ブックマーク / davitrice.hatenadiary.jp (94)

  • 「怒り」はよくて「嫌悪感」はダメなのか?(読書メモ:『感情と法』②) - 道徳的動物日記

    感情と法―現代アメリカ社会の政治的リベラリズム 作者:マーサ ヌスバウム 慶應義塾大学出版会 Amazon 前回の記事でも触れたように、『感情と法」の第2章と第3章では、おおむね「嫌悪感は不適切で理に適っていない感情だから法律に組み込んではいけないが、怒りは適切で理に適った(ものになり得る)感情であるから法律に組み込むべきである」という議論が展開される。 この議論はかなり興味深いものではあるが、わたしとしては、ヌスバウムは「怒り」という感情を過剰に高く評価したり理想化したりしているように思えたし、逆に「嫌悪感」という感情を低く評価し過ぎて貶めているように思えた。 わたしがまず疑わしく思ったのは、嫌悪感(disgust)について、「汚染源を拒否したいという感覚」であるとしているだけでなく「自分の死や有限性を思い起こさせるもの」とか「アニマル・リマインダー(自分が動物であることを思い起こさせる

    「怒り」はよくて「嫌悪感」はダメなのか?(読書メモ:『感情と法』②) - 道徳的動物日記
    lcwin
    lcwin 2023/11/28
    嫌悪感や怒りの前につく接頭語が気になりました。
  • 「からかいの政治学」(読書メモ:『増補 女性解放という思想』) - 道徳的動物日記

    増補 女性解放という思想 (ちくま学芸文庫) 作者:江原 由美子 筑摩書房 Amazon 『増補 女性解放という思想』は昨年の12月にネット上の「からかい」に関する記事を書いた後にAmazonのほしいものリストから買ってもらったのだが、最近は「からかい」に関する文章を改めて書いて文学フリマに出品しようかなと考えているところであり、そのために書に収録されている「からかいの政治学」やその他の文章をいまさらながら読んだ。 とりあえず、「からかい」という行為の特質や悪質さをうまく表現していると思った文章はこちら。 なぜなら、「からかい」という表現には、単なる批判や攻撃、いやがらせにとどまらない固有の質があるからである。たとえばそのことは、「からかわれた」側の女性たちの反応、怒りが、単なる攻撃に対するのとは異なる質を持っていたことからも明らかである。それは、いわば内に屈するような、憤りの捌け口を

    「からかいの政治学」(読書メモ:『増補 女性解放という思想』) - 道徳的動物日記
    lcwin
    lcwin 2023/10/17
    だからといって、片方の立場からかいは許されるとなると「造反有理」的かな。比喩や反語などのレトリックが共有できない社会だと罵倒とからかいが残るわけで、スローなコミュニケーション空間が必要なのでしょうが。
  • ポピュリズムとリベラル・デモクラシー(読書メモ:『ポピュリズム デモクラシーの友と敵』 - 道徳的動物日記

    ポピュリズム:デモクラシーの友と敵 作者:カス・ミュデ,クリストバル・ロビラ・カルトワッセル 白水社 Amazon 昨日の『福祉国家』に引き続き、オックスフォードのVery Short Introduction シリーズの邦訳書を紹介するシリーズ第二弾*1。 ポピュリズムとはそもそも捉えどころのない概念であり、定義すること自体が難しい。これは、「ポピュリズム」はリベラリズムやリバタリアニズムや共同体主義のように提唱者が明白で支持者も「自分は〜イズム(〜主義)を支持している」と自認できるような「自称」的な理論や概念ではなく、問題があるとされるものを名指しして批判するために使われる「他称」的な概念であることに由来している(そのほかの「他称的な概念」としてわたしの頭に思い浮かぶのは「新自由主義」「キャンセル・カルチャー」「弱者男性論」などなど)。 混乱の一端は、ポピュリズムというレッテルを、人な

