言葉には「伝わること」と「つながること」があって、この二つは違う。――「黙らなかった人たち」を連載中の文学者・荒井裕樹さんと、ノンフィクションライター・石戸諭さんとの対談最終回は、荒井さんのこんな指摘から始まりました。石戸さんが感じる「伝える」ブームに対する違和感、「伝える」ことだけを重視することで見落とされる言葉の重要な機能とは。「つながる」という視点から言葉を考えたときに、社会の「分断」を乗り越えるヒントが見えてきました。「言葉」の持つ力を諦めきれないすべての人にこの対談を捧げます。 「伝わる」ではなく「つながる」言葉 荒井裕樹(以下、荒井) 最近考えていることですけど、言葉って「伝わること」と「つながること」の側面があって、この2つは若干違う。 石戸諭(以下、石戸) ほう。 荒井 「伝わる」は、こちらの考えを言葉にして相手に伝えて、僕の考えを相手がわかってくれること。「つながる」はち