『松葉杖登山40年/横田貞雄著』(1974年/信濃路)である。 朝から飲めそうないい名前の版元さんから出ているこの本を、「珍スポーツ」などというカテゴリに入れてしまうのは大変に気が引けるが、とにかく素晴らしい本なので紹介したい。 本書の著者である横田貞雄は、大正三年、12歳の春に小学校を卒業した。貧農の家に生まれた貞雄は中学に上がることなく、そのまま長野県の醤油屋に小僧として住み込みの奉公に入る。 造り醤油屋での奉公仕事というのは苛酷だ。朝はだれよりも早く起きて雨戸をあけ、庭先から店の中、蔵の中までひと通り掃除をする。その後、店で売り出す味噌や醤油を、蔵にある大きな桶から店内の桶に移し替える。昼になれば、店番はもちろん、市内にある得意先への配達などの仕事が待っている。 奉公に入って3年ほど経ったある日。貞雄は右膝の裏側に小さい突起物があることに気がついた。これがすべての発端だ。しかし、奉公
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