    ポピュリズムとリベラル・デモクラシー(読書メモ:『ポピュリズム デモクラシーの友と敵』 - 道徳的動物日記
    lcwin
    lcwin 2023/09/19
    最後の文についてだけど、大衆はろくでもないが、腐敗している人文科学アカデミアやNPOやリベラルメディアよりはマシだよねあたりがインターネット論客のポピュリズム的な落とし所なのかな?と思ったり
  • 【2023年版】キャンセル・カルチャーのなにが問題か - 道徳的動物日記

    (6/14追記:トークイベントをやりましたのでよかったら視聴(※チケット購入)してください) #左からのキャンセル・カルチャー論 無事終了!!🙌 あいちトリエンナーレの件から 小山田圭吾事件、あらゆる差別問題… 様々な角度から “キャンセル・カルチャー”に ついて議論しました🤔 (たっぷり150分!!) アーカイブ6/27まで残ります ぜひご視聴ください👀https://t.co/0kDi3cqSHb pic.twitter.com/H8Mtb9ZCOA — 阿佐ヶ谷ロフトA (@AsagayaLoftA) 2023年6月13日 twitcasting.tv www.loft-prj.co.jp 日開催の「左からのキャンセル・カルチャー論」に備えた、要約・メモ的な記事。もっと早く書きたかったんだけど、開催数時間前とかなりギリギリの公開になってしまった。 1・(法律的な)手続きを無視

    【2023年版】キャンセル・カルチャーのなにが問題か - 道徳的動物日記
    lcwin
    lcwin 2023/06/13
    断罪することで、権威を集めたり美徳シグナリングしたりしたい人の欲望に付き合うと、往々にしてその方は冤罪に無責任になりがちなので、腐れ儒者のおもちゃになりがちなのがキャンセルカルチャーのわかりやすい欠点
  • 読書メモ:『ヘイト・スピーチという危害』ほか - 道徳的動物日記

    davitrice.hatenadiary.jp 前回に引き続き、来たる6月13日の「左からのキャンセル・カルチャー論」トークイベントに向けて、表現の自由というトピックに関して復習中*1。 最近に読んだり再読したりしたは以下の通り。 ヘイト・スピーチという危害 作者:ジェレミー・ウォルドロン みすず書房 Amazon 「表現の自由」の明日へ:一人ひとりのために、共存社会のために 作者:志田 陽子 大月書店 Amazon 「表現の自由」入門 作者:ナイジェル・ウォーバートン 岩波書店 Amazon ウォルドロンと志田のはどちらも初読。前者はアメリカの法哲学者が書いたものでヘイト・スピーチ規制がはっきりと打ち出されているもので、後者は日の憲法学者が判例や事例を紹介しながら法律上の「表現の自由」の意義と実際の運用について解説したもの。ウォーバートンのについては以前にもこのブログでメモを取

    読書メモ:『ヘイト・スピーチという危害』ほか - 道徳的動物日記
    lcwin
    lcwin 2023/06/07
    恣意的に動く概念になりかねないということは、政治の善意(悪意)によってボーダーラインをいくらでもアドホックに変えられかねないので、ゆるめに起きつつ、道徳や公徳心に頼るのが王道な気はするが・・
  • インセンティブから目を逸らして社会を語るな(読書メモ:『自己責任の時代:その先に構想する、支えあう福祉国家』) - 道徳的動物日記

    自己責任の時代――その先に構想する、支えあう福祉国家 作者:ヤシャ・モンク みすず書房 Amazon タイトルが想像できるように、近年に蔓延している(とされる)、いわゆる「自己責任論」を批判する。 また、著者のヤシャ・モンクの教師のひとりがマイケル・サンデルであるらしく、「謝辞」でも真っ先にサンデルの名前が挙げられている。 そして、このの内容も、ベストセラーになったサンデルの『実力も運のうち』とかなり近い。あちらは「能力主義」を批判するであったが、かなりの部分までは「自己責任論」批判と重なるものであった。主に批判する思想家がジョン・ロールズであるところも似ている(サンデルはフリードヒ・ハイエクも強めに批判していたのに対してモンクは運の平等主義者を批判しているところに違いはあるが)。政治家などの発した世俗的な言葉を引きながら「最近ではこんな風潮があります」と紹介しつつ、ロールズなどの思

