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ブックマーク / honz.jp (13)

  • 『保守とは横丁の蕎麦屋を守ることである』書けなくなった批評家を救ったもの - HONZ

    ひさしぶりに会った知人の変貌ぶりにショックを受けることがある。書を書店で見かけた時の驚きもそれに近い。表紙の男性と著者名が一瞬つながらず、人だと気づいて衝撃を受けた。別人のように痩せている。それも何か大病を患ったことをうかがわせるような痩せ方ではないか。 90年代からゼロ年代を通じた福田和也の活躍ぶりは、まさに「飛ぶ鳥を落とす勢い」という言葉がぴったりだった。「月300枚書く」と人が言っていたように、文芸評論や時事評論、エッセイ、コラムを書きまくり、ワイドショーのレギュラーコメンテーターを務め、文芸誌『en-taxi』を編集し、母校である慶應大学の教壇にも立った。当時、夜の街でもしばしば著者を見かけた。バリバリ仕事をしつつ遊びもこなす姿が眩しかった。 著者を知ったのは学生時代のことだ。江藤淳に才能を見出されたというふれこみで、雑誌『諸君!』でいきなり連載が始まった。破格の扱いだった。

    『保守とは横丁の蕎麦屋を守ることである』書けなくなった批評家を救ったもの - HONZ
    mayumiura
    mayumiura 2024/09/22
    “本も読めず、酒も飲めないほど体力が衰えてしまった時、それでも生きることへ自分を向かわせるものがあるとすれば、それは何だろうか。”
  • 音楽で生きる、東京で生きる。『調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝』 - HONZ

    近田春夫を知っている人は、すでに読んだにちがいない。知らない人は、いますぐ読んでほしい。音楽で生きる、東京で生きる、その2つを味わえる。日のロック、パンク、ヒップホップ、さらにはJ-POPやCM音楽まで網羅した音楽史であり、東京でクールに生きてきた大人の足跡を体感できるだろう。 タイトル「調子悪くてあたりまえ」は、ビブラストーンの名曲からとられている。ご存知ない方は、動画サイトで確かめよう。そのあとで、曲名の意味、そして、ビブラストーンというバンドについて、ぜひ書を開いてもらいたい。 著者は、1951年2月25日、世田谷に生まれる。NHKに勤めたあとTBSに移る父親と、音楽教師の母親を持つ。IQ、知能指数169をたたきだした天才児だったので、慶應幼稚舎に入る。 「僕は春夫君とやっていく自信がないんです・・・」と担任教師が嘆くほどの多動症で、人を笑わせるのが好きだった。にぎやかな場所にい

    音楽で生きる、東京で生きる。『調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝』 - HONZ
    mayumiura
    mayumiura 2022/05/05
    御意。“「日本語はさ、英語とは構造が違って述語が後に来るから、脚韻を揃えることに大した意味はない。そもそも日本の詩歌の伝統は頭韻だしさ」”
  • 『「ちがい」のある子とその親の物語』世界23か国で読まれる当事者とその家族の声 - HONZ

    書は欧米で活躍するノンフィクション作家・アンドリュー・ソロモンが10年間に300組以上の親子を取材した壮大な記録だ。2012年に出版されると数々の賞を受賞し、世界23カ国で刊行。日でも3巻目がいよいよ発売となり、完結した。 「ちがい」のある子とは、Ⅰでは「聴覚障害」「低身長症」「ダウン症」、Ⅱは「自閉症」「統合失調症」「重度障がい」「神童」、そしてⅢは「レイプで生まれた子」「犯罪者になった子」「トランスジェンダー」を取り上げている。加えて最終章ではゲイの著者が父親になるまでの経緯を詳細に語る。 ⅠとⅡでは、病気に分類されがちな障がい(神童もまた先天的に特殊な存在としている)を取り上げているが、Ⅲは社会的に忌避されたり排斥されたりする存在に注目し、子どもたちに対する歴史的な背景を踏まえ当事者と家族の葛藤を丁寧に掘り下げていく。 レイプによって妊娠した女性が「産む」ことを選択した理由は様々

    『「ちがい」のある子とその親の物語』世界23か国で読まれる当事者とその家族の声 - HONZ
    mayumiura
    mayumiura 2022/04/30
    “Ⅰでは「聴覚障害」「低身長症」「ダウン症」、Ⅱは「自閉症」「統合失調症」「重度障がい」「神童」、そしてⅢは「レイプで生まれた子」「犯罪者になった子」「トランスジェンダー」”
  • 色覚サイエンスの最先端を知ると、「日本」まで見えてくる――『「色のふしぎ」と不思議な社会』  - HONZ

