【法廷から】 銀行員として定年まで堅実に勤め上げた男は、30年間自宅に引きこもっていた息子の頭や顔に何度も金属バットを振り下ろした。真面目な男がなぜこれほど残虐な犯行に及んだのか。秋田市で長男=当時(50)=を金属バットで殴り殺した父親で無職、田口脩吉被告(79)の口からは、仕事に邁進し、定年を迎えた男の寂漠たる光景が綴られた。(原圭介) ■動かなくなった息子の顔を洗面器に 事件は昨年11月12日午後6時ごろ、発生した。自宅で夕食を食べている長男の背後から父親が金属バットで襲いかかり、執拗に頭部や顔を殴って、外傷性ショックで死亡させた。凄惨きわまりない殺人だった。 秋田地裁(馬場純夫裁判長)で開かれた裁判員裁判。 被告人質問で、検察官は田口被告の残虐性を浮かび上がらせようとした。 検察官「途中で長男にバットを取り上げられ、投げられた。しかも長男は反撃もしなかった。なぜ殴るのを止