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ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (38)

  • ChatGPTにとっての「良心」とは何か?

    GPT-4のような高度なAIとヒトを識別するにはどうすればよいか? 結城浩さんが興味深い記事を公開している。AIか人かを判断するポイントを、ChatGPTに尋ねている点が面白い。ChatGPTによると、次のような質問が苦手だという。 複雑な感情やニュアンスについて尋ねる クリエイティブな質問を投げかける 時系列に関する質問をする 矛盾した情報を提供してみる 言語の遊びや言葉の意味を理解する質問をする AIには、矛盾や言葉遊びに対応することが不十分であることが浮き彫りにされている。一方、人間は矛盾や誤りに対する反応が上手く、AIよりも柔軟に対応できているのが現状のようだ。 もっとも、AIに関する技術は進歩し続けており、より高度な会話能力を持つAIが登場することは十分期待できる。AIにヒトを模倣させるチューリングテストは合格だろう。 だが、どれほどChatGPTが進歩しようとも、ヒトと区別する

    ChatGPTにとっての「良心」とは何か?
  • 人生かけてくり返し読む『すべての美しい馬』

    コーマック・マッカーシー『すべての美しい馬』は、あまりに好きすぎて書評できない。そのため、以下の文章はわたしのノロケになる。 20年前に一目ぼれして以来、くり返し読んできた。好きなシーン(野生馬の調教、刑務所でのナイフ死闘)を擦り切れるまでめくったり、ふと開いた頁のセリフに啓示を探したり、リアルがキツいと感じたときのアジール(逃げ場)としたり、様々な読み方をしてきた。 10年前に文庫になったのを読み、読書会を機に先週また読み、いまKindleで原著に取り組んでいる。たぶんこれ、人生かけてくり返す傑作になるだろう。そしてこれ、読み返すたびに美しさを再発見し、苛烈さに震え慄き、運命に落涙する傑作となるに違いない。 時代錯誤のカウボーイ 舞台は1949年のテキサス、主人公はジョン・グレイディ・コール。祖父の牧場で生まれてから16年、カウボーイとして生きてきた。 冒頭は祖父の葬儀から始まる。そして

    人生かけてくり返し読む『すべての美しい馬』
  • コンサルタントの「武器」を手に入れる方法を書いた

    いわゆる「コンサルタント」と働くと、すぐに気づくのだが、やつらはめちゃくちゃ頭がいい。 この「頭がいい」とは、引き出しがたくさんあり、こみいった物事の理解が早く、口先が達者で、文章が上手い。悪用さえしなければ、ITエンジニアが学ぶところが大いにある。 奴らは、どのように考え、どうやって手を動かしているのか? 調査報告書(物)をダシに、奴らの手口を暴きつつ、コンサルタントが持つ強力な武器を紹介する。 マネジメントが社内(庁内)を取りまとめ、少なくない予算を割り当てるための、求心力となるもの―――それが、コンサルタントが作る調査報告書である。 完璧な資料というのがあるのなら、それはコンサルが出してくるものだ。読めば分かるし、読むだけで納得させられる。現在の問題と進むべき方向、そこに立ちはだかる障壁を乗り越えるための課題が、隙の無いロジックでクリアに書かれている。 これらは、何かの形式に当ては

    コンサルタントの「武器」を手に入れる方法を書いた
  • 一生ものの痛みとなる読後感『帰りたい/Home Fire』

    最後の頁を読んだとき、頭に入ってこなかった。 何が起こったのか、一読して分からなかった(分かりたくなかった)。 ありえない、嘘であってほしいと願い、読み直す。目に力を入れて、一字一句を読み直すことで、この悲劇を免れる別の解釈が得られるかもしれないと願う。 しかし、いくら読んでも変わらない。どんなに読んでもラストは変わらないことに気づいた時、ざっくりと胸が抉られていた。 この痛みは一生もの。 悲劇は沢山読んできたが、これは苦しい。人並み以上に耐性はあり、たいていの物語は飲み込めるが、これはダメだ、辛い、辛すぎる。毒が血液にのって隅々にまで行き渡るように、苦しみが全身を這いまわる。この作品から被った痛みは、最高レベルになる。 これは、イギリスのムスリムの家族の物語だ。 「ムスリム」とはイスラム教徒のこと。イギリスでムスリムとして生きる人々は、およそ300万人、総人口の5%になる。豚やアルコー

