ブックマーク / kaoriha.org (25)

  • 中里一日記: 人は読まない、人は学ばない、人は変わらない

    人は読まない、人は学ばない、人は変わらない このところ辛いことが続いて、さすがの私もぐったりしている。外聞がよくてわかりやすい件だけ言うと、交通事故に遭って全治6か月、左腕がまったく上がらないし、普通のベッドに横たわると自分ひとりでは起き上がれない。 そんなわけで、『兵士シュヴェイクの冒険』を日々読み返しては心を慰めている。私もシュヴェイクのような謙虚な人間になりたい。ああいう謙虚な人間なら、今の私のこの状況も、赤子のような澄んだ目でやりすごせるだろう。自分がどちらかといえばヘロストラトスの側の人間である――「どちらかといえば」どころか「どこからどう見ても」と言うべきか――ことはよくわかっているのだが。 このぐったりした気分にふさわしく、今日は恐ろしく無駄なことを書こうと思う。私はどうやってもシュヴェイクにはなれないのだから。 昔、男の子がいた。大きくなったら「偉大な」作家になりたいという

  • 中里一日記: わかればいいのか

    わかればいいのか 『劇場版そらのおとしものf』を見たら、『劇場版リリカルなのは 1st』と共通する問題を感じたので、ここに書いておく。 ・どちらもモノローグで説明しすぎ ・どちらも尺の割にセリフを詰め込みすぎ 『そらのおとしもの』の日和のモノローグはほとんど全部ないほうがいい。『なのは』のフェイトも同じく。説明しないと何を考えているのかわからない? では、わかることにどんなメリットがあるのか。その場かぎりの作り話にすぎないものをわかることが、そんなに重要なのか。わかることと楽しいことのあいだに、どんな関係があるのか。前者が後者の必要条件だと思い込むのは、いったいどんな因果あってのことなのか。 モノローグ乱発の割をってか、尺が足りない感じが全編にありありと漂う。『なのは』の編集はギリギリまで詰めて削ったのだろうと思わせたし(とはいえこれは編集のスタイルかもしれない)、『そらのおとしもの』で

  • 中里一日記: 解題その2

    解題その2 『君が僕を』というタイトルの元ネタは、マルセル・デュシャンの大駄作、Tu m'です。 まがりなりにも美術作品のはずなのに、作品を見る必要はない、話を聞くだけで事足りる、むしろ話のほうが体で作品自体はオマケ――そんな悪しき現代美術の嚆矢として悪名高いデュシャンですが、『話のほうが体』という手口が相変わらず幅を利かせている以上、名前を挙げるだけの値打ちはあると言わなければなりません。 『話のほうが体』という手口は、出オチ同然の一発芸に見えるのに、それがいまだに廃れないのは、なぜなのか。 「見ればわかる絵」というのが嘘だからです。正確に言えば、ごく狭い範囲にしか通じないものだからです。 神奈川県の溝ノ口という土地を知らなければ、『天体戦士サンレッド』は十分にはわかりません。ほとんどの絵画も同じようなものです。たとえば私は、モローの描くサロメに首をかしげたことがあります。どうして

  • 中里一日記: 記憶

    記憶 全人類に読ませたいので、とりあえずここに書く。R・デーケン『フロイト先生のウソ』(文春文庫)197-198ページより。 最初の調査は、一九八六年のスペースシャトル・チャレンジャー爆発事故の翌日におこなわれた。約一〇〇名の被験者に、事故のニュースをどんな状況で聞いたかを書面で答えてもらった。回答は、七項目の質問(「そのとき、どこにいましたか」、「誰といましたか」、「そのニュースを何で知りましたか」など)に答える形でおこなわれた。数年後、コンタクトが取れた被験者(約半数)に再度同じ質問リストに答えてもらった。最初の調査のときと答えがい違う項目があった人には、暗示や誘導尋問や助言によって正しい記憶を呼び覚まそうとした。 その結果は、映画「トータル・リコール」(アーノルド・シュワルツェネッガー扮する主人公が、架空の冒険の記憶を植え付けられる)を彷彿とさせるものだった。まず、回答者の四分の三

