4月29日の朝、東京で多くの人々がゴールデンウイークの休日を楽しむ中、渋谷にあるトレイダーズ証券のオフィスでは同社の井口喜雄市場部長が厳戒態勢にあった。 既に不安に覆われていた外国為替市場では、34年ぶりの円安水準を付けた円相場を反転させることを狙った市場介入に対する警戒が強まっていた。日本銀行が4月26日の金融政策決定会合で下した決定は予想外にハト派的で、これで為替相場の方向が変わる可能性は低いと考えられていた。円の弱気派は勢いづき、日本の連休で取引は薄くなっていた。 市場歴20年のベテランである井口氏が警戒したのは正しかった。その日の午前10時半ごろ、円は急激に下落した。