    「この赤はリンゴの赤だね」と言うとき、どんな赤色を見ているかは、実は人それぞれだ。そもそもヒトがどんな色を視ているかを科学的に考えたことがあまりない。ところがその色覚について、「正常」と「異常」に線引きする時代もあった――それなら色覚とはいったいどういうものなんだ? 猛然と、最先端のサイエンスの知見に挑む著者による、新たな色覚原論の決定版! 著者の川端裕人さんと言えば、最近では『理論疫学者・西浦博の挑戦 新型コロナからいのちを守れ!』や『科学の最前線を切りひらく!』など、サイエンスの現場の話を平易に伝えてくれるノンフィクション作家だ。と同時に小説も数多く手がけているほどで、読みやすい文章でこちらの守備範囲を広げてくれる。 1964年生まれ、学校健診の色覚検査で「色覚異常」とされた、当事者である川端さんが5年以上地道に調べて書き上げたのが、色覚をめぐる社会情勢と歴史、そして、2021年の科学

    色覚サイエンスの最先端を知ると、「日本」まで見えてくる――『「色のふしぎ」と不思議な社会』  - HONZ
    mayumiura
    mayumiura 2021/01/15
  • 『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記 こうして私は職業的な「死」を迎えた』げに恐ろしき、出版界の裏事情を綴る真摯な暴露本 - HONZ

    『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記 こうして私は職業的な「死」を迎えた』げに恐ろしき、出版界の裏事情を綴る真摯な暴露 このをここで紹介していいものか迷ったが、著者の真摯な姿勢に心を動かされたので、おもねらずにレビューしてみたい。 書は、ベストセラー『7つの習慣 最優先事項』の訳で一躍売れっ子翻訳家になった著者が、出版社との様々なトラブルを経て業界に背を向けるまでの顛末を綴った、げに恐ろしきドキュメントだ。 驚くことに、名前こそ伏せてあるが、理不尽な目に遭わされた出版社のプロフィールが文や帯でずらずら書かれている(業界歴の長い人ならすぐにわかるのではないか)。著者の名前をネットで調べれば翻訳を担当した書籍がばんばん出てくるし、もはや告発書、暴露と言っても過言ではない。 まずは著者が経験した「天国」から。 出版翻訳家を夢見たのは21歳のとき。大学卒業後は大学事務員、英会話講師、

    『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記 こうして私は職業的な「死」を迎えた』げに恐ろしき、出版界の裏事情を綴る真摯な暴露本 - HONZ
    mayumiura
    mayumiura 2020/12/09
    “翻訳家は個人事業主であり、言うなれば出版社の下請けで、どうしても立場が低い。争えば仕事を失いかねない。若いうちは涙を呑むことも多かった著者だが、”
  • 『息子が殺人犯になった コロンバイン高校銃乱射事件・加害生徒の母の告白』わかりやすい原因などない、という現実 - HONZ

    『息子が殺人犯になった コロンバイン高校銃乱射事件・加害生徒の母の告白』わかりやすい原因などない、という現実 コロンバイン高校銃乱射事件。1999年4月20日、コロンバイン高校の学生2人が無差別に発砲を行い最終的に自殺、教師1人と生徒12人が死亡し、24人が負傷した傷ましい出来事だ。発生から15年以上が経った今なお学校銃乱射事件の代名詞的存在とされるのは、犯人であるエリックとディランがそれぞれ卒業を間近に控えた、18歳・17歳の少年だったという若さだけが理由ではない。 2年以上をかけて準備されていた計画の周到さ。そして、何百人もの生徒たちでにぎわう昼時のカフェテリアを爆破するという残虐な構想。計算ミスや完成度の低さにより爆弾は不発に終わったものの、実際の被害を遥かに上回るその計画の大きさは、人々の間に驚きと恐怖の渦を巻き起こした。 言うまでもなく、この事件を題材にして過去に多くのが書かれ

    『息子が殺人犯になった コロンバイン高校銃乱射事件・加害生徒の母の告白』わかりやすい原因などない、という現実 - HONZ
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    mayumiura 2017/07/24
    ブコメ込みでブクマ。
  • 『一汁一菜でよいという提案』 家庭の料理を初期化しよう! - HONZ

