ブックマーク / blog.goo.ne.jp/hiroyuki-ohba (279)

  • 2023年10月~12月に読んだ本についての短いコメント - 29Lib 分館

    谷頭和希『ブックオフから考える:「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』青弓社, 2023. ブックオフ論。ブックオフは買取したものをただ棚に並べているだけで、店側に選択の意図がなく、自己主張が感じられない。だからこそ、若者が多様な文化に触れることのできる貴重な入口となっている、と主張する。一方で、持ち込み客によって店の品揃えが左右されてしまうというローカルな面もあり、そこが面白さであるとも。したがって、ブックオフは「出版業界の寄生虫」(小田光雄『ブックオフと出版業界』論創社, 2008)ではなく、公共性を持つ空間である、と好意的な評価を与える。ただ、ブックオフ側の意図欠如を「なんとなく」というキーワードで説明してしまうのは違う気がする、店側は戦略的にやってるのだから。まあでも面白かった。公共図書館との比較もある。 永江朗『私は屋が好きでした:あふれるヘイト、つくって売るまでの舞台裏

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  • 電子書籍をめぐる出版社vsテック企業の攻防、その後半 - 29Lib 分館

    John B. Thompson Book Wars: The Digital Revolution in Publishing. Polity, 2021. Book Warsの続き。7章以降から結論まで。周縁的だが、といっても無視はできないというトピックを扱っている。 7章はセルフ・パブリッシングについてである。この領域にも少数の先行業者がいたが、アマゾンが参入して裾野が拡大する。ただし、ISBNの無いが多く、またアマゾンが情報を公開しないということもあってその規模はあきらかではない。Kindle Desktop Publishingは毎年100万冊の作品を発行していると推計される。売上ランキングの上位に入る作品もあり、「電子書籍の売上の停滞」という話は既存の出版社のコンテンツだけの話で、電子書籍領域では自費出版物の成功例が少なからず見られるとする。 8章はセルフ・パブリッシングのた

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  • 電子書籍をめぐる出版社vsテック企業の攻防、その前半 - 29Lib 分館

    John B. Thompson Book Wars: The Digital Revolution in Publishing. Polity, 2021. 米国電子出版についての、一般書寄りの研究書である。2000年代から10年代のおよそ20年の間、電子書籍をめぐって米国の出版関係者がどう反応したのかを、膨大なインタビューによって明らかにする。1980年代から00年代までの変化を描いた Merchants of Culture の続編で、書も物理的に分厚く500頁ほどの分量となっている。はじめに+全12章+結論という構成となっているが、以下では前半6章までの内容を紹介したい。 出版関係者が恐れていたほどには電子書籍は普及しなかった、という認識がまず示される。Kindleが登場した2007年から2013年までの間、電子書籍の売上は急速に伸びたが、2014で頭打ちとなり(ピーク時で紙の

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  • 良い評判を維持することで生き残れという図書館経営論 - 29Lib 分館

    Gary L. Shaffer Creating The Sustainable Public Library : The triple bottom line approach Libraries Unlimited, 2018. 図書館経営論。副題にあるtriple bottom line approach (以下TBLと略記) を取り入れることによって、公共図書館は長期に持続可能となり、かつ繫栄するはずだと説く内容である。著者は現在、グレンデール市図書館・芸術文化局局長かつカリフォルニア図書館協会会長を務めているとのこと(人HP)。 TBLとは、経済、自然環境、社会的関係性の三つの面での持続可能性を追求する経営である。20世紀末に誕生した概念で、国連環境計画(UNEP)による事業所向けの報告書記載事項の基準を示したGrobal Reporting Initiative (GRI)中

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  • 英国の学歴事情の書、職人とケア労働の復権を訴える - 29Lib 分館

    デイヴィッド・グッドハート『頭 手 心:偏った能力主義への挑戦と必要不可欠な仕事の未来』実業之日社, 2022. 英国社会論。大卒者の過剰と、職人やケア労働者の不足と低賃金を批判する内容である。著者はパブリックスクールを出た大卒者で、労働党寄りの左派ジャーナリストとしてキャリアを積んできたとのこと。原書はHead Hand Heart : The struggle for dignity and status in the 21st century (Penguin, 2020)である。 英国では20世紀末あたりから、人間の評価が大卒歴で表される認知能力の高さのみに偏り、一方で熟練を要する仕事の地位が低下した。また、ケア労働はもともと高い評価を得てこなかったが、かつてはそれに従事してきた能力ある女性が大卒者となって別の賃労働に就くことによって、より軽視されるようになっているという。 とは

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    min2-fly
    min2-fly 2023/10/31
  • 社会教育関連書籍の書評集、紹介数は少ないが内容は濃密 - 29Lib 分館