    一生ものの痛みとなる読後感『帰りたい/Home Fire』
  • 見えるのに見えていない最大の臓器『皮膚、人間のすべてを語る』

    私たちの顔には、ニキビダニが寄生している。 0.2ミリぐらいのダニで、肉眼では見えない。ポケモンで言うなら、8足のヤドランみたいな姿をしている。分類だと昆虫ではなく、節足動物になる(画像検索しないほうがいい)。 主な生息地は鼻や頬。眉毛やまつ毛、皮脂腺の奥深くに潜んでおり、にじみ出る脂質や微生物をべて暮らしている。8の太くて短い足で時速16ミリ移動し、つがいを求めてたまに出てくる。 名前からしてニキビの原因になりそうだが、むしろ逆。脂質や微生物を分解する酵素を持ち、皮膚の常在菌を一定に保ってくれる、共存共栄の関係とも言える。睡眠不足やストレスによるニキビが出そうな場所で、脂や細菌をべに集まるので、ニキビダニと呼ばれているのかもしれない。 授乳や抱っこで人から人へ伝染し、家族に特有な系統は、何世代にも渡って受け継がれる。たとえ海を渡り、別の大陸に移住しても、そのダニの系統は代々受け継

    見えるのに見えていない最大の臓器『皮膚、人間のすべてを語る』
  • 歴史認識をアップデートする『世界史の考え方』

    歴史を学ぶ意義について、物理学の教授と話したことがある。 歴史とは、過去を扱う学問だ 過去は既に確定しており、覆ることはない 新たな史料が発見され、史実が変わることは滅多にない だから、歴史を学ぶことは、昔の出来事を覚える作業になる。過去は確定しているから、教科書はほとんど変わらない―――そう教授は断言した。 「過去は変えられない、確定した出来事だ」という一言は妙に刺さり、なるほどなぁと納得したことを覚えている。 しかし、世界史を学びなおし、最近の教科書を読み直してみると、これは誤っていることが分かった。「過去は変えられない」は正しいが、「過去に対する認識」は変化するからだ。 現代は「平和な時代」か? 例えば、次の文を読んでみよう。 長い歳月のあいだに人間の暴力は減少し、今日、私たちは人類史上、最も平和な時代に暮らしている スティーブン・ピンカー『暴力の人類史』の主張で、かつては、頷いた方

    歴史認識をアップデートする『世界史の考え方』
  • 面白い世界史の本を3人で2時間お薦めしあった中から厳選した12冊(前編)

    お薦めの世界史のについて、3人で2時間語り合った。 世界史を学びなおす最適な入門書や、ニュースの見方が変わってしまうような一冊、さらには、歴史を語る意味や方法といったメタ歴史まで、脚家タケハルさん、文学系Youtuberスケザネさん、そして私ことDainが、熱く語り合った。 全文はyoutubeで公開しているが、2時間超となんせ長い。なのでここでは、そこから厳選して紹介する。 因果関係を補完する『詳説 世界史研究』 スケザネ:大学生、あるいは社会人の方々にも、世界史を学ぶには、まず真っ先に「高校世界史」をオススメしたいです。世界の歴史を幅広く知るという観点から、高校世界史はベストだと思います。 代表的な高校世界史の教科書は、山川出版社の『詳説 世界史B』。世界史の概観が400ページぐらいにまとめられてて良いなんですが、これだけだと記述が簡素で、理解するには少ししんどい。 実際、自分が

    面白い世界史の本を3人で2時間お薦めしあった中から厳選した12冊(前編)
  • この本がスゴい!2020

    今年の一年早くない? トシ取るほど時の流れを早く感じるのは知ってるけど、今年は特に、あっというま感がすごい。恒例のこの記事、もう書くの!? と思ってる。 毎年、「人生は短く、読むは多い」と能書き垂れるが、今年は、「人生は加速的に短く、読むは指数的に多い」と変えておこう。 そして、昨年と比べると、世界はずいぶん変わってしまった。 基的に外に出ない、人と会わないが普通になり、マスク装備が日常になった。オフ会や読書会でお薦めしあった日々は過去になり、代わりにZoomやチャットでの交流が増えた。 ポジティブに考えると、そのおかげで、読み幅がさらに広がった。わたし一人のアンテナでは、絶対に探せない、でも素晴らしい小説やノンフィクションに出会うことができた。お薦めしていただいた方、つぶやいた方には、感謝しかない。 さらに、今年はを出した。 ブログのタイトルと同じく、[わたしが知らないスゴは、

    この本がスゴい!2020
    ktakeda47
    ktakeda47 2020/12/01
    (一年早い)
  • すべての歴史は現代史である『日本近現代史講義』

