2016年11月4日。自分はこの日を忘れないだろう。 それは鬼束ちひろが東京・中野サンプラザホールで圧巻のパフォーマンスを見せた日だ。“圧巻の”とはどういうことかというと、つまり鬼束ちひろというシンガーソングライターのキャリア、鬼束ちひろという物語においての最も優れたところ、核となるところを、限りなく100%に近い状態で見せたものだったということ。彼女が真の“歌表現者”として我々の前に「戻ってきた」のが、この2016年11月4日だったということだ。 そのことをきちんと報じたメディアは、しかし自分が探した限りではどこにもなかった。少し失望したが、やはり迷走の時期が長かったこともあって、評価の俎上に乗っていなかったということなのだろう。会場に集まった多くの人たちは、良好な状態にあるときの鬼束ちひろがどれほど凄まじい表現力を持った歌手であるかを知っている。だからそこに来ていたわけだが、世間一般的
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