    野島正也『社会教育の魅力を伝える読書案内:好著を読み解く』樹村房, 2023. 書評集。2007年から発行されている『生涯学習・社会教育研究ジャーナル』に掲載された14編の書評を、一冊にまとめたものである。著者は社会教育の専門家であり特に公民館を主な対象としてきた。文教大学で2013年から2017年まで学長を務め、2016年から同大学の学園の理事長をしている人である。僕が文教大学に在籍した五年間(2012年4月~2018年3月)と重なる。ただし、遠くから見かけたことはあるが、お話ししたことはない。 取り上げられるのは、2005年から2020年までに発行された生涯教育・社会教育領域の書籍である。書評集なのに紹介されるのが14点だけというのは少なく感じるが、これは各一冊の中身をじっくり紹介しているためである。各章の構成は次のとおり。大部分は各書籍の詳しい要約で、ところどころで著者(すなわち評者

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  • 読書研究によって図書館学は科学になった、と - 29Lib 分館

    Stephen Karetzky Reading Research and Librarianship : A history and analysis Praeger, 1982. 米国における20世紀前半の読書研究史。図書館情報学の領域にも「シカゴ学派」なるものがあってかつて影響力を持っていたのだが、その勃興史でもある。著者はユダヤ系らしく、イスラエルに関する著書も二冊書いている。個人的な事情を記すと、大学院に進学した25年ほど前に古で購入したが、一行も読まないまま積読になっていた。今年サバティカルを得たおかげでようやく読了できた。 20世紀前半の中でも、特に1930年代のダグラス・ウェイプルズの業績に焦点が当てられている。もともと彼は教育学者だったが、シカゴ大に図書館学の大学院ができるとそこに移動し、読書研究を開始する。図書館員による読書研究は1920年代にも存在していたが、統計学

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  • エビデンス・ベースド・育児の書だが、わからないことも多い - 29Lib 分館

    エミリー・オスター 『米国最強経済学者にして2児の母が読み解く子どもの育て方ベスト』堀内久美子訳, サンマーク出版, 2021. 育児書。『医者さんは教えてくれない妊娠・出産の常識ウソ・ホント』の続編であり、経済学者である著者が、乳児から幼児にかけての子どもに関する医学・発達心理学の研究をレビューして、適切な育児法を指南するという内容である。著者は働く二児の母だが、書は専業主婦も対象としている(母親の就業に関するトピックがあり、アドバイスはニュートラルだ)。原書はCribsheet: a data-driven guide to better, more relaxed parenting, from birth to preschool (Penguin, 2019.)である。 単に科学研究を参照しているというだけでなく、データ分析家として複数の研究結果のエビデンスを評価しているところ

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  • 因果推論の理論面も実践面もそれぞれ丁寧に説明する - 29Lib 分館

    高橋将宜『統計的因果推論の理論と実装:潜在的結果変数と欠測データ』 (Wonderful R), 共立出版, 2020. 因果推論の理論と実践方法について、統計ソフトのRを使いながら説明するという内容。回帰分析をある程度わかっており、さらにその先に進みたいという人向けである。Rの事前知識も必要になる。著者は長崎大学の先生である(所属となる情報データ科学部は2020年に出来たばかりの学部だ)。前半で因果推論の主要概念と仮定、および回帰分析のメカニズムの詳細について解説される。後半は、傾向スコアマッチング、操作変数法、回帰不連続デザイン、欠測データに対応する多重代入法が紹介される。 面白いのは解説のための分析用データである。RCTに対応させるべく、サンプルを処置群と統制群に単純に分けるというだけではない。人間を対象とする場合には通常観察することができない「処置群に属するけれども、もし処置を受け

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  • フェイクニュースやヘイトスピーチをどこまで規制してよいか - 29Lib 分館

    松井茂記『表現の自由に守る価値はあるか』有斐閣, 2020. 憲法学の視点からの「表現の自由」論。前提知識が要求される専門書であり、例えば「厳格審査」という語が解説なしに登場する。著者はカナダ在住の憲法学者で、このブログでは『日国憲法』と『図書館と表現の自由』を取り上げたことがある。 全六章構成で、ヘイトスピーチ、テロリズム促進的表現、リベンジ・ポルノ、インターネット選挙活動、フェイク・ニュース、忘れられる権利というトピックを扱っている。それぞれの章で、北米およびEU諸国の法規制、あるいは日国内の法改正や条例を取り上げて検討し、妥当な部分と過剰な部分をえり分けてゆく。どちらかと言えば、規制の過剰な部分を取り上げて、表現の自由が毀損される懸念を示すというのがパターンである。 読後感は、同じ著者による新書『性犯罪者から子どもを守る:メーガン法の可能性』(中公新書, 2007)に近い。それは

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  • 統計学なしに相関と因果の違いを丁寧に解説する - 29Lib 分館