    インセンティブから目を逸らして社会を語るな(読書メモ:『自己責任の時代:その先に構想する、支えあう福祉国家』) - 道徳的動物日記
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    lcwin 2023/04/11
    中国の名君は名誉と権力と財物をそれぞれ分けて与えていて一元的に与えなかったというのがインセンティブのヒントだと思うのだけど、資本主義くんはそこを一元化しちゃうと阿諛追従や曲学阿世の人材に全て与えそう
  • ミソジニー論客たちのエコーチェンバー - 道徳的動物日記

    お嬢さんと嘘と男たちのデス・ロード ジェンダー・フェミニズム批評入門 作者:北村 紗衣 文藝春秋 Amazon 大して話題になっている問題でもないが、つい気になってしまってTwitterで言及してしまったので、ブログのほうでも考えを残しておく。 togetter.com 上記のTogetterにもまとめられているように、2月25日から、山内雁琳 (@ganrim_)が北村紗衣の単著『お嬢さんと嘘と男たちのデス・ロード』に記載されている「歴史修正主義」に関する記述について批判を行うツイートをしている。 Togetterには載っていないが、発端は、高橋雄一郎弁護士による以下のツイート。 北村紗衣「お嬢さんと嘘と男たちのデス・ロード」(文藝春秋)読了。映画音楽演劇と凄まじい量の前提知識を要求する。検索しつつ読むのが大変。p91に「歴史修正主義というのは来、新史料の発掘や再解釈によってこれまでの

    ミソジニー論客たちのエコーチェンバー - 道徳的動物日記
    lcwin
    lcwin 2023/02/27
    白饅頭ニキがお疲れモード気味に出力怪しくなったのは田端氏あたりと仲良くなってからだと思うけど、人間誰しもミソジニーとミサンドリー持ってると思う派なのでミソジニーとか差別主義者のレッテルはゾーンに来ない
  • 読書メモ:『現代思想入門』 - 道徳的動物日記

    現代思想入門 (講談社現代新書) 作者:千葉雅也 講談社 Amazon 大学生から大学院一年生の頃までのわたしはいっちょまえに「哲学」や「思想」に対する興味を抱いており、哲学書そのものにチャレンジすることはほとんどなかったが、様々な入門書は読み漁っていた。現代思想については難波江和英と内田樹による『現代思想のパフォーマンス』でなされていた紹介をもっとも印象深く覚えており、次点が内田樹の『寝ながら学べる構造主義』や竹田青嗣の『現代思想の冒険』。個別の思想家についてはちくま新書の『〜入門』やNHK出版の『シリーズ 哲学のエッセンス』を読んでいたが、とくに後者についてはあれだけ何冊も読んだのに一ミリも記憶が残っていない。そして、修士論文を書くために英語圏の倫理学や政治哲学のをメインに読むようになってからは現代思想に対する興味はすっかり薄れて、以降ほとんど触れなくなってしまった。 千葉雅也による

    読書メモ:『現代思想入門』 - 道徳的動物日記
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    lcwin 2023/02/20
    現代思想ってあっしにはよくわからないのですが、孔子や老子や釈尊やキリストやムハンマドが語る正義や道徳とその弊害に対してどこまで新しさと納得をもたらすかをもうちょっと知りたくはある
  • 日本じゅうがわたしのレベルに落ちたら…(『布団の中から蜂起せよ』読書メモ:追記) - 道徳的動物日記

