UNESCO(United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization、国際連合教育科学文化機関)は、10月1日、193加盟国にオープンサイエンス勧告草案(9月30日付)を提出したと発表した。 本草案は、科学界全体が直面している課題および特にアフリカにおける地域的要因に配慮した内容となっており、オープンサイエンスの革命的な可能性に注目し、国レベルだけでなく同一地域におけるデジタル、技術、性別、知識の格差是正の重要性を示している。 UNESCOは、2019年11月に、第40回総会で採択されたロードマップに沿って、科学アカデミー、大学、若手研究者、図書館、出版社を結集しオープンサイエンスに関するパートナーシップを構築。世界の30名の専門家からなる諮問委員会に対し、オープンサイエンスに関する調査"Global Consult
DOAB(Directory of Open Access Books)は、400以上の出版社からのOA(オープンアクセス)ブック数が3万点に到達したと発表した。 2018年には1万点だったOAブック数が、3万1,917点にまで増加したという。 なお、本ブログでは、使用言語、出版年、ライセンスの種類に関する割合も示している。 [ニュースソース] DOAB milestones: 30,000 open access books from over 400 publishers ― DOAB (accessed 2020-10-13) [小欄関連記事] 2019年05月28日 OAPEN財団とOpenEdition、DOAB財団を設立
2020年10月4日付で、Sage社の刊行する情報科学分野の査読誌“Journal of Information Science”のオンライン速報版の論文として、“Do researchers use open research data? Exploring the relationships between usage trends and metadata quality across scientific disciplines from the Figshare case”が公開されています。 同論文では、オープンな研究データの利用率が低い要因としてしばしば指摘されるメタデータの品質との関連の実態を調査するために、研究データ公開プラットフォームFigshare上で公開されたデータの比較・検討が試みられました。著者らは、2019年10月から11月に取得したFigshare上の全21
2020年9月30日付で、英国逐次刊行物グループ(UKSG)が刊行するInsights誌に、インドのカシミール大学のFayaz Ahmad Loan氏とUfaira Yaseen Shah氏による共著論文“Global electronic thesis and dissertation repositories – collection diversity and management issues”が掲載されています。 同論文は、オープンアクセス(OA)リポジトリのレジストリOpenDOARに登録された電子学位論文(ETD)をアーカイブするリポジトリについて、地域分布・主題・言語等の指標に基づく調査結果の報告・考察を行ったものです。2017年12月時点の調査の結果として、次のようなことを報告しています。 ・OpenDOARに登録された3,504件のリポジトリの半数以上に当たる1,938
2020年10月3日付で、Taylor&Francis社が刊行する“Public Library Quarterly”に、公共図書館の分館のサービスにオープンデータを活用する試みに関する論文“Using Open Data to Inform Public Library Branch Services”が掲載されました。 同論文では、米国のシアトルの公共図書館が、利用者の構成や地域の人口変動を把握できる、オープンソースのシステムのプロトタイプ開発の経緯等がまとめられています。 現在提供されている類似システムは保守性、各館に合わせたカスタマイズ、使用のためのスキル等の面で課題があるということが指摘されています。この状況を踏まえ、シアトルの公共図書館の分館の職員へのインタビュー等を通してニーズを調査し、利用するオープンデータの検討が行われ、米国・国勢調査局のデータをもとに、プロトタイプが作成
2020年10月14日、英国のJiscと米国のPLOSが、オープンアクセス(OA)出版に関する3年間の契約2つを新たに締結したことを発表しました。 発表によると、これらの契約により、論文処理費用(APC)を支払うことなく、PLOSが刊行する学術雑誌の一部でOA出版が可能となります。 2021年1月1日発効の契約は年間定額制であり、Jisc参加機関に所属する責任著者を対象として、“PLOS ONE”をはじめとした5誌での無制限のOA出版、カスタムレポートの利用等が可能となります。 もう一つの“PLOS Community Action Publishing agreement”では、Jisc参加機関に所属する責任著者と共著者が、“PLOS Medicine”および“PLOS Biology”において無制限に出版できるようになります。同契約は、年間定額制であり、責任著者と共著者の出版ニーズをも
