文:西谷 朝子 「食の砂漠」問題が深刻化するアメリカ 「フードデザート(食の砂漠)」という言葉を聞いたことはあるだろうか? 大国アメリカが4億ドルの国家予算を投じて対策をすすめている社会問題のことである。超大国として未だ世界第一のGDPを誇る米国だが、実は、低所得者地域において生鮮食料品店から1マイル(約1.6km)以上も離れた場所に住んでいる国民が2,350万人も存在すると発表されている *1。USDA(米・農務省)が公開しているデータを見ると、「食の砂漠」地域の広さに驚くばかりである(図1参照)。 「食の砂漠」問題には、様々な要因が存在している。ひとつの要因は都市構造の変化に伴う、生鮮食料品店の空白地帯の発生である。さらに、人口動態や家族形態の変化、所得格差拡大等を背景として、社会の中で孤立する人の増加も要因となっている。 生鮮食料品空白地帯の住民の中には、生鮮食料品にアクセスしやすい