    布団の中から蜂起せよ: アナーカ・フェミニズムのための断章 作者:高島 鈴 人文書院 Amazon 表題にもなっている、第4章の「布団の中から蜂起せよーー新自由主義と通俗道徳」から引用。著者(高島)が博士後期課程に進学した直後に病になった、というくだり。 当に博士後期課程最初の一年間、私はほとんど何もしなかった。年度末に提出させられる業績報告書に、「闘病中のため研究を中断している」と一言書いて提出した。当に、それ以外に書けることがなかったのである。記入欄が半分以上真っ白いままのプリントを見て、さらに落ち込んだ。私はやるべきことができなかった「怠け者」なのではないかと思い、ぼろぼろ泣いて自分を責めた。なんだから仕方ないじゃないか、と頭では理解していたが、この白い紙を見た教授が何を思うのか、想像するだけで恐ろしかった。 これを書いている現在、私は博士後期過程[原文ママ]の二年目を終えよ

    日本じゅうがわたしのレベルに落ちたら…(『布団の中から蜂起せよ』読書メモ:追記) - 道徳的動物日記
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    lcwin 2023/02/03
  • 人文書じゃなくてファンブック(読書メモ:『布団の中から蜂起せよ:アナーカ・フェミニズムのための断章』) - 道徳的動物日記

    布団の中から蜂起せよ: アナーカ・フェミニズムのための断章 作者:高島 鈴 人文書院 Amazon (※ この記事を公開した翌日に、「追記」を公開している。むしろ「追記」のほうがより気合い入れて書いているので、こちらも参照してほしい。) davitrice.hatenadiary.jp まず先に書いておくと、わたしは著者(高島)に対してよい印象を持っていない。というか、明確に嫌いである。 嫌いな理由のひとつは…なんか知らんうちにTwitterでブロックされていたのもきっかけではあるけれど…オンラインで読める著者の文章が中身のないアジテーションにしか思えなかったということだ*1。 それ以上に、2020年3月臨時増刊号の『現代思想』に掲載された千田有紀の文章に対して、2021年11月号の『現代思想』で議論や論証を行うことなく「千田の文章はトランス排除的であり、文章を掲載した『現代思想』は責任を

    人文書じゃなくてファンブック(読書メモ:『布団の中から蜂起せよ:アナーカ・フェミニズムのための断章』) - 道徳的動物日記
    lcwin
    lcwin 2023/02/02
    白饅頭氏も高島氏も在野のライターだからと言う言い訳は通せるのだけど、じゃあ人文学の学者諸氏は「あなた方は学問をしているのですか?」という問いを今まさに政府から問われている時期なのでねえ。難しいね。
  • 「だれを好きになるか」を批判の対象にしていいのか?(読書メモ:『すごい哲学 世界最先端の研究が教える』 - 道徳的動物日記

    世界最先端の研究が教える すごい哲学 総合法令出版 Amazonしてもらったので読んだ。十数人以上の若手日人哲学者が「サステナブルなファッションを選ぶにはどうしたらいいか?」や「小説を読むことで人はやさしくなれるのか?」といった具体的かつ詳細なトピックについて、(主に海外の)最新論文を紹介しつつ3〜5ページで短く論じる、という。 全体的に執筆者たちは自分の書いているトピックについて距離がとれており、冷静であっさりした文体が多い。「まえがき」では「少し変わった哲学の入門書」とされているが、哲学の考え方や方法を体系的に学べる教科書といったものでもない。全体的なとりとめのなさから、「哲学・倫理学の与太話集」といった表現のほうが合っている気もする。 とくにわたし自身の生活や人生経験に関わるものとして興味のあるトピックを挙げると、「マッチングアプリで好みでない人のタイプを書くのは差別か?」

    「だれを好きになるか」を批判の対象にしていいのか?(読書メモ:『すごい哲学 世界最先端の研究が教える』 - 道徳的動物日記
    lcwin
    lcwin 2023/01/18
    儒家はマナー講師であるみたいなところや、腐れ儒者とか曲学阿世の族とかいうけどさ。西洋でそれに相当するものってソフィストでいいんだっけ?とか変なこと考えてた
  • 「からかい」を批判する - 道徳的動物日記

