遠い異国の首都からさらに飛行機を乗り継いでたどり着く街で宿をとる。 「とれるチケットならどこでもいい」と考えた旅行だったけれど、思ったよりもワイルドな街に降り立つことになった。英語もうまく通じないし、そもそも空気だって日本と違う。水が国によって異なるように空気だって国によって異なるものとなる。アジアの島国に降り立つ時に南国の匂いが鼻孔を驚かせるように、異国の空気は肺を驚かせる。「なんかきたよ」と肺があわてて声をあげる。深呼吸して、落ち着かせる。「大丈夫、この空気は吸っていいんだよ」。何度か深呼吸すると肺にその空気が馴染み、身体が少し落ち着いてくる。それでも、脳はなかなか現地の国になじまない。 一人が好きだ、という人でも異国の地に一人でいると、その寂しさには耐えられないことが多い。これは病気にも近い。風邪をひくと思考回路が落ちるように、孤独は人を不安定にさせる。部屋のどこかでなくした指輪を探