冷やすと電気抵抗がゼロになる超電導材料の低温研究から、医療機器や半導体製造まで、幅広く使われているヘリウムの調達が難しくなっている。産業向けが優先され、後回しになりがちな研究機関は悲鳴を上げる。その中で大規模ユーザーの東京大学物性研究所は、使用分の9割以上を回収・再生する設備を持つ。ヘリウムを使用後に大気放出している企業に対し、研究所がリサイクルを手伝うことで“ヘリウム危機”を乗り越えられないか、検討に入った。 値上げ進む ヘリウムは沸点がマイナス269度Cで全元素の中で最も低い。超電導材料などを液体ヘリウムに浸すと、蒸発熱などにより対象物は極低温に冷やされる。病院の磁気共鳴断層撮影装置(MRI)や量子コンピューターもこの特性を利用する。 販売の半分程度を占める産業用は、不活性ガスとして光ファイバーや半導体製造に使われている。また水素の次に軽いガスとして気球にも使われる。 ヘリウムの生産は