    これは面白かった! 第一線の歴史学者による14講義。 「歴史」というと、教養マウンティングのWikipediaコピペか、イデオロギーまみれのチェリーピッキングが多いように見える。そんな中、歴史学者による実証的な手ほどきはありがたい。 過去を振り返るとき、わたしがよくやる誤りは、いま分かっている情報で判定しようとする姿勢だ。 たとえば、1941年のアメリカに対し、開戦を踏み切ったことについて。原油の依存先であり、圧倒的な国力差であるにもかかわらず、なぜ戦いを挑んだのか? 認知バイアスから見た対米開戦の理由 敗戦という事実から、それを「愚かな行為」と判断するのはたやすい。また「軍部の独走」など分かりやすい悪者を吊るし上げて思考停止するのもたやすい。しかし、そうした予断で向かってしまうと、貴重な歴史の証言から得られるものは少ないだろう。 そんなわたしの予断を、書の第8章「南進と対米開戦」(

    すべての歴史は現代史である『日本近現代史講義』
  • 萱野稔人・御田寺圭『リベラリズムの終わり』トークイベントまとめ

    世界中で嫌われている(らしい)リベラリズムの限界と未来について、萱野稔人さんと御田寺圭さんが考察するというトークイベントがあったので聴いてきた。 トピックハイライト 顔で選ぶと差別だが、頭で選ぶのは差別ではない 男女平等が大事なら、激務で過労死寸前の職場に女性を送り込むの? と聞くと、「そんなことは議論していない」 SNSで偉そうな教授はCiNiiで検索される リベラリズムでは財の再配分ができない理由 ≒ 仲間意識の限界 ←ここがリベラリズムの限界 多様性を重視するなら「リベラルを拒絶する人」をリベラルは受け入れるべきだが、リベラルを拒絶する人が子どもをたくさん産んでいる(ex.フランスのイスラム教徒) 日は一夫一婦制ではなく、非同期型一夫多制 リベラリストとは「リベラルを共有できる社会を守りたいだけの集団」になってしまう リベラリストへの信頼が失墜しても、リベラルを捨てないために今で

    萱野稔人・御田寺圭『リベラリズムの終わり』トークイベントまとめ
  • ミスが全くない仕事を目標にすると、ミスが報告されなくなる『測りすぎ』

    たとえば天下りマネージャーがやってきて、今度のプロジェクトでバグを撲滅すると言い出す。 そのため、バグを出したプログラマやベンダーはペナルティを課すと宣言する。そして、バグ管理簿を毎週チェックし始める。 すると、期待通りバグは出てこなくなる。代わりに「インシデント管理簿」が作成され、そこで不具合の解析や改修調整をするようになる。「バグ管理簿」に記載されるのは、ドキュメントの誤字脱字など無害なものになる。天下りの馬鹿マネージャーに出て行ってもらうまで。 天下りマネージャーが馬鹿なのは、なぜバグを管理するかを理解していないからだ。 なぜバグを管理するかというと、テストが想定通り進んでいて、品質を担保されているか測るためだ。沢山テストされてるならバグは出やすいし、熟知しているプログラマならバグは出にくい(反対に、テスト項目は消化しているのに、バグが出ないと、テストの品質を疑ってみる)。バグの出具

    ミスが全くない仕事を目標にすると、ミスが報告されなくなる『測りすぎ』
    ktakeda47
    ktakeda47 2019/09/25
    "測定基準が、本来の役割(実態のバロメーター)から離れ、目標そのものと同一視される・・・成果主義の風潮と、短期に目に見える結果を出すプレッシャーにさらされると、「カウントしやすい」数値目標を追い求める"
  • 『戦争の世界史 大図鑑』はスゴ本

    さらに、年代も場所も広範囲にわたって概説しているため、どんどんページをめくっていくことで、「いつ」「どこで」を取っ払って、「どのように」人は争ったのかに着目することができる。そして、時代を超えた視点から、全く別の時代の戦闘どうしの類似点やアイデアが浮き彫りになり、見るたびに発見がある。 たとえば、優れた将軍は、時代を超えた特質を備えていると指摘されている。チンギス・ハン率いるモンゴル騎馬軍と、1940年春にフランスに侵攻した装甲師団との間に類似性を見出し、機動力が戦闘と決する事例として紹介されている。 あるいは、敵軍包囲という古来の戦法は、古代ローマの世界でも第2次世界大戦でも等しく奏功しているが、5千年分の戦略図を眺めていると、戦いとは畢竟「どのように敵を包むか」のせめぎあいであり騙し合いであることが見えてくる。 テクノロジー戦争を変える テクノロジーが変えた戦争も興味深い(ここが一番