  • 中里一日記: 私がドリャーおじさんだ

    私がドリャーおじさんだ のたうちまわるほど感動した! 『アートの仕事』(平凡社)120~121ページより。 都築 最後に、僕が毎回、レクチャーの最後に見せてるヴィデオがあるので、これを見てください。関西の長寿番組『探偵ナイトスクープ』という番組で昔、放映されたものです。北陸に東尋坊という景勝地があって、すごい崖で、自殺の名所でもあるんだけど、そこに名物のおじさんがいて崖から飛び降りるんですよ。見たことある人もいると思いますが、ここでまた感慨を新たにしていただきたい。 (ヴィデオを見る。ドリャーおじさんが、「ドリャー!」と叫びながら、何度も崖から飛び降りる姿を映す。最後に、「なぜ、飛び込むのか?」と聞かれ、「前は健康のため、とか言ってましたけど、やっぱり、キザな言い方ですけど、男のロマンですね」と語る) 都築 僕はこれ、もう100回は見てるんですけど、見るたびに、頭が下がるんですよ。すごいと

  • 『どろぼうの名人』発売中

     濃度100%のフルスイング百合小説『どろぼうの名人』発売中です。 このページのリンク元

  • 中里一日記: 新作のお知らせ

    新作のお知らせ 私の新作『どろぼうの名人』(名義:中里十)が、第2回小学館ライトノベル大賞ガガガ部門の最終選考に残りました。この賞は、第1回の最終選考作品はすべて刊行されているので、『どろぼうの名人』は商業誌でお届けできると思います。 主人公は佐藤初雪、ヒロインは川井愛のフルスイング百合です。乞うご期待。

  • 中里一日記: フランク・ヴァートシック・ジュニア『脳外科医になって見えてきたこと』(草思社)

    フランク・ヴァートシック・ジュニア『脳外科医になって見えてきたこと』(草思社) フランク・ヴァートシック・ジュニア『脳外科医になって見えてきたこと』(草思社)を読んだ。 医師、それも外科医は体育会系の世界だと聞く。勤務条件が肉体的にハードなせいだろうと漠然と思っていたが、実は体育会というより海兵隊だった。 著者はハートマン軍曹のように率直だ。「また内科のローテーションでは、医師というものに授けられた恐るべき権威を目のあたりにすることになった。他人を――しかも合法的に――侵せるという力。人間の直腸に手袋をはめた指を差し入れ、脊椎に針を押しこみ、結腸にホースを通すことのできる資格だ」(47~48ページ)「わたしはこれからの年月のあいだに、べた物を吐かせたり鼻血を出させたりするどころか、もっとひどいことを――もっとずっとひどいことを――他人の体にするだろう。それでもこのとき、わたしはひとつの里

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    matakimika 2008/01/08
    よんでみたい
  • 中里一日記: BLバブル

    BLバブル 「BLバブル」という言葉がある。その意味をはっきりと述べた例は、寡聞にして知らない。なのに、「BLバブル」なるものが存在したと信じる人々がいる。過去または近未来に、その「BLバブル」が崩壊した・すると信じる人々がいる。 意味のはっきりしない言葉では、それが存在したかどうかを論じることもできない。だから仮に「BLバブル」を以下の2つのテーゼで定義してみる。 テーゼ1:BLが売れない時期→売れる時期→売れない時期、という歴史的な変遷があった テーゼ2:売れる時期は、市場のファンダメンタルとは乖離した、一過性の異常な現象だった 人気作家番付のデータをもとに、BLの売れ行きの変遷をみてみよう。BL作家のうち現在のトップ4、斑鳩サハラ・ごとうしのぶ・あさぎり夕・秋月こおの、文庫の年間ベスト順位を2000年から2006年まで列挙してみる。また、年間ベスト順位を記録した時点のRも示す。 斑鳩

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    matakimika 2007/11/15
    BLバブル分析
  • 中里一日記: リア充言語に抗して

