簡素だが興味ひかれる表題への関心と、それが岩波新書であることの信頼から、『メディア不信(林香里)』(参照)を読んだ。なるほど、表題が示すテーマを簡潔にそれでいてグローバルにきちんとした論旨でまとめていている好著だった。が、微妙にではあるが、当初この本を手にしたとき期待していたものはそれだったのだろうかと、読後、小さな疑問がわいた。きちんとまとまった論旨の背景にある現在性と自分がそのなかで生活している現在の感覚に微妙なずれのような感覚も覚えた。そこだけ取り上げて誇張するなら、なんというのだろうか、宇宙人に宇宙船に連れられてきて、ほらあれが君の星、地球だよ、と告げられているような感覚だろうか。 構成はわかりやすい。まず、「メディア不信」という問題提起が序章にあり、第一章ではドイツの事例(右翼グループ台頭)、第二章ではイギリスの事例(Brexit)、第三章では米国の事例(トランプ現象)という展開