    『戦争の世界史 大図鑑』はスゴ本
  • 「すでにご存知のとおり」←これ

    完全に新しい話を、「すでにご存知のとおり……」で始める奴がいる。知らんがな、としかいいようがない。だが、この前置きで始めることで、あたかも題を「ご存知=ご承知」であるかのごとく扱うのはやめてほしい。そのハゲかけた髪をいっぽんいっぽん抜きたくなる。 仕事場で使われる罠として、「題より先に前提を混ぜ、あたかも前提が合意されたかのように話を持っていく」という技がある。 つまり、伝えたい主張(題)に入る前の導入部で、「合意されていない前提」を混ぜ込むことで、題に反応したら、前提に同意したことにするテクニックだ。フェアじゃないし、卑怯なやり方なのに、空気を吸うように使う奴がいる。 たとえばこう。 「この額で受注を獲得するために、さらに機能を2つ追加し、納期を4週間前倒すことが絶対だ」というやつ。するっと流して聞いてしまいそうだが、ポイントは、「この額」は社内で合意された見積でもなんでもない点

    「すでにご存知のとおり」←これ
    ktakeda47
    ktakeda47 2019/02/01
    "伝えたい主張(本題)に入る前の導入部で、「合意されていない前提」を混ぜ込むことで、本題に反応したら、前提に同意したことにするテクニック"
  • 人生を変えた一冊 『箱』

    品川駅の、HENNGEのメッセージが、好きだ。 駅をジャックするかのように、吹き抜けのデカイ看板、デジタルサイネージ広告がある。目に付くところ大きな広告であるにもかかわらず、モノトーン+簡潔なメッセージなので、逆に目立つ。なかでも、中央改札入ったとこの、日替わりメッセージが良い。 もとはHDEなのが、社名がHENNGE(へんげ)になるとのこと。スゴオフでお世話になっているので気になっていたのだが、このメッセージは刺さる。全部のメッセージは[あなたが変われば、世界も変わる。]で確認できる。 変化のメッセージといえば、イチロー「変わらなきゃ」、オバマ「Change」が浮かぶ。そこでは、ある種の覚悟や切実さでもって変化(へんか/Change)が求められている。いっぽうHENNGEでは、もっとコロッと、自由に気軽にお試しで、変化(へんげ/Metamorphose)することが誘われている。人はもっ

    人生を変えた一冊 『箱』
  • 「古典は本当に必要なのか」討論会へ行ってきた

    古典不要派と必要派がガチで議論するシンポジウム「古典は当に必要なのか」を見てきた。パネリストの紹介は[「古典は当に必要なのか」シンポジウム]で、youtube や twitterまとめ([第一部]、[第二部])で見ることができる。 3行でまとめる+問題の質 長いので3行でまとめる。「高校の古典(古文・漢文)は必要か?」という議題に対し、 不要派:古典は選択科目にして論理国語に注力すべき。あと現代語訳でおk 必要派:幸せに生きるための古典は原文も一緒でないと 会場の声:必要派が優勢だが、現場では現代語で教えてるのが実情 そして、この問題の質は次の通り。「古典は必要か?」と問われれば、必要に決まっている。問題なのは、どれくらい必要なのか? と問われていることに気づいていないことである。 そして、もっと厄介なのは、「これくらい必要」の「これくらい」は何を根拠にそう言えるのかを、示せていな

    「古典は本当に必要なのか」討論会へ行ってきた
  • 良い死、悪い死、普通の死 『現代の死に方』: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる

    死に方に良し悪しはあるのか? 書の結論は「ある」になる。 上々の人生だったのに最悪の死に方をする人もいるし、悲惨な人生だったが最期は安らかだったという人もいる。総合病院の医者である著者は、さまざまな死を扱っているうちに、ある結論に達する。それは、「死に方を助言することは、生き方を助言するくらい難しい」である。 それにもかかわらず、書を著した。理由は分かる、「悪い死に方」が多すぎるのだ。書を手にしているあいだ、「あなたは、自分の死に方について、あまりにも楽観的すぎる考えを持っているのではないか?」と問われているように感じた。どういう風に死にたいかと、どういう風に死ねるかは、全く違う問題なのだ。 普通の死 「普通の死」と言われて思い浮かぶのは何だろう。 事故死や殺害されるようなものではなく、老衰か、病気か。苦痛は無いほうがいいし、できれば自宅で、家族に囲まれ、友人に別れを告げて、惜しまれ