2020年9月21日付で、米国図書館協会(ALA)内の部会“Core: Leadership, Infrastructure, Futures”が刊行するオープンアクセスの査読誌“Information Technology and Libraries”誌に、米・アイダホ大学の3人の図書館員による共著論文“Likes, Comments, Views: A Content Analysis of Academic Library Instagram Posts”が掲載されています。 著者らは、大学図書館によるInstagramの投稿で頻出するテーマは何か、Instagramに投稿されるテーマは「いいね」の数やコメントの有無に影響を与えるか、の2つのリサーチクエスチョンに基づく研究を実施しました。2018年11月から12月を対象期間として、アイダホ大学と学生構成・研究費・研究分野等が類似した
オープンアクセス(OA)の査読誌PLOS ONEに、2020年9月18日付けで、研究者によるオープンな研究データの共有・利活用の促進要因と阻害要因を扱った文献に対する体系的なレビューについて報告・分析した論文が掲載されています。 著者らは、主要な学術文献データベースや図書館情報学関係雑誌に収録され、2004年から2019年の期間に発表された、オープンな研究データの共有・利活用における促進要因と阻害要因の両方を扱った文献32件を選定し体系的なレビューの対象としました。レビューの結果は、「研究者の背景」「助成機関等から課せられた要件・公式な義務」「研究者個人に帰属する内発的な動機」「促進する条件」「データやその利活用等に対する信頼性」「期待される効果」「所属機関やコミュニティが及ぼす影響」「研究者自身に必要とされる作業」「研究者自身の経験と技能」「法規制」「データの特性」の11の観点に整理され
2020年9月30日付けのNature誌オンライン版で、”India pushes bold ‘one nation, one subscription’ journal-access plan”と題された記事が公開されました。記事は、インド政府が進める「国内のすべての人が学術文献に無料でアクセスできるようにする」という「大胆な」(bold)提案について報じています。 インド政府は研究者のみが利用できる機関ごとの購読契約ではなく、国単位の購読契約を締結するために世界最大の学術出版社等と交渉することを希望しているとしています。この提案は、インド政府のOffice of the Principal Scientific Adviserと科学技術庁(Department of Science and Technology)によって策定されている政府の最新の科学・技術・イノベーション政策の一部とな
2020年10月8日、オープンアクセスリポジトリ連合(COAR)は、リポジトリのベストプラクティスのフレームワークを公開したことを発表しました。 このフレームワークは、適用可能で達成可能なグッドプラクティスに基づいて、リポジトリの運用の評価・改善の支援を行うことが目的であるとしています。現在までに様々なフレームワークや評価基準が開発されてきましたが、それらは特定の地域や特定の種別のリポジトリについてのものであったことを指摘しています。このフレームワークはグローバルかつ多次元であり、異なる種別のリポジトリ、様々な地理的、主題のコンテキストで適用可能なベストプラクティスを評価するために、関連する基準がまとまっています。 このフレームワークは、COARのリポジトリ評価ワーキンググループ(Repository Assessment Working Group)によって作成されました。その後、COA
2020年10月10日、学校図書館問題研究会は、2020年9月26日付で「著作権法第 31 条における「図書館等」に学校図書館を加えることについて(要望)」を提出したことを発表しました。発表によれば、提出先は「関係の方々」とあります。 学校図書館においても著作権法第 31 条に基づく複製が可能となるよう、第31 条の「図書館等」の範囲に学校図書館を追加するよう求める要望書であり、要望に至った理由として7点を挙げています。 同研究会では、文化審議会著作権分科会の「図書館関係の権利制限規定の在り方に関するワーキングチーム」の会議において新たに学校図書館が「図書館等」に位置付けられるよう、今後も活動を進めるとしています。 著作権法第31条における「図書館等」に学校図書館を加える要望書を提出(学校図書館問題研究会, 2020/10/10) http://gakutoken.net/jo8ok83v
2020年10月5日付で、日本出版販売株式会社(日販)と株式会社トーハンは、両社間で合意済の雑誌返品業務の物流拠点統合実施について、そのスケジュールを発表しました。 2020年11月以降、トーハン東京ロジスティックスセンターで行われていた雑誌返品業務は、日販のグループ会社である出版共同流通株式会社蓮田センターで実施されます。円滑な移行を図るため、蓮田センターで作業するトーハンの業量は段階的な増加を予定しています。 日販とトーハンは、書籍返品業務、書籍新刊送品業務、雑誌送品業務について、物流作業の効率化を通じて、将来に向けて持続可能な出版流通網の再構築を目的に、引き続き協業の検討を進めることを表明しています。 物流協業に関するお知らせ(雑誌返品業務の協業開始)(日販,2020/10/5) https://www.nippan.co.jp/news/20201005/ 物流協業に関するお知らせ
