最近の若者は海外旅行に出なくなったのは何故か、どうしたら彼らが旅に出るようになるのかというものだ。若者はケータイやインターネットにうつつを抜かしているからだといわれているが、本当はそれが最大の原因なのではなく、海外旅行そのものが変節し、つまらないものになってしまったからではないかと著者は主張する。 著者がいう、つまらない海外旅行とは、こういう旅である。 ────「買い・食い」行動を前に押し出してきた『歩かない』個人旅行が、長い独走の果てにたどりついたのは、旅先の日常生活が伝えてきた歴史や文化から切り離され、お金を介した消費行動だ