幼いころ「森で道に迷ったら木の切り株を見ろ。年輪が広いほうが南だから方角がわかる」と教わった。しかしそれは誤りだと言うのは、東京農業大学非常勤講師の堀大才先生だ。 ウン十年間信じてきた常識が小気味よいほど次々と覆る、東京農業大学での樹木についての公開講座の聴講記をお伝えする。 ■東西南北同じ広さの年輪が語ること 「年輪は南側の間隔が広くなると信じている人はいませんか? あれはとんでもない間違いなんです。では年輪に、広い狭いの差が出るのはどうしてか。針葉樹の場合は、山の斜面で谷側に向いているほうが、山側よりも年輪が広くなるからです」 東京農業大学の世田谷キャンパスで開催された公開講座「樹木の形を読みとく」。講師の堀大才先生の説明に、教室内にざわめきがさざ波のように広がった。「なぜ、谷側?」というつぶやきも聞こえてくる。 本講座の主旨は、樹木の形から、わたしたちが知っているようで知らない木の不