何だか不思議な体験をした。お茶の集まりに、「見せたいものがあって」と美術商の知人が、あるブツを持ってきたのである。リサイクルショップの棚でホコリをかぶっていたのだが「いや、ひょっとして薩摩切子じゃないかと思って買ってみた」などという。 残念ながら、薩摩切子のことはよく分からない。ただ、どんなものかは知っている。幕末の薩摩藩でごく短期間作られた、それは希少な、マニア垂涎の逸品である。リサイクルショップに転がっているような代物ではない。で、眉にツバをたっぷり塗って梱包が解かれるのを見守っていたのだが、それがちらりと姿を表した瞬間、背筋に何かが走った。「こりゃ大変だ、本物だ」。そう確信したのである。それまで薩摩切子などというものを間近に見たことすらない。しかも「本物などということは絶対にあり得ない」状況である。そんな逆境をもろともせず、頭のどこかが勝手に「本物だ」という判定を下した。しかも瞬時に
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