    菅原琢『データ分析読解の技術』(中公新書ラクレ), 中央公論, 2022. 統計表・グラフ読解術。しっかりした統計知識なしに、相関と因果の概念だけでデータ分析の結果をある程度に正しく解釈できるようにする、という野心的な試みである。目指すのは、誤った解釈に対して正しい分析結果を提示できるほどにはならないけれども、相関と因果の間にあるグラデーションを理解しており、強い因果を主張するような解釈に対して留保をつけることができる、というレベルである。著者は『世論の曲解』の政治学者。 データ分析の例題を示して、どこが問題なのかを解説してゆくというスタイルで書かれている。例題は、地方創生政策と移住者数、交通事故と報道の量、特定の疾患と県民性、生涯未婚率と男余り率、新聞購読と学力、ほか著者の専門の選挙関連である。全体で8章あるが、ほぼすべての事例において因果関係に影響する隠れた第三の変数(書籍中では「交絡

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  • オープンアクセスにおいても商業出版社が勝つ - 29Lib 分館

    有田正規『学術出版の来た道』 (岩波科学ライブラリー), 岩波書店, 2021. 学術雑誌および関連するデータベースの歴史。著者としては同じシリーズの『科学の困ったウラ事情』(2016)の続編というところだろうか。中身は『科学』に初出の連載記事を改訂したものとのこと。 内容は、査読システムの形成、エルゼヴィアやシュプリンガーといった学術出版社の興亡、索引誌の登場とインパクトファクターの導入の影響、学術雑誌のデータベース化、オープンアクセス運動などについてである。「「同分野の研究者による査読」は1970年代にゼロックスのコピー機が大学で普及してからの慣行であり、それ以前は「編集者による査読」が普通だった」など、興味深い指摘が多い。大学図書館が学術雑誌のデータベースのために億単位の金を支払っているという話も、報道などで目にしたことがあるかもしれない。 特に後半の、雑誌データベースの価格高騰と対

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  • 我々は「人は騙されやすい」という言説に騙されている - 29Lib 分館

    ヒューゴ・メルシエ『人は簡単には騙されない:嘘と信用の認知科学』高橋洋訳, 青土社, 2021. 認知科学。著者は、『表象は感染する』(新曜社, 2001)のダン・スペルベルの弟子筋の研究者である。フランス人だが、原書は英語のNot born yesterday: the science of who we trust and what we believe (Princeton University Press, 2020)である。 人は騙されやすいという流布した説とは異なって、著者はむしろ騙されにくいと主張する。サブリミナルは効かない。大半の詐欺行為は失敗している。その理由は、有益なメッセージを進んで受け入れると同時に有害なメッセージを拒否するという「開かれた警戒メカニズム」が進化によって人間に備わっているからだ。その開放性は、他の動物と比べて、多様で変化する環境に適応する能力を人間に

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  • 世を支配するランキングとどう付き合っていくべきかについて考える - 29Lib 分館

    ペーテル・エールディ『ランキング:私たちはなぜ順位が気になるのか?』高見典和訳, 日評論社, 2020. ランキングについて考察する一般向け書籍。著者は1946年生まれのハンガリーの科学者で、複雑系やコンピュータ神経科学を専門としている。2000年代からは米国の教養大学でも教えているとのことで、ハンガリーと米国を行ったり来たりしているようだ。原書は、Ranking: the unwritten rules of the social game we all play (Oxford University Press, 2019.)である。 最初の章で「ランキングは客観的なものではない」と釘をさされる。ならばなぜランキングが気になるのか。その答えは、それが秩序を生み出すからだというものだ。にわとりのpecking orderの例が挙げられ、階層を作ることで群れの中での競争を小さく抑えること

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  • 恋愛と結婚の自由の結果として、強いられた孤独が拡大している - 29Lib 分館

    小林盾, 川端健嗣編『変貌する恋愛結婚:データで読む』(平成成蹊大学アジア太平洋研究センター叢書), 新曜社, 2019. 家族社会学。現代の日では恋愛結婚、出産は一続きのステップとなっており、それぞれの動向を把握するという内容。2015年の1万2000人から回答を得たアンケート調査データと、18年の1100人の面接調査データを元にしている。図表は多いが、細かい統計処理の説明は端折っており、いちおう一般向けの書籍である。執筆者の総勢は17人で、各章の充実度は玉石混交である。 で、おもしろかった知見は二つ。「恋愛は必ずしも結婚に結実しなくてもいいが結婚には必ず恋愛感情を伴うべき、と近年の若年層は考えている」(3章)。「未婚者は他人をあまり信頼しない。理由として、パートナーとの協力経験がないことと、機会の不平等を認識するようになることが考えられる」(8章)。このほかは、予想の範囲内ではあ

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  • 日本人の結婚に対する価値観が変わらないので非婚化がすすむ - 29Lib 分館

