「ピザハットWOW（ワウ）」。看板商品のチーズピザは19元（1元＝約22円）。パスタは15元から、チキンステーキも19元からと、格安メニューがずらりと並ぶ。数々の外食チェーンを運営する百勝中国控股（ヤム・チャイナ・ホールディングス）が始めた新業態だ。 平日昼に店舗を訪れると、郊外店にもかかわらずほぼ満席で、客の多くは格安メニューを次々に注文していた。同じフロアのライバル店の多くが閑散としているのとは対照的だった。格安の新業態を始めた背景にあるのは、消費者の節約志向の高まりだ。 1～5月の社会消費品小売総額（小売売上高）は前年同期比で4.1％増と、2023年通年の7.2％増から落ち込んだ。新型コロナウイルス禍と不動産バブル崩壊を受けて、消費者の財布のひもは固い。政府のインフラ投資や輸出増加により1〜3月の実質GDP（国内総生産）は前年同期比で5.3％増を確保したが、消費の不調をいつまでもカバ

新型コロナウイルス禍の影響で一時は激減したインバウンド（訪日外国人）の旅行者数は、急激に回復。東京や大阪などの都市部に限らず、地方の観光名所にも多くの外国人が訪れている。 円安という追い風にも乗り、インバウンド消費も増えているが、かつての「爆買い」のような消費は見受けられない。新たなインバウンドの潮流はどのようなもので、どんな戦略が必要になるのか。 日経ビジネスLIVEは9月5日、「インバウンド3.0　アフターコロナの観光戦略」と題したウェビナーを開催した。日本政府観光局（JNTO）に14年勤め、シンガポールや香港で海外駐在の経験を持つインバウンド戦略研究所の清水泰正代表を講師に招き、新たな時代のインバウンドが抱える課題や、対応する戦略などについて解説をいただいた。 （注）記事内の情報はウェビナーを開催した9月5日時点のものです。 （構成：森脇早絵、アーカイブ動画は記事の2ページ目にありま

あらゆる部品が並ぶ展示室 BYD本社には顧客が訪れた際に案内するショールームがある。足を踏み入れると、ありとあらゆる自動車部品がズラリと並ぶ光景が広がる。 EVの基幹部品であるリチウムイオン電池、モーターや減速機などを一体化した駆動装置「電動アクスル」はもちろんのこと、サスペンションやヘッドランプ、ブレーキ、空調、電力制御に使うパワー半導体、先進運転支援システム（ADAS）まで展示されている。BYD担当者は、「タイヤとガラス以外はすべて手掛けている」と明かした。 わずか数年で米テスラと並ぶEV市場の「2強」の地位に上り詰めたBYD。躍進を遂げた1つ目の理由は、自ら主要部品を開発・製造する「垂直統合」のビジネスモデルの採用にある。トヨタ自動車や独フォルクスワーゲン（VW）のような既存の自動車メーカーが「ケイレツ」と呼ばれるサプライヤーを多数抱えて「水平分業」を志向していることとは対照的だろう

香港特別行政区政府は、重点産業分野の代表的企業や有望企業を世界各地から誘致し、事業の立ち上げや拡大を促す新たな制度を導入した。その中核となるOffice for Attracting Strategic Enterprises：OASESの取り組みと、香港進出のメリットを紹介する。 1997年の中国返還以降、「一国二制度」のもとで国際金融センターとして急成長を遂げた香港。中国の経済成長や市場の国際化に伴い、その地位は確固たるものとなった。コロナ禍という予期せぬ試練はあったものの、他に類を見ない国際金融・貿易の拠点としての香港の優位性は依然健在だ。23年2月6日には中国との往来制限も全面撤廃され、香港経済は再び活気を取り戻しつつある。 そうした中、グローバルにおける香港の競争力をより一層高めるために、香港特別行政区政府は新たな制度を導入。世界各地の有望企業を香港に誘致し、事業の立ち上げや拡大

「ダーウィン」。進化論で有名な英国の研究者、ダーウィンの名を冠し、同社の中核を担う「5G」など無線通信関連を紹介するショールームだ。 実際に足を踏み入れると、その名の通り、絶え間なく進化を続けるファーウェイの無線通信技術がズラリと並んでいる。今後の通信技術のロードマップの紹介から始まり、複数の通信技術に対応して小型化や低消費電力化を図った基地局向けアンテナ技術や、鉱山や病院などの地域限定で使う「ローカル5G」などの紹介が続く。 数ある展示の中で、目玉の一つとして展示されていたのが「5.5G」だ。ファーウェイが現行の「5G」と次世代の「6G」をつなぐ技術として強力に推進する、高速無線技術の独自名称を指す。5Gの進化版として位置づけるものの、性能は飛躍的に向上させる計画。同社によると、伝送速度は10ギガ（ギガは10億）ビット毎秒と、現行の5Gから約10倍となる。

中国の新車市場で激しい価格競争が巻き起こっている。年明け以降、電気自動車（EV）、ガソリン車ともに値下げする動きが相次ぐ。かつてないほどの価格競争が生じた背景には、新車市場が低迷する中、電池材料価格の下落や排ガス規制の新基準の実施などを踏まえて、メーカー各社が余剰在庫を減らすべく販売促進に取り組んでいることがある。 3月には、一汽トヨタ（トヨタと中国の第一汽車集団の合弁会社）がBYD TOYOTA EV TECHNOLOGYカンパニー（トヨタと中国EV大手の比亜迪＜BYD＞の合弁会社）と共同開発したEV「bZ3」を発売し、22年末の予約販売価格に比べ約2万～3万元値下げした。 東風日産（日産自動車と東風汽車集団の合弁会社）はEV「アリア」、東風ホンダ（ホンダと東風の合弁会社）はEV「e:NS1」について、それぞれ6万元、2万元の値下げに踏み切った。 引き金を引いたのは、EV大手の米テスラだ