    良い死、悪い死、普通の死 『現代の死に方』: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
    ktakeda47
    ktakeda47 2018/12/24
    "事前指示書と合法の自殺幇助によって死ぬ時期と方法を自分で決められると思い込んでいると、結局は自滅する"
  • この本がスゴい!2018: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる

    まとめ すごく長くなったので、まとめる。まず、今年のベスト。 このがスゴい!2018のラインナップ。 このがスゴい!2018の一覧は以下の通り。 ◆フィクション 『ランドスケープと夏の定理』高島雄哉(東京創元社) 『舞踏会へ向かう三人の農夫』リチャード・パワーズ(河出書房新社) 『寿司 虚空編』小林銅蟲(三才ブックス) 『直線』ディック・フランシス(ハヤカワ文庫) 『ブッチャーズ・クロッシング』ジョン・ウィリアムズ(作品社) 『槿』古井由吉(講談社文芸文庫) 『平家物語』古川日出男(河出書房新社) ◆ノンフィクション 『知の果てへの旅』マーカス デュ・ソートイ(新潮クレスト・ブックス) 『愛とか正義とか』平尾昌宏(萌書房) 『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』吉川浩満(河出書房新社) 『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』ふろむだ(ダイヤモンド社) 『文学

    この本がスゴい!2018: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
  • ディック・フランシス『直線』が寝かせてくれない: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる

    「面白い小説とはセックスのようなもので、途中でやめるわけにいかない」という阿刀田高の言葉は、まさにこの作品のためにある。「あと少し」「もうちょっと」と面白さに引きずられ、読み始めると、終わりまで終われない。 競馬をテーマにしたミステリで有名なディック・フランシス。まずは、このディック・フランシスのシリーズの山を見てくれ。スゴオフで、みかん星人さんの蔵書をプレゼントしてもらったのだ(ありがとうございます!)。 ディック・フランシスの小説の特徴は、競馬が関連することと、邦訳タイトルが『大穴』『黄金』といった漢字2文字になるところ。この緑色の背表紙は、ずらっと書店で眺めると結構な存在感となる。 主人公や舞台が異なり、読み切りとなっているため、どれから読んでも摘まんでもいい。どれもお薦めというのは悩ましい。あまりなじみのない人に、「この一冊」を選ぶならどれになる? ということで、みかん星人さんに

    ディック・フランシス『直線』が寝かせてくれない: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
  • 子どもの目に触れさせないようにしていた作品

    結論から言う、見せたいものは隠せ。 子どもは、親の言うことなんて聞かない。これには「絶対」をつけてもいい。幼少ならともかく、成長につれて親の言うことには、反発する・無視する・聞き流す。 ただし、親の「する」ことはマネする。ここテストに出るところ。子どもは、親の「言う」ことは聞かないが、親の「する」ことはマネをする。 だから、親が「これ、好きになってほしいな」と思うものは、そのまま言っても聞かない。反対に、親が好きな「これ」を、子どもの目に触れさせないようにして、コッソリ楽しむ。すると、子どもはどこからか嗅ぎつけて、手に取ってみるのである。 「トットちゃん」より「鬼畜」好き わたしが嗅ぎつけたのは、『化石の荒野』『鬼畜』『人間の証明』だった。親からすると、『窓際のトットちゃん』『星の王子さま』『はてしない物語』を読ませたかったらしいが、そんな「オモテの」よりも、親の棚から盗み読みした西村

    子どもの目に触れさせないようにしていた作品
  • 『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』がいかにスゴいか、このブログを例に説明する

    人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』がいかにスゴいか、このブログを例に説明する 「悪魔の書」かつ「賢者の書」 これを「悪魔の書」という人がいるが、激しく同意する。なぜならこれ、知らないほうが幸せだったかもしれないことが書いてあるから。あれだ、「力が欲しいか?」と問われて求めた結果、知らなくても良い世界に気づいてしまうから。 その存在すら知らないまま、普通に穏やかに生きるほうがよいとも言える(知らぬがホトケやね)。「なぜアイツが出世するんだ!?」「どうして私が認められないのだろう?」という現実から目をそらし、ささやかな慰めを見つけ出し、折り合いをつける。そんな平穏を求めるなら、書を読んではいけない。「アイツが出世&実力をつけていく理由」「私が認められにくい理由」が、これ以上ないほど、ミもフタもなく書いてあるから。 一方でこれ、万人が読んだほうがいいのかもしれない。

    『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』がいかにスゴいか、このブログを例に説明する