マニラは夏だった。 「イントラムロスのマニラ大聖堂まで行きたいんだ。いくらですか?」 ビジネス街マカティで、私はタクシーを探していた。窓から顔を突っ込んで尋ねると、20代後半の運転手はぶっきらぼうに答えた。 「1,000ペソ」 「冗談でしょう? 200ペソが相場のはずだ」 相手はムッとした顔を浮かべる。 「オーケー、それなら300ペソでどうですか? それで嫌なら他のクルマを探します」 彼はとたんに愛想よく微笑んでドアを開けた。高級なタクシー会社を使えば300ペソ以上、しかし彼のような一般的なメータータクシーでは200ペソ少々の距離だ。私たちの利害は一致していた。 「最近は石油が高いと聞いています。大変じゃありませんか?」 「本当にその通りだよ。俺たちの場合、ガソリン代は自腹だからね」 フィリピンは産油国だが、金額ベースで輸出額の約5倍の石油を輸入している。世界的な原油高と無関係ではないのだ
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