乾燥・高温・高圧に耐える能力 カラカラに乾燥しても生き延び、高温や超高圧の極限環境に耐える不思議な生物がいる。微小動物「クマムシ」だ。日本の研究チームがゲノム(全遺伝情報)を解読し、驚異的な能力の謎の解明に乗り出した。“史上最強”の生物から、地球外生命の手掛かりも得られるかもしれない。(長内洋介) 東大大学院の国枝武和助教(極限生物学)の研究室。顕微鏡をのぞくと、半透明の体に短い脚で、もぞもぞと歩くクマムシが見えた。その様子がクマに似ていることが名前の由来だ。 体長は1ミリ足らずで、脚は8本。ムシといっても昆虫ではなく、ゆっくり歩くことを意味する「緩歩動物」という独立のグループに分類される。陸や海などに約1千種が生息し、身近な場所では道端のコケの中に潜んでいることが多い。 生物に水は不可欠だが、クマムシは乾燥しても平気だ。水分を失うと体が「たる」のような形に収縮し、「乾眠」と呼ばれる仮死状