岸田文雄政権が昨年12月、国家安全保障戦略など新たな安保3文書を閣議決定しました。日本の安全保障政策は国内政治上の最大の論点の一つであるとともに、国際社会からも大きな注目を集めています。ただ、日本国内では「反撃能力」の保持や、防衛費の相当な増額、そのための財源確保策に関心が集まっているように見えます。外務省の見地から、この3文書の意義についてお聞かせください。 高羽陽・外務省総合外交政策局安全保障政策課長(以下、高羽氏):そもそも「安全保障(security)」とは、外的な脅威に対して、様々な手段で予防・対処することで国家と国民の安全を守る概念であり、軍事によって国を守る「防衛(defense)」よりも広い概念です。この「安全保障」を実現していく上では、国の守りを固めておくことも当然重要ですが、同時に、外交の力によって、日本にとって望ましい安全保障環境を創り出し、脅威の出現を未然に防ぐ、い