    山田昌弘『日少子化対策はなぜ失敗したのか?:結婚・出産が回避される当の原因』 (光文社新書), 光文社, 2020. タイトル通り。日少子化の原因は、結婚した夫婦の持つ子供数の減少ではなく、婚姻数の減少にある。なのに、政府が打つ対策は育児支援と女性の就労支援ばかりで、結婚支援に対しては無策だった。なぜ、このような間違った方向に邁進してしまったのか。その理由として、欧米型の育児支援政策を参考にし過ぎたためだ、と指摘される。欧米では、子どもは成人したら実家を離れるので、カップルで暮らすことはお互いにとって生活費を削減でき経済的にメリットになる。したがって、カップルは勝手にできる。しかし、子どもを持つことは家庭における経済的リスクになるので、政府はそれに対応した支援をすればよい。しかし、日の場合、独身ならば成人しても実家にいるので、そもそも結婚して実家をでることこその方が経済的リスク

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  • ポリティカルコレクトネスをめぐる若手批評家の論考 - 29Lib 分館

    綿野恵太『「差別はいけない」とみんないうけれど。』平凡社, 2019. 差別論およびポリティカルコレクトネス論。といっても、このテーマについて論理とデータでゴリゴリと切り分けて整理するようなタイプのではなくて、いくつかの概念的な道具立てを使って様々な角度からテーマを照射し、その広がりと深さを確認するというタイプのである。著者は1988年生まれで肩書は「批評家」とのこと。 冒頭で、シティズンシップとアイデンティティ・ポリティックスが対立概念として紹介され、前者の立場からの差別批判に使われたことでポリコレが拡大したと指摘される。「私はゲイではないが、社会の一体性を支持するが故にゲイ差別をするものを糾弾する。彼らもまた同じ市民だからだ」というロジックである。続く章で、米国におけるポリコレの出自と日での解釈が紹介されるが、それによれば当初のポリコレはアイデンティティ・ポリティクスを「批判」す

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  • 家庭と学校の関係を探る大規模調査の報告書(その一?) - 29Lib 分館

    東京大学社会科学研究所編, ベネッセ教育総合研究所編『子どもの学びと成長を追う:2万組の親子パネル調査から』勁草書房, 2020. 教育学。ベネッセと東大によるパネル調査の中間報告である。小学一年生から高校三年生の児童生徒を対象とした調査で、一学年毎に1500人~2000人というサンプルサイズであるとのこと(全体で2万を超える)。年度が変われば新たに小学一年生となった児童のサンプルを加えてゆき、高校三年生以上は対象から外してゆく。最初の年度は2015年で、今年度で6年目となる。 前半では調査の概要と、クロス集計の結果について解説している。成長につれて、親とではなく一人で過ごす時間が多くなり、図書館などの公共施設の利用は減少するという(3章)。成長するにつれて、勉強が嫌いになっていき、自信がなくなる(4章)。育児を通して親が成長する(5章)。自分の将来について、男子は地位達成を重視し、女子は

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    min2-fly
    min2-fly 2020/12/22
    私生活上も研究上も参考になりそうな
  • 社会が豊かになれば個人主義的な価値観が必ず優位となる - 29Lib 分館

    ロナルド・イングルハート『文化的進化論:人びとの価値観と行動が世界をつくりかえる 』山﨑聖子訳, 勁草書房, 2019. 「世界価値観調査」1)の主導者による、国際比較とトレンドの分析という内容である。メスーディ著と邦訳タイトルが似ている(原題はまったく同じ)が、書は生物学な進化論とは無関係であり、価値観の変容に一定の方向性があるという意味で「文化の進化」を使っている。原書はCultural evolution : people's motivations are changing, and reshaping the world (Cambridge University Press, 2018.)。 世界価値観調査によって、世界各国は「非宗教的・理性的価値vs.伝統的価値」の軸と、「生存価値vs.自己表現価値」の軸の二つでできた図の中に位置づけることができるという。その結果は「イング

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  • 一人ひとりに合った個別の学習法などない、確実なのは…という話 - 29Lib 分館

    ピーター・ブラウン, ヘンリー・ローディガー, マーク・マクダニエル『使える脳の鍛え方:成功する学習の科学』依田卓巳訳, NTT出版, 2016. 学習法。学んだことを確実に長期記憶に定着させるための方法を紹介している。著者三人のうち、ブラウンはジャーナリスト兼小説家で、あとの二人は認知心理学者だとのこと。原書はMake it stick: the science of successful learning (Harvard University Press, 2014.)である。 短時間に集中して勉強しても、短期記憶に蓄積されるだけですぐに忘れる。テキストを繰り返し読んでも、「わかったつもり」になるだけで実のところ理解しているかどうかは怪しい。もっと確実な勉強法はないのか、ということで科学の出番となる。著者が勧めるのは次のようなものである。第一に、複数のトピックを交互に学習する。すなわ

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