このところ、モスクワ市民の口数が減っている。なぜか。1つには、みんな考えていることは同じ(「この暑さはいつまで続くのか」)だけれど、その話は口にしたくないから。どうしても話さなければならないときは、「天気の話で恐縮ですが......」と前置きするのがマナーになっている。 第2の理由は、猛暑の話はもううんざりだから。新聞やラジオも、今は最高気温の記録更新を伝えない。30度を超える日さえ珍しかったモスクワで、今は40度近い気温が当たり前になっている。 第3は、そもそもしゃべるのがつらいから。森林火災と泥炭火災の多発で、市の上空はスモッグに閉ざされ、誰もが喉を痛めている。 当面、状況が改善される見込みはない。大半のモスクワのアパートにはエアコンがない。7月半ばで扇風機も売り切れ、店頭から姿を消した。煙の微粒子はマスクもエアコンのフィルターも通過するそうだが、たとえ気休めでもマスクは手放せない。