    御田寺圭(白饅頭)のについては、批判的な書評をしたり、「ネット論客」としての彼の議論やビジネスのスタイルを批判したりした*1。 最近になって、わたしに対する御田寺からの人格批判じみた揶揄がいくつか投稿されている(「学術コンプ」と言われたり「アホ」と言われたりするなど)。 俺は、学歴コンプとは別に「学術コンプ」というものがあると思っています。 https://t.co/Nk1rW3M3pe — 白饅頭(御田寺圭/光属性Vtuber/バーチャルツイッタラー) (@terrakei07) 2022年11月29日 そういうのを「自己紹介」してしまうその瞬間にだけ発せられる人間性の輝きが、俺は三度の飯より好きです。 https://t.co/uaGn6RKBcB — 白饅頭(御田寺圭/光属性Vtuber/バーチャルツイッタラー) (@terrakei07) 2022年12月7日 ピンカーの意見と真

    「からかい」を批判する - 道徳的動物日記
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    lcwin 2022/12/09
    風刺と揶揄と直言の使い分けみたいなところは確かにある。そしてダブスタや感情的には人間らしい振る舞いではある。権威権力のダブスタやムラ社会を風刺するのに揶揄は効果的だけど、それが集まり過ぎてもムラ社会的
  • 「弱いものいじめ」としてのキャンセル・カルチャー - 道徳的動物日記

    s-scrap.com 晶文社の連載で先日に書いた内容の続編的なものを書くために、キャンセル・カルチャーに関する洋書をいくつか取り寄せてもらって読んでいる。 そのうちの一冊が『Cancel This Book: The Progressive Case Against Cancel Culture(書をキャンセルせよ:進歩派によるキャンセル・カルチャーへの反論)』。 Cancel This Book: The Progressive Case Against Cancel Culture 作者:Kovalik, Dan Hot Books Amazon 著者のダン・コヴァリクは昔ながらの労働者支持の左翼。それはいいのだが、タイミングの悪いことにかなりの親ロシア派であって、『The Plot to Scapegoat Russia: How the CIA and the Deep Sta

    「弱いものいじめ」としてのキャンセル・カルチャー - 道徳的動物日記
  • ロールズの社会は「地獄」なのか?(読書メモ:『増補 責任という虚構』) - 道徳的動物日記

    つ 増補 責任という虚構 (ちくま学芸文庫) 作者:小坂井敏晶 筑摩書房 Amazon 以前に同じ著者の『社会心理学講義:〈閉ざされた社会〉と〈開かれた社会〉 』も読んだけれど、読んでいてとにかくイライラした。書も同じく。 著者の立場は極端な社会構築主義。『責任という虚構』にせよ『社会心理学講義』にせよ、「自由意志」は存在せず「責任」はだれかに罪や貧乏クジを押し付けて社会秩序を回復するための虚構に過ぎないと言い張ったうえで、自由意志とそれに伴う責任を前提としたうえで有るべき社会秩序を考えて「規範」を説こうとする哲学者の傲慢さや偽善性を批判する、という論旨がよく登場する。また、ベンジャミン・リベットの実験やスタンフォード監獄実験などの脳科学・心理学の研究結果をかなり大袈裟に解釈して牽強付会に用いているところも特徴。ほかの心理学者のを読んでみるとなんだかんだで謙虚であり、「現在の心理学の知

    ロールズの社会は「地獄」なのか?(読書メモ:『増補 責任という虚構』) - 道徳的動物日記
    lcwin
    lcwin 2022/10/05
    断言したくないことを断言しないと説得力がなくなるから断言してしまうことは、コミュニケーションの問題なのか、商品として書籍にする問題なのかみたいなことを想像してしまった。
  • 「新自由主義」や「自己責任論」は実在するか?(読書メモ:『<学問>の取扱説明書』) - 道徳的動物日記