    育では、一緒にべることの大切さ、家族揃って卓を囲むことの大切さが説かれます。けれど、商売をやっている家庭や、親が働いている家庭では、一緒に卓を囲めないのは当然で、親が用意した汁を自分たちで温めて、子どもだけでべる。そんな家庭はたくさんあると思います。それでも、大切なものはもうすでにもらっています。それが手作りの料理です、愛情そのものです。だから、別に一緒にべることばかりが大切じゃないのです。 だれもいない夜、両親の帰りが遅いとき、鍋焼きうどんの材料が全部入った皿が台所に用意してあったら嬉しいでしょう。うどん、鶏肉、かまぼこ、しいたけ、ねぎの切ったものが入っています。一人用の土鍋に入れて、だし汁を張って火にかけて煮立てて、うどんを煮込みます。熱々の鍋焼きうどんをテレビの前で一人でべた夜は、私にとって大切な思い出です。 このくだりを読んで、胸がじんとして、涙が出てしまった。しばら

    『一汁一菜でよいという提案』 家庭の料理を初期化しよう! - HONZ
    mayumiura
    mayumiura 2016/10/25
  • 『脳が壊れた』ルポライター41歳、脳梗塞になりました! - HONZ

    健康診断を怠っている。フリーランスになってからというもの、よっぽど具合が悪くなければ医者に行くということもない。しかし、自分の健康を過信しているわけでもない。物忘れがひどければ「若年性の認知症?」と怯えるし、動悸が激しければ「心筋梗塞?」と脈を計る。手足が痺れると「脳梗塞」を疑い、しばらく様子を見たりする。 一般的には60歳以上に多いという脳梗塞。しかし鈴木大介は41歳で発病した。 ノンフィクション好きなら、この鈴木大介という名前に見覚えがあるかもしれない。貧困家庭の子どもや虐待などから家出した少年少女、そのセックスワークや集団詐欺など一般社会から早い年齢で零れ落ちた人々を丁寧に取材しているルポライターである。過去、私も何冊か読んで書評をしたこともある気骨あるルポライターだ。 社会が注目している分野であり、仕事の依頼も多く多忙を極めていた2015年の初夏、地元の消防団の消火訓練中、左手指

    『脳が壊れた』ルポライター41歳、脳梗塞になりました! - HONZ
    mayumiura
    mayumiura 2016/07/06
    “普通の人ならば絶望的になる「脳が壊れる」という状態を、客観的にルポし一冊にまとめた”
  • 『兵士は戦場で何を見たのか』破壊される男たち - HONZ

    2007年、カンザスのフォート・ライリーを拠点にしていた第16連隊第2大隊は、念願のイラク派兵に臨むことになった。指揮官のカウズラリッチ中佐は40歳の勇猛な男で、特殊部隊の兵士としてアフガニスタンでの従軍経験もある。しかしイラク進攻作戦では、彼の大隊は留守番組であった。 士官学校を卒業した多くの士官がペンタゴンで働くことを夢みる。だがカウズラリッチはそれを望まない。軍内部の政治を敬遠し前線で戦うことを常に求める。「兵士の中の兵士」「彼について行けば地獄の底からでも戻ってこられる(後略)」と部下に呼ばれるような気質の男だという。また彼は陸軍に入隊してから今まで、一人の部下も死なせたことがないという経歴の持主でもあった。書はピュリツァー賞経歴を持つジャーナリスト、デイヴィッド・フィンケルが派兵される第2大隊に同行し、兵士たちがどのように崩壊していくかを丹念に取材した従軍記である。 カウズラリ

    『兵士は戦場で何を見たのか』破壊される男たち - HONZ
    mayumiura
    mayumiura 2016/03/26
    “『帰還兵はなぜ自殺するのか』の前編にあたる作品//「イマージョン・ジャーナリズム」と言われる手法//取材者の存在をその文体から消し去る事により、小説でも読むような感覚で取材対象者や事件を見る事ができる”
  • HONZとは - HONZ