中国で電気自動車（EV）の値上げが相次いでいる。最大手の比亜迪（BYD）は2023年1月1日、1台当たり2000～6000元（約3万9000～約11万6000円）引き上げた。広州汽車集団傘下の広汽新能源汽車（AION）も3月から3000～6000元値上げする。 22年末から独BMWなど外資系自動車メーカーもEVの値上げに踏み切っており、業界全体に広がっている。背景には、EVの原材料である資源・素材価格の上昇などがある。さらに中国政府はEVを中心とする新エネルギー車（NEV）の普及を目的としてきた補助金政策を22年末に終了した。 こうした動きを受けて、NEV市場の成長が鈍化すると懸念する声も聞こえてくる。だが、そんな見方と全く相反する強気の市場見通しを中国自動車工業協会（CAAM）は示す。同協会は23年の中国NEV販売について、前年比35％増の900万台超とする予測を公表した。 一体どちらの

とはいえ、ゼロコロナ政策の緩和は、大規模な封鎖が解除された広東省広州市などを除けば段階的に進んだと言えそうだ。上海など主要都市では12月5日から緩和策が導入されたが、初日には地下鉄など公共交通機関や、公園など屋外の公共の場に入る際に陰性証明書の確認を取りやめただけだった。上海や北京では翌日の6日にも追加で緩和されたが、証明書の提示が新たに不要になったのはオフィスビルやショッピングセンター、スーパーなどに限られていた。 上海で住民が歓喜したのは、飲食店での陰性証明書の提示が不要になった12月9日からだろう。医療機関や学校、老人ホームなどに入るには、依然として陰性証明書の提示が必要だが、多くの上海市民にとってはPCR検査を受けなくても日常生活を送れるようになった。冒頭の中国人オーナーが、「ようやく解放」と話したのはこのためだ。 航空券の検索は3年ぶりの高水準 ゼロコロナ緩和に湧くのは飲食店だけ

一国二制度とは、中国政府が香港や台湾を統治する仕組みとして考案した制度だ。実際、香港では1997年の返還より、一国二制度による広範囲な自治が認められてきた。しかし近年では中国政府による締め付けが強まっており「一国二制度は失敗」との声も聞かれる。今回は一国二制度をめぐる過去記事を振り返っていく。

2022年も残すところ2カ月を切った。忘年会シーズンが近づいているが、ここにきて新型コロナウイルスの感染者数がまた増えており、第8波の入り口ともいわれている。気を抜かずに、感染予防対策を今一度しっかり意識し、安全な忘年会を楽しんでもらいたいものだ。 ド派手な看板にカラフルなちょうちん　新宿にカオスな横丁が誕生 最近、有楽町や新橋、渋谷、新宿などの繁華街で派手なちょうちんがずらりと並び、こうこうとライトアップされている飲食店を見かけることはないだろうか。これが今、ちまたで人気の「横丁」だ。海鮮や寿司、焼き鳥や肉料理、鉄板焼きにいたるまで、さまざまなカテゴリーの店が集まっており、横丁の客は飲食している席からほかの店への注文が頼めるという特徴がある。 横丁によっては韓国料理、タイ料理、中華料理、イタリアンまでそろっているので、苦手なジャンルが多い人でも、「ここに来ればなんとかなる」という気持ちに

新型コロナウイルスの感染再拡大で、成長に急ブレーキがかかった中国経済。各地で起こる「異変」を調べると、習近平政権が犯した3つの失策が見えてきた。中国政府による大きな政策ミスの1つは、コロナ感染拡大の封じ込めを狙う「ゼロコロナ政策」への固執だ。中国国民は不満を抱きながら、終わりの見えない行動制限と向き合っている。

2021年下期から低迷が続く不動産市場のテコ入れに中国政府が躍起になっている。2020年以降、バブル抑制を目的に不動産規制を強化してきたが、市場の急激な冷え込みを受けて、今年に入り緩和方向へと舵（かじ）を切った。 金融面では利下げが進んでいる。中国人民銀行（中央銀行）は、事実上の政策金利と位置付けられている最優遇貸出金利（LPR、ローンプライムレート）を毎月公表している。住宅ローン金利などの目安となる期間5年以上のLPRは、1月と5月に低下し現在4.45％となっている。また、5月15日には、1軒目の住宅購入に関しては、住宅ローン金利の下限が0.2％引き下げられている。つまり、現在の住宅ローン金利の下限は4.25％と、年初より0.4％低い水準となっている。 金利は全国的に適用される一方で、北京、上海、広州、深圳の「一線級都市」、各省の省都などの「二線級都市」、その他の中小地方都市である「三、

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2021年のインバウンド（訪日外国人）数は25万人まで激減した。2年半の月日を経て、今年6月から外国人観光客の受け入れが再開されたが、日本の観光産業は果たして復活できるのか？ 長かった、長過ぎたと言わざるを得ない約2年半もの自粛生活。こうして過去形で言えるのは、周りの動きがこれまでとは明らかに変わってきたからだ。3年ぶりに人の移動制限がなかった今年のゴールデンウイーク。その後、新型コロナウイルスの感染者が爆発的に増えなかったことが大きな転機となった。 「最近、外国人旅行客の姿を見るようになったわね。しかもビジネスではなくて、プライベートらしき人が多い。妙に懐かしくて新鮮な感じだわ」 「『インバウンド』だね。すっかり定着した言葉だったけど、耳にするのも口にするのも久しぶりだ」 「国内の国際空港でも、順次受け入れ態勢が広がるみたいよ、何だかワクワクするわ。日