    改訂第二版〈学問〉の取扱説明書 作者:仲正昌樹 作品社 Amazon 久しぶりに写経っぽい読書メモ。 「新自由主義」という言葉自体にも気をつけなくてはいけません。日語の「〜主義」、あるいは英語の<〜ism>という言い方はすごく曖昧です。「マルクス主義」とか「ヘーゲル主義」「カント主義」などの個人名が付いている時の「主義」は、その固有名詞と結びついてる特定の思想やイデオロギーに自覚的にコミットしていることを意味するわけですが、「自由主義」とか「社会主義」、あるいは「フェミニズム」になると、その幅がかなり広くなります。むしろ思想傾向とか、基的な考え方の枠組みくらいのゆるい意味で理解した方がいいかもしれません。「民主主義」だと、そもそも英語にすると、<democracy>で、「主義」「思想」ではなくて、「制度」です。「資主義 capitalism」も、思想的な意味での「主義」ではありません

    「新自由主義」や「自己責任論」は実在するか?(読書メモ:『<学問>の取扱説明書』) - 道徳的動物日記
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    lcwin 2022/10/04
    「新自由主義」や「自己責任論」って経営や労働や家族社会における社会のあり方の問題がベース・・のイメージかな。ある種シンプルにでだいたい括弧書きの「サバンナ」や「弱肉強食」に置き換えられるというのはまあ
  • 「世の中の理不尽さ」や「不都合な真実」を強調して、それでどうするの?(読書メモ:『ただしさに殺されないために』) - 道徳的動物日記

    ただしさに殺されないために~声なき者への社会論 作者:御田寺圭 大和書房 Amazon いま執筆を進めている「反ポリコレ」の参考になるかと思って『ただしさに殺されないために〜声なき者への社会論』を読んでいるけれど、案の定、まったく面白くない。 Amazonレビューにもある通り、「身もふたもない現実」や「不都合な真実」、世の中に存在する残酷さや不条理さを指摘するだけであり、その現実や不条理さについて社会はどう向き合うべきか、個人はどうやって対処するべきか、といった前向きな提言や解決策はほぼない*1。 さらに言うと、こののなかで提示されている「現実」や「真実」は実に恣意的に選択されている。たとえば、昨今では男性に比べて女性だけが解放されたり社会的に尊重されていたりすることを何度も取り上げて、そのことが(弱者である)男性に対してもたらす苦痛や苦悩や理不尽さといったものが繰り返し強調されるが、

    「世の中の理不尽さ」や「不都合な真実」を強調して、それでどうするの?(読書メモ:『ただしさに殺されないために』) - 道徳的動物日記
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    lcwin 2022/06/17
    キラキラと上澄みに生きている人にはキラキラでない世界を知ってもらい、キラキラな上澄みで生きられない人には応援歌になる要素はあって、理不尽や不都合があってもそれでも人間は泥濘の上で生きていく感じかなとは
  • 社会は「男性の幸福度の低さ」について配慮するべきか? - 道徳的動物日記

    新版 現代政治理論 作者:W. キムリッカ 日経済評論社 Amazon 最近はキムリッカの『現代政治理論』をじっくりと読んでいたのだが、最終章の「フェミニズム」の章で、近頃の日(のネット上)における議論にとっていろいろと示唆に富む箇所があったので、かなり長くなってしまうけど引用する。 フェミニズム政治理論の一種である「ケアの倫理」アプローチに対する批判的なコメント、という文脈の文章であるが、政治や倫理一般にひろく当てはまる議論であるだろう。 なぜ正義を唱える理論家は、他者への責任を公正の要求に限定することが重要だと考えるのであろうか。仮に、主観的苦痛が常に道徳的な要求を呼び起こすとするならば、倫理的ケアにかかわる事柄として、私のあらゆる利益に注意を向けるよう他者に期待するのは正当である。しかし正義を唱える理論家にしてみれば、このように言うことは、自分自身の利益の一部については全責任を負

    社会は「男性の幸福度の低さ」について配慮するべきか? - 道徳的動物日記
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    lcwin 2022/03/09
    まあ、かまどの煙が細いとか炭鉱のカナリア的な視点で見て政策を打った方が効果は大いにあるのだけど、シンプルな因果応報やマッチョイズムに薙ぎ倒してたら、それこそ人文社会科学とか存在意義なんだってなるわよね
  • 「非モテ」は「モテないからつらい」、ではない?(読書メモ:『「非モテ」からはじめる男性学』) - 道徳的動物日記