    HONZは単なる書評サイトではありません。HONZは読むに値する「おすすめ」を紹介するサイトです。たまたま手に取ったの感想をまとめたサイトではありません。厳選された読み手が、何冊ものを読み、そのなかから1冊を選び出して紹介するサイトです。HONZの書き手にはそれぞれ個性があり、選び出すにもそれぞれクセがあります。ご自分のテイストにあうHONZの書き手を見つけることもHONZの使いかたの一つでしょう。 HONZが対象とするのは小説を除くすべてのです。サイエンス、歴史、社会、経済、医学、教育、美術、ビジネスなどあらゆる分野の著作を対象とします。ただし、自己啓発書、IT専門書は取り扱いません。また、HONZ読者の入手性を考慮して、出版されてから3か月以内の新刊書に対象を絞っています。 HONZは出版文化そのものも楽しもうと思っています。ベストセラーではないが、丹念に作られた。有名では

    mayumiura
    mayumiura 2016/02/24
    “読むに値する「おすすめ本」を紹介するサイト//HONZが対象とするのは小説を除くすべての本//ただし、自己啓発書、IT専門書は取り扱いません。また、//出版されてから3か月以内の新刊書に対象を絞っています。”
  • アルツハイマー病のすべてがわかる!『記憶が消えるとき-老いとアルツハイマー病の過去、現在、未来』 - HONZ

    いまや、アルツハイマー病という疾患名はあまねく知られている。しかし、何がアルツハイマー病の原因なのか、どんな人がなりやすいのか、そして治療は可能なのか、となると、ほとんどの人は知らないだろう。恥ずかしながら、医学部で病理学を教えている私もよく知らなかった。研究が日進月歩であり、その原因や治療法についてはまだ確定的なことがわかっていないからだ、と、とりあえずの言い訳から始めたい。 アルツハイマー病は、いうまでもなく、認知機能の低下と人格の変化を伴う認知症の一種である。認知症の6割をも占めるとされる疾患であるが、ドイツ人医師アロイス・アルツハイマーがチュービンゲンで1906年に、最初の症例アウグステ・Dを報告してから何十年もの間、全く興味をひかなかった。それには二つの理由がある。一つは、アウグステ・Dが46歳での発症、初診時51歳であったことから、若年性の特殊なタイプの認知症であり、よくある老

    アルツハイマー病のすべてがわかる!『記憶が消えるとき-老いとアルツハイマー病の過去、現在、未来』 - HONZ
    mayumiura
    mayumiura 2016/01/18
    こういう本こそKindle版があったらいいのになあ…読みたい読みたい
  • 『はたらかないで、たらふく食べたい』年収80万円で生きていく - HONZ

    著者は35歳、独身。職業は大学の非常勤講師。借金は635万円。日学生支援機構から借りた奨学金だ。年収は80万円だが、これでも収入は上がってきた。大学院を出た09年から13年までは10万円だった。もちろん、現在も自力では暮らせない。埼玉県の実家で、親の年金に寄生して生きている。 「ろくでなし」、「ひとでなし」、「いいかげん働け」 と批判が飛んできそうだが、著者は拒絶する。やりたくないことはやりたくない。はたらなかないで、たらふくたべたい。合コンに行きたい。もてたい、もてたい、もてたい。を読んでごごごろしたい。通勤電車はいやだ。完全にだだっ子なのだが、著者は自らの生のうめきを過去の歴史上の思想と結びつけ、なんだか心地の良い生き方を示してくれる。 書の中で頻繁に登場するのが大杉栄だ。「アナーキストで関東大震災の後で虐殺された人」程度の認識しかない人も少なくないだろう。 赤ん坊になりたい。お

    『はたらかないで、たらふく食べたい』年収80万円で生きていく - HONZ
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    mayumiura 2015/08/06
    大杉栄に伊藤野枝なんて名前、久々に見たな。
  • 『老人たちの裏社会』生き地獄化する余生 - HONZ

    65歳以上の高齢者の万引きの増加が話題になったのは20年ほど前だったか。当時は全体に占める割合が1割に達したことで注目を集めていた。 書によると警察庁発表の犯罪統計では高齢者による万引きは2011年には未成年者の検挙数を追い抜き、直近の公表値である13年は32.7%を占め過去最高を記録したという。万引き犯の3人にひとりが65歳以上という状況だ。人口全体が高齢化していることを踏まえても異常な増え方だ 万引きだけではない。ストーカーも60代以上の13年度の認知件数が10年前の約4倍に増え、他の世代の1.7-2.6倍に比べて高い増加率を示す。驚くべきなのは暴行の検挙数。2013年には94年比45倍超の3048人に急増している。原因も「激情・憤怒」が60%以上を占め、次点の「飲酒による酩酊」の14%を大きく引き離す。酔っぱらって、「何だ、この野郎!」と酒場で暴れる老人を想像しがちだが、当に凶暴

    『老人たちの裏社会』生き地獄化する余生 - HONZ
    mayumiura
    mayumiura 2015/03/24
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