本書は、Dani Rodrik, The Globalization Paradox: Democracy and the Future of the World Economy, 2011 の全訳である。原著の出版から二年が経過したが、著者の考察は全く古びていない。それどころか、世界経済のあるべき未来を考える上で、今後ますます重要な意味を持つものとなるだろう。本書がすでに十二カ国語に翻訳されているという事実が、注目度の高さを物語っている。 題名の「グローバリゼーション・パラドクス」(グローバル化の逆説)は、一見しただけでは意味が取りづらい。読者の理解を助けるべく、以下に私なりの解題を記しておきたい。 本書の核となるアイデアは、市場は統治なしには機能しない、というものだ。昨今の新自由主義的な風潮の中で、市場と政府は対立関係にあると考えられることも多いが、本書はそれが明確に間違いであると