先日、終電がなくなるまで飲んでいた僕が漫画喫茶で惰眠を貪っていると、誰かの携帯電話が突然激しくシャウトするのを耳にした。漫喫を包んだ静寂を容赦なく切り裂く悪魔的なそのサウンド。またこういうタイミングで流れるのが、幸田來未の楽曲だったりするんですよね。これが。 悪意があって携帯電話が鳴り響いているわけではないし、一度だけなら偶然の事故かもしれない。そう思った僕は再びブランケットを被ってスヤスヤと眠りに落ちた。その次の瞬間、またもや漫喫の中にエコーする幸田の破滅的なボイス!ノリノリで行われたアンコール講演。ライブ会場は、場末の漫画喫茶! 僕が怒りに震えたのは言うまでもない。携帯電話のサウンドはその後1時間、きっちり5分感覚で僕らの鼓膜をシェイクした。僕は安い睡眠を奪われたのと引き換えに、幸田の歌を目を瞑っても歌えるように成長した。もちろんそんなスキル、今すぐにでも捨て去りたいのは当然である。