    リア充言語に抗して 笙野頼子『極楽・大祭・皇帝』(講談社文芸文庫)所収の「皇帝」を読んだ。一言でいえば、史上最強のひきこもり小説である。 タイトルの「皇帝」とは、ひきこもりの主人公の自称である。といってもひきこもりなので、称する相手は自分自身、というよりは「声」だ。皇帝は、「声」に抵抗して、一日一日をやっとの思いで生き延びている。 声 おまえはおまえだ 皇帝 私は私ではない ひきこもりの密室においても人は社会から自由ではない。たとえば、「おまえはおまえだ」と自同律を押し付けてくる声は、ひきこもっている人の魂に染み付いていて逃れられない。社会の実態のなかでは自同律など建前だが、ひきこもりの密室のなかでは公理となって暴力的に皇帝に迫る。 皇帝は、声と戦っていないときには、人類が全員ひきこもりになった理想世界を夢想する。その理想世界では人は、生涯に一度も他者と出くわさない。身体的接触はおろか会

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    matakimika 2007/08/16
    笙野頼子『極楽・大祭・皇帝』
  • 中里一日記: 笙野頼子『絶叫師タコグルメと百人の「普通」の男』(河出書房新社)

    matakimika
    matakimika 2007/07/01
    書評
  • 中里一日記: ムサシ・ミヤモト

    ムサシ・ミヤモト 歴史上の人物名などを、小説の登場人物名として使う、という手法がある。剣豪の名前を「ムサシ・ミヤモト」などとしているファンタジー小説の数は、おそらく10や20ではきかないだろう。 この手法のなにが面白いのか、私にはわからない。 作者はラクだろう。ムサシ・ミヤモトと書けば読者は「剣豪だね」とわかってくれる。そして、その程度の理解で事足りるような作品は多い。 だが、面白くない。 この手法では、誤読が起こらない。読者が宮武蔵を誤解していることはあるだろう。そのせいでムサシ・ミヤモトを誤解して、誤読へと導かれることもあるだろう。しかし作品自体が誤読のきっかけになることはない。 私は誤読したい。作者が書かなかったことを読みたい。そもそも、作者の書いたことだけを読むのなら、小説などおよそ読むに耐えない。作者という赤の他人が空想した個人的なことを、自分とは無関係なこととして読んでも、面

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    matakimika 2007/03/11
    誤読について
  • 中里一日記: すぎ恵美子を追悼する

    すぎ恵美子を追悼する 漫画家のすぎ恵美子さん死去 死因は胃がんとのこと。 すぎ恵美子は、一昨年末から昨年春にかけて、かなり長いこと入院していた。独身らしいので、告知はされていただろう。 最後の連載となった『水戸黄門外伝 DokiDokiアキの忍法帳』は、学年誌の「小学5年生」に掲載だったので、目を通していない。 私が最後に読んだ作品は、「Cheese!」2006年7月号増刊に掲載された読み切りの、『カノジョノアソコ』だ。私はこれを読むためにCheese!増刊を買った。軽やかで切れ味のいい、すぎ恵美子らしさにあふれた佳作だった。 思い返してみると、晩年の連載は冴えない。掲載誌の対象年齢が高すぎて相性が悪かったらしい。たとえば『砂糖菓子少年』だ。 『砂糖菓子少年』は、20代なかばの主人公(女性)が、小学6年生の無邪気な少年(外見は20歳くらい)に魅力を感じる、という話だ。長年のすぎ恵美子ファン

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    matakimika 2007/02/16
    すぎ恵美子氏作品評
  • 中里一日記: タダほど高いものはない

    タダほど高いものはない タダほど高いものはない――電子メールのことだ。 予言しよう。いまから100年後、2107年2月11日にも、人類はまだ電子メールに依存している。 人々が受け取るスパムの量は10^4倍に増加している。つまり全メール流量の99.999...%はスパムだ。 その文面も、人工知能によるスパムフィルターを突破するべく、これまた人工知能を駆使して書かれたものになる。よくできたスパムを、文面からだけでスパムと見分けることは、まったく不可能になる。 あらゆる障壁を突破して人々が読んでしまうスパムの量は、10~40倍に増加している。メールアドレスを名刺に書くことは、スパムの検討に毎日2時間を費やすことに等しくなる。なのに電子メールの利用率は現在と変わらない。 小手先のスパム対策でメールをはじくISP(hotmail、yahoo)に対策するため、メールサーバの設定は極度に難しく流動的にな

