本書を読んで、金沢21世紀美術館について長年抱いてきた素朴な疑問が氷解すると同時に、過去10年間にわたり、金沢という場を巡って、伝統工芸と現代アートの世界で稀に見る革新的なことが行われてきたのだというのを初めて知った。 これまでずっと疑問に思っていたのは、「なぜ金沢21世紀美術館が作られたのか?」「金沢の伝統工芸と現代アートの関係はどうなっているのか?」ということである。 考えてみれば、金沢というのは不思議な街である。人口は46万人に過ぎないが、古くから観光都市として栄えており、特に北陸新幹線が開業した2015年3月から8月までの観光客数は、兼六園で前年比142%の167万人、ひがし茶屋街で187%の130万人を記録した。1年間の金沢市全体の観光客数は800万人を超えており、その勢いは今なお止まることを知らない。 そうした中で、2004年に開館した金沢21世紀美術館も、来館者数が同年10月
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