    非モテ」からはじめる男性学 (集英社新書) 作者:西井開 集英社 Amazon 第一章で提示される、書のねらいは以下の通り。 ……登場してから二〇年以上もの間、「非モテ」論は主にネットを中心として議論と考察が繰り返されてきた。その蓄積に敬意を払うと同時に、私は「非モテ」論が限界に立たされているとも感じている。それは、これまで見てきた「非モテ」論の多くが「モテない」こと、つまり恋人がいないことや女性から好意を向けられないことが問題の核心であるという前提に立っているという点にある。 (…中略…) 果たして当に「非モテ」男性はモテないから苦しいのだろうか。時に暴力にまで走ってしまうほどの苦悩の説明を「モテない」という状況にだけ求めてしまっていいのだろうか。書で問おうとするのはここである。 ところで杉田[俊介]は『非モテの品格』の中で、性愛的挫折がトラウマのように残り続ける原因として、非正

    「非モテ」は「モテないからつらい」、ではない?(読書メモ:『「非モテ」からはじめる男性学』) - 道徳的動物日記
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    lcwin 2022/02/04
    多分、話そうとすると長くなるやつだけど、過去の体験からは、公正世界信念から距離を置くのはとりあえず有効だとは思ってる。往々にしてパートナーの数を0→1が目的て1→2が目的ではないのだから。
  • リベラルが「分裂」する理由(読書メモ:『リベラル再生宣言』) - 道徳的動物日記

    リベラル再生宣言 (早川書房) 作者:マーク リラ 早川書房 Amazon マーク・リラの「アイデンティティ・リベラリズム」論についてはトランプ当選直後の記事を自分で訳した*1。『リベラル再生宣言』も以前に図書館で借りて読んだことはあるが、メモを取るために、改めて読んでみた。 ブックレットのように小さくて短いではあるが、いわゆる「ポリティカル・コレクトネス」に関する諸々の問題や異常さがうまく指摘されて表現されている。のっけから長文の引用となるが、以下の指摘は、現在の日にもがっつり当てはまるものだろう。 キャンパス内のリベラルが個人のアイデンティティだけに固執するようになると、彼らは理詰めの政治的議論をしたがらなくなる。過去一〇年くらいの間に、断定的で反論を認めないような話し方をする人が増えてきている。「Xの立場で言えば、〜」という言い回しははじめのうちは大学の中だけだったが、やがて主流

    リベラルが「分裂」する理由(読書メモ:『リベラル再生宣言』) - 道徳的動物日記
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    lcwin 2021/11/17
    マイノリティゆえに、差別やいじめに反対だからこそ、アイデンティティ・ポリティクスやポリティカル・コレクトネスに批判的になる理路もこの世界にはあるのです、多分。
  • 著書『21世紀の道徳』が出版されます - 道徳的動物日記

    Amazonの予約ページはこちら。 初の著書が出版されます。帯文は東浩紀さんからいただきました(現代哲学を「政治的正しさ」の呪縛から解放する快著、とのことです)。 このブログにいままで書いてきたことをブラッシュアップして、格的な論考にして、として読みやすくおもしろいものに仕上げた内容になっています。 【目次】 ■第1部 現代における学問的知見のあり方 第1章 リベラルだからこそ「進化論」から目を逸らしてはいけない 第2章 人文学は何の役に立つのか? 第3章 なぜ動物を傷つけることは「差別」であるのか? ■第2部 功利主義 第4章 「権利」という言葉は使わないほうがいいかもしれない 第5章 「トロッコ問題」について考えなければいけない理由 第6章 マザー・テレサの「名言」と効果的な利他主義 ■第3部 ジェンダー論 第7章 フェミニズムは「男性問題」を語れるか? 第8章 「ケア」や「共感」

    著書『21世紀の道徳』が出版されます - 道徳的動物日記
    lcwin
    lcwin 2021/11/10
    おめでとうございます!