    matakimika
    matakimika 2007/02/13
    spamとの戦争
  • 中里一日記: エロまんが的なるもの

    matakimika
    matakimika 2006/12/05
    強姦されてハッピーエンド
  • 中里一日記: 柳龍拳 VS 岩倉豪

    柳龍拳 VS 岩倉豪 2006年11月26日午後7時、北海道は札幌にある体育館「きたえーる」の柔道場にて、ひとつの他流試合が行われた。主なルールは以下のとおり。 ・目突き、肘、股間への攻撃は禁止 ・足以外のところが地面についているときは顔面への打撃は禁止 さらに、これがルールかどうかはわからないが、 ・グローブなし、マウスピースなし 「手の骨、鼻の骨、前歯、どれが先に折れるか」という、無闇に危険なセッティングである。感染症の問題もある。おそらくもう二度と見られないセッティングだろう。 そして対戦者の片方も珍しい。 珍しくないほうは、総合格闘家の岩倉豪。アマチュアだそうだが、鍛え上げられた巨体がまさに格闘家だ。 珍しいほうは、合気道を教える柳道場の師範、柳龍拳。御歳65歳、細身の老人だ。合気道を教えているといっても、平凡な合気道家ではない。「気功」を看板に掲げるオカルト風味の怪老人である。オ

    matakimika
    matakimika 2006/11/28
    "2つの世界がある。暴力前の世界と、暴力後の世界だ。"
  • 1492

    版型 上下巻組 A5版 上巻 122ページ 口絵2ページ 下巻 120ページ 価格 通販 4200円 ダウンロード販売 1050円 (終了しました) イラストレーション 更紗(横濱レモネード) 文 中里一 発行 西在家香織派 登場人物 陸子 千葉国王。21歳。女子中学生が好き。 ひかる 陸子の護衛。23歳。陸子が好き。 緋沙子 陸子の愛人。15歳。陸子が好き。 美園 陸子のメイド。27歳。陸子が好き。 あらすじ ひかるは陸子への愛を胸に、日々献身的に仕えている。けれどひかるには、秘密の癖がある。それは、陸子の服の匂いをかぐこと。 その癖を陸子人に見られてしまったひかるは、陸子に誘われるままに、身体の関係へと入り込んでゆく。 そんなときに緋沙子が現れる。緋沙子は小学生のときから陸子と通じており、愛人になることを約束していた。緋沙子を快く思わない美園は、ひかるを操って緋沙子を追い払おうとす

    matakimika
    matakimika 2006/11/23
    1492紹介ページ
  • 中里一日記: 1492:77

    matakimika
    matakimika 2006/11/09
    コミティア78にてお求め 3000円
  • 中里一日記: 1492:74

    matakimika
    matakimika 2006/10/25
    「統計をみると、女性は結婚してもしなくても、平均余命は変わらない。しかし結婚しない男性は露骨に短くなる。(略)この客観的諸条件のもとでは、女性がなにを言っても、「上から物を言う」ことになる。」
  • 中里一日記: ノベルス・文庫作家人気番付

    ノベルス・文庫作家人気番付 の実売部数は通常わからない。しかし、同一レーベル・同一発売日のノベルスや文庫なら、どれがどれより売れているか、わかる場合がある。情報源は、トーハンまたは日販調べの週間ベストセラーリストだ(書店調べは論外なので要注意)。たとえば、このリストをみれば、『灼眼のシャナ(13)』『とらドラ!(3)』『アスラクライン(5)』の順に売れていることがわかる。さらに、ランク外のタイトルも調べることができる。上の例では、『撲殺天使ドクロちゃん(8)』が同一発売日でランク外にある。 この情報を蓄積・分析すれば、「誰が誰より売れているか」を、単一の数字として表せるだろう。 以上の仮説にもとづいて、私は数年前、BL作家人気番付というものを作った。このときはBL関係レーベルの情報だけを入力した。また、実験として作ったため、持続的に運用しつづけることができないシステムだった。 今回は

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    matakimika 2006/09/27
    「今回は本番である。私は、1万件の書誌情報と、800件のベストセラーリストを入力した。」