やっかいな「ダークツーリズム」 ~言葉のひとり歩きが“遺産の価値”を曖昧にする フクシマ、チェルノブイリ、オキナワ… 文/岡本亮輔(北海道大学准教授) ダークツーリズムの流行 最近、「ダークツーリズム」という言葉が一般のメディアでも用いられるようになっている。 元々はイギリスの研究者が用い始めた言葉だ。しっくりとくる日本語訳はまだない。あえて訳せば「暗い場所への旅」「闇を見る旅」といったところだろうか。 この言葉を日本でメジャーにしたのは、東日本大震災後における思想家・東浩紀氏らによる『福島第一原発観光地化計画』『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド』といった一連の著作だ。その後、観光研究者の井出明氏が関わって、『DARK tourism JAPAN』というムックが創刊された。 先月出たばかりの『世界ダークツーリズム』では、アウシュヴィッツ(古市憲寿氏)、サラエボ(角田光代氏)、グラン