全国の刑務所で、入所者の高齢化が進んでいる。全体数が平成18年をピークに減少に転じる一方、65歳以上の割合は年々増加。現場では刑の執行に加えて、入所者の介護という新たな業務が持ち上がっている。再犯者の割合も深刻で、身寄りのない高齢者が刑務所に舞い戻る悪循環が生じている。“塀の中”は、さながら福祉施設の様相を呈している。「高齢者工場」 通路の端っこに、机といすを並べただけの簡素なスペースがある。動く人の手はしわ深く、ぷるぷると指先が震えている。車いすも目立つ。最高齢は89歳だという。 神戸刑務所(兵庫県明石市)に設けられた「高齢者工場」を許可を受けて取材した。ここでは65歳以上の受刑者が紙袋にひもをつけたり、ヘアピンをケースに詰めたりしている。いずれも力を必要とせず、簡単な作業だ。 ふだん寝起きする居室棟の中に「工場」があるのは、足腰が不自由な入所者に配慮し、移動の労を省くため。工場の定員は