公立図書館における蔵書構成・管理に関する報告書について 全国公共図書館協議会事務局(東京都立中央図書館)・川上尚恵(かわかみひさえ) ●調査目的 全国公共図書館協議会は,2018年度に蔵書構成・管理についてのアンケート調査を実施,2019年度にはその調査結果を分析し、それぞれ『2018年度(平成30年度)公立図書館における蔵書構成・管理に関する実態調査報告書』『2019年度(令和元年度)公立図書館における蔵書構成・管理に関する報告書』を発行した。全国の公立図書館における蔵書構成・管理の実態を把握・分析し,今後の蔵書構成・管理に関する課題解決の一助となり,図書館の一層の発展に資することを目的としたものである。過去の類似調査では,蔵書構成プロセスの「資料選択」に関わる調査が多かったが,今回の調査では,資料選択のほかにも幅広く取り上げることとした。 ●調査内容 蔵書構成・管理について,(1)図書
電子情報の保存・管理の標準手法”Oxford Common File Layout” 関西館電子図書館課・松永しのぶ(まつながしのぶ) 2020年7月7日,リポジトリにおける電子情報の長期保存のためのファイルシステムの階層を標準化するための手法であるOxford Common File Layout(OCFL)のVersion 1.0が公開された。OCFLのウェブサイトには仕様を示した“OCFL Specification”と実装上の助言を示した“OCFL Implementation Notes”等が公開されている。 リポジトリコミュニティは,ソフトウェアや基盤の技術変化,分散型ストレージの増加,アプリケーションごとに異なるファイルシステム階層,そして増大していくデータの維持や移行に苦慮してきた。これまでのリポジトリデータの構造化の規格には,米国議会図書館(LC)等で利用されている“Ba
デジタルコレクション購入の手引き:英Jiscの4原則 収集書誌部外国資料課・辻慎太郎(つじしんたろう) 2020年6月,英国の非営利団体Jiscは文書,写真などの一次資料をデジタル化したものから成るデジタルコレクションの購入に関する図書館員向けガイド“Purchasing digital archives:Guidelines for librarians when negotiating with publishers”を公開した。 デジタルコレクションは学習,教育,研究などにおいて重要な役割を果たしており,特に高等教育機関の図書館は多くの資金を注ぎ込んでいる。例えば2019年7月にJiscが公開した報告書(要約版)では,67の教育機関のうち42%が過去5年間で平均10万ポンド以上を買い切り型デジタルコレクションに費やしていた。 それにも関わらず,同調査に参加したほとんどの機関は金額に見
各国の国立図書館におけるCOVID-19の影響に関する調査結果 総務部支部図書館・協力課・野澤明日香(のざわあすか) ●はじめに オランダ国立図書館(KB)は,同館館長が現在議長を務める国立図書館長会議(CDNL)の要請を受け,国際図書館連盟(IFLA)国立図書館分科会と協力し,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が各国の国立図書館に与えた影響と現状および対処方法について2回のアンケート調査を実施した。調査結果はCDNLのウェブサイト内の“COVID-19”ページにて公開されている。 本稿では,アンケート調査の結果について概略を紹介する。 ●第1回調査結果 第1回では,COVID-19が与えた影響と対応策,懸念事項,継続しているサービスの事例について,2020年3月31日から4月9日にかけて調査が行われた。 53か国55館から回答があり,約半数が欧州,次にアジアからの回答が多かった
カナダの美術館・図書館・文書館・博物館がもたらす経済価値 電子情報部電子情報サービス課・田辺智子(たなべさとこ) カナダ博物館協会とカナダ国立図書館・文書館(LAC)によるワーキンググループは,2020年5月,カナダのGLAM(美術館・図書館・文書館・博物館)がもたらす経済価値を試算した2019年12月付の報告書を公表した。試算は,GLAM利用者にとっての価値,GLAMを利用しない人々にとっての価値,学校教育の面での価値等のカテゴリに分けて行われ,様々な経済学的な方法を用いて2019年の1年間に得られた便益額が算出された。データ採取のために,カナダ居住者2,045人を対象とした調査が実施され,各種統計や学術研究結果があわせて利用された。 以下では,主なカテゴリについて試算方法と結果を紹介する。 ●来館利用者にとっての価値 来館利用者にもたらされる便益は,旅行費用法という方法で算出された。G
坂本貴志『統計で考える働き方の未来:高齢者が働き続ける国へ』(ちくま新書), 筑摩書房, 2020. 日本の労働市場について概観して、高齢労働力となることが避けられない未来を予想し、ではどのような働き方が適切かを論じる新書である。副題が暗示する「高齢者就労」の方にアクセントがあって、「統計」の部分は記述統計中心であり煩わしいほどの量ではない。著者は1985年生まれの若手エコノミストで、厚生労働省を経て現在はリクルートワークス経済研究所所属とのこと。 前半では賃金の変化と非正規雇用問題、2010年代の経済が検証される。平均賃金は下がっているけれども賃金総額は増えており、その理由はこれまで働いていなかった女性や高齢者が労働市場に参入したからであるという。また、非正規雇用者の待遇は00年代に比べれば改善されているものの、単身者が一定の割合を占めていて少子化のトレンドに拍車をかけている。2010年
マーク・W.モフェット『人はなぜ憎しみあうのか :「群れ」の生物学』小野木明恵訳, 早川書房, 2020. 人間の社会の本質について、人類学的知見だけでなく社会性昆虫ほかさまざまな生物学的知見を動員して説明しようという試み。焦点はあくまでも群れや社会であって、邦題にあるような疑問を直接主題とするものではない(間接的には答えているけれども)。著者は米国のスミソニアン自然史博物館研究員で、E.O.ウィルソンに師事したアリの研究者。原書は The human swarm : how our societies arise, thrive, and fall (Basic Books, 2019.)で、タイトルを訳すと「人間の群れ」ある。 「群れが成立するには各個体に敵と同盟者を見分けられる程度の個体識別能力が必要だ」という類人猿との比較から生まれた説(ダンバーとかクリスタキスとか)があるが、人間
ニコラス・クリスタキス『ブループリント:「よい未来」を築くための進化論と人類史』鬼澤忍, 塩原通緒訳, NewsPicksパブリッシング, 2020. 社会の形成にはどのような生物学的な性向が関わっているのかについて、ネットワークの科学、進化心理学、人類史を動員して考察するという試み。著者は『つながり』(講談社, 2010)で知られる米国の医師兼医療社会学者で、ギリシア育ちとのこと。原書はBlueprint: the evolutionary origins of a good society(Little, Brown Spark, 2019.)である。 個体間の関係や集団のあり方には理論的には複数のパターンがありうる。にもかかわらず、人間の社会はありえた可能性のごく一部しか実現させていない。そこには普遍性があるのではないか、すなわち社会の形成にも遺伝的な制約が課せられているのではないか
クリストフ・リュトゲ『「競争」は社会の役に立つのか:競争の倫理入門』嶋津格, 慶應義塾大学出版会, 2020. 倫理学。「競争」概念の倫理学的な位置を定めることを試みた小著。著者はドイツのビジネス倫理の専門家で、原著はEthik des Wettbewerbs: Ueber Konkurrenz und Moral (Beck, 2014.)である。2019年にはThe ethics of competition (Edward Elgar)というタイトルで英訳も発行されている。 協力関係を破壊し、格差を拡大すると考えられているがために、ドイツでは「競争」が否定的に扱われている。しかし、西洋哲学史を紐解いてみると、ルールによって規制されない無秩序な競争、および暴力を伴う競争だけが多くの場合で否定されているにすぎず、競争一般が廃されているわけではないと著者は指摘する。また、財を獲得するために
待鳥聡史『政治改革再考:変貌を遂げた国家の軌跡』(新潮選書), 新潮社、2020. 1990年代に日本では多方面で政治改革が行われてきた。本書は、それら改革の当初の目的や理念、それが政治過程を経ることで実際どのようになったか、さらに改革後にもたらされた現状について検証してみようという試みである。この著者についてはこのブログで過去に『代議制民主主義』と『民主主義にとって政党とは何か』を取り上げたことがある。 選挙制度改革では、衆議院で小選挙区比例代表並立制が導入された。国家として統一した政策を行うために、以前の中選挙区制で力を持っていた派閥の力を弱め、首相権限を強化するためだったが、この狙いは実現した。省庁再編を行った行政改革もまた同様に中央集権化を目的としたが、世論に押されて大蔵省から日銀を分離したことはその方向と逆行していた。結果、政府と日銀の政策的連携が上手く行かない時期もあり、日銀が
渡辺将人『メディアが動かすアメリカ:民主政治とジャーナリズム 』(ちくま新書), 筑摩書房, 2020. 米国におけるテレビ・ジャーナリズムの報告と分析である。著者は現在北海道大学の先生であるとのことだが、過去に米国の民主党議員の下で選挙活動を手伝ったり、テレビ東京の記者としてテレビ報道の内側を見てきたという経歴がある。 米国のテレビニュース番組には、日本の民放ニュースにはおなじみのコメンテイターがいない。ニュースは現場にいる記者が伝えるもので、アンカーはスタジオで個々のニュースをつなぐという役割を果たすだけである。チャンネルを変えても、どこも同じような画面の構成で、米国のニュース番組は工夫が少なく退屈だ。しかし、アンカーは、労力が少ないにもかかわらず、取材歴のあるそこそこ高名なジャーナリスト出身でなければならない。世間的信用のある人物としてかつ報道部門の代表として、アンカーにテレビ局経営
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