著名作家らの個人全集が出にくい時代を迎えている。箱を付けるなど高額・豪華な造本で、名を成した作家や学者が著述活動を締めくくる記念碑的書籍のイメージがあったが、長期にわたる出版不況下で、刊行数は激減。一方で電子書籍化など、新たな形態も模索されているようだ。(磨井慎吾) ◇ ◆娘の「ぼやき」に発奮 人文書系出版社の晶文社は4月、昨年3月に87歳で亡くなった詩人で思想家の吉本隆明さんの全集を刊行すると発表した。全40巻で、第1回配本は来年3月を予定している。同社によると、発刊決断のきっかけは吉本さんの次女で作家のよしもとばななさんが昨年末に自分のサイトに書き込んだ“ぼやき”だった。 「父の晩年には放っておいても全集くらいは出るだろうと思っていた。やりたいという編集者はいたし、目次まで編んでいた。でも予算がどこにもないって言うわけだ